見出し画像

大学のビジョンが「生きた言葉」であり続けるために、大学人がたぶんこれからしなくてはいけないこと。

コロナパンデミックによって世の中の状況が大きく変わったというのは、わざわざ言うまでもない事実です。今は渦中でそれどころではないかもしれませんが、もう少し目処がたってくると、このコロナによって狂った計画を調整するという作業が、いたるところで出てくるように思います。今回、見つけた千葉商科大学のお知らせは、この調整をいち早く着手した事例のように感じました。

千葉商科大学のお知らせは、消費エネルギーと同僚の再生可能エネルギーを発電して「自然エネルギー100%大学」をめざすうえでの目標達成年度を、2020年度から2023年度に変更するというものです。

世間一般的には、最初に立てた目標を変更(とくに後ろ倒し)すると、ネガティブに受け取る人がけっこういるのではないでしょうか。しかし、現在の状況を踏まえて考えると、私はとても前向きな印象を受けました。あぁ、本気でやろうとしているんだなと。それに、そういった状況判断を早々にできる大学なんだな、とも感じました。

コロナ前に立てた目標を、いま、何も調整せずに達成できることの方が少ないように思います。これは千葉商科大のような環境という一点に絞ったものだけでなく、大学の中期経営計画なんかも、多かれ少なかれ変えざる得ないのではないでしょうか。

また、具体的な目標や数値によって達成の可否を判断できるものだけでなく、大学のビジョンであったり、ミッション、3ポリシーのようなものにも影響を与えるかもしれません。たとえば、昨今のビジョン等によく出てくるフレーズに「グローバルリーダー」というものがあります。今回ほど各国の首長の人柄や対応の違いが明確にでたことはなく、グローバルリーダー像は多様化かつ具体化しました。でもどれがめざすべき「グローバルリーダー」かというと意見が分かれそうで、学内で議論する必要があるように思います。

また、もーっと根本を見ていくと、大学関連のビジョンが(大学以外もそうかもしれないけど……)最終的にめざすものは、「よりよい社会」への貢献だと思うんですね。でも、今回のコロナによって、そもそもよりよい社会とは何なのかという問いを、私たちは突きつけられてしまった。経済発展をするだけでは、どうやらいい社会に行き着かなさそうだとか、人の尊厳とは何かとか、しあわせとはどういうことか、とか……。こういった価値の揺らぎは自覚している人もいるでしょうし、無自覚でありながら実は揺らいでいる人もいるように思います。これによって、以前はしっくり来ていた言葉が、しっくりこなくなった、なんてことも出てくるように思うのです。

今なのか、それとももう少し落ち着いてからなのかは判断が難しいところですが、コロナという事象に、自分たちの支柱となる考え方が、どう影響を受けたのか、または受けなかったのかを、検証する作業がいります。結果的に、何も変わらないことも十分あり得ます。でも、言葉としては変わらなくても、そこに込められたニュアンスが微妙に変わることもあるだろうし、本当に何も変わらなくても、変わらなかったことを確認することに意味があります。ビジョンであれ、ミッションであれ、3ポリシーであれ、それらが飾りでなく「生きた言葉」であり続けるためには、こういった作業が必要不可欠だと思うのです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?