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これから支持される学びは、いち大学では成立しない?学びのオンライン化がもたらす、新たな学びの評価軸を考える。

魅力的なオンラインの学びにある2つの共通点

オンライン授業という学び方が大学教育に本格的に取り入れられるようになり、なんだかんだでもうすぐ1年が経とうとしています。当初は対面授業の代替として、対面でやってきたことを何とかしてオンラインに置き換えようとする取り組みだったように思います。でも、時間が経ち、学びのコツや特徴がわかるようになってきて、じわじわと内容が変化してきているようです。今回はそんな新しい学びの予感を抱かせる取り組みをいくつかピックアップしてみました。

……どうでしょうか。どの取り組みオンラインの特徴を上手に使って、以前からあったものをパワーアップさせたり、新しいものをはじめたりと、かなり興味深いです。具体的な内容はそれぞれ違うのですが、二つの共通点があります。

一つは場所の制約がなくなっていること。これによって、海外の企業や大学と一緒にプロジェクトに取り組むことができるようになり、しかもそれを日常のなかでできるようになりました。新型コロナが流行する前に、「明日、下宿先から海外の学生と一緒に海外企業にプレゼンテーションするねん」なんて言ったら、友達は全員キョトンとしたでしょう。でも今なら、すごい!とはなっても、わけわからん!とはなりません。

もう一つは、複数の大学を横断していることです。場所の制約がなくなったことと関係しているのだと思いますが、いくつもの大学が一緒になって何かをやることへの抵抗やハードルが、オンライン化によって以前より少なくなってきているのではないでしょうか。

オンライン化で注目される学びのキュレーション力

場所にも、大学(所属)にも、制約されず自由に学べるのは、学生からすると胸が躍ることだと思います。こういった学びが充実していくと、地方の学生が、情報機器さえ揃っていれば、東大や京大、場合によっては海外の有名大学の学生たちと一緒にグループワークができる日がくるかもしれません。

これまでもMOOCやOCWなど、大学教育のオープン化は議論され実践されてきました。これらの多くは、学生も利用できましたが、主には社会(という曖昧なターゲット)に向けたオープン化でした。しかし、現在のオンライン教育が進んでいくと、学生をメインターゲットにした大学教育のオープン化というものが進んでいく可能性があります。そうなると、A大学の教育プログラムを受けるために、必ずしもA大学に入らなくてもよいという状況が増えてくるかもしれません。

また、場所と大学(所属)の制約が弱まると、大学教育の評価軸も変わっていく可能性があります。すぐ思い浮かぶのは、学びのキュレーション力です。これまでは一人の教員が一つの授業を担当するのが一般的でした。でも、オンライン化が進展していくことで、いろんな国のいろんな立場の人が講師として関わりやすくなるし、受講生もいろんな立場の人 ――たとえば、地方の学生、海外の学生、起業家、主婦、職人などなどに入ってもらうことで、より刺激的な場にすることができやすくなるかもしれません。

こういう土壌が育っていくと、いち大学でよい教育をしようとするだけでは、キュレーション力の高い大学には勝てなくなる可能性があります。ただ、この能力はこれまでの大学教員に求められていた能力とはまったく異なるものなので、意識的にこういうことができる人材を採ったり、育てていかないといけないし、それができる環境自体もつくっていく必要があります。

いろいろと絵空事を書いてみました。とはいえ、この一年で大学教育は驚くほど大きく変わりましたし、まだその変化は続いています。変化に合わせて、学びのあり方を調整するのもいいですが、この変化の先にあるものを見据えて、もしくはあって欲しいものをめざしてチャレンジしてみるというのもアプローチの方法としてあり得ます。

新型コロナが流行る前であれば、大学教育そのものの在りようが変わるかも知れないほどの大きな変化が、体感できるスピードで訪れるなんて想像すらしていませんでした。これをチャンスとして捉えられるのであれば、新型コロナが与えてくれた数少ない良い側面と言えるのかもしれません。

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