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丁寧に仕込めばここまで活きる!芝浦工大のアーカイブ動画公開プレスリリースから読み解く”講演会フル活用術”

大学のプレスリリースを見ていると講演会やイベントの開催告知をよく目にします。今回、見つけたプレスリリースも講演会をテーマにしたものなのですが、内容が告知ではないんですね。とはいえ、こういう切り口でプレスリリースを出すのはインパクトがあるし、人によってはこっちの方が喜びそうに気さえしました。変化球ではありますが、ヒントになりそうなのでご紹介させてもらいます。

アーカイブ動画公開の告知だからこそ伝えられること

では、どのようなプレスリリースなのかというと、芝浦工業大学によるもので、講演会のアーカイブ動画を特設サイトに公開した、という内容です。動画内容は、芝浦工大とSWCC株式会社が共催したダイバーシティの講演会で、今を去ること2ヶ月前に開催されたもののようです。何かしらの最新情報を求めてプレスリリースを見る人が大半でしょうから、過去の取り組みを伝えられても……と感じる人もいるかもしれません。でも、このプレスリリースのやり口は、けっこうワザありというか、うまいやり方だと思うんです。

まずそう感じたのは、リリースを出す理由を強調できることです。そもそも講演会のアーカイブ動画を公開するというのは、そんなに珍しいことではありません。それなのに、わざわざそれをプレスリリースにするというのは、なぜなのか?と見た人は不思議に思うわけです。それに答えることで、新たに何かしらのメッセージを付与することができます。ちなみに、この講演会では下記のように理由が述べられていました。

<前略>本講演会を開催したところ、予想以上の反響があったことから特設WEBサイト内で講演内容を配信することといたしました。皆さま、ぜひ、ご覧ください。

芝浦工業大学プレスリリースより

まあそうですよね…という内容ですが、でもこれって講演会の告知では絶對に言えないことではあります。時折イベントの開催報告のようなプレスリリースを見ることもあるのですが、すごくよいイベントでしたとわざわざ言われても、こっちとしてはもう参加できないわけで、あーそうですか、よかったですね、としか言いようがありません。でも今回のやり方であれば、好評だったことを伝えつつ、その内容を伝える動画をすぐさま見に行くことができるわけです。

芝浦工大の取り組みを見て思ったのですが、大学としてとくに力を入れて伝えたい講演会があれば、企画段階から開催告知とアーカイブ公開告知の両方をプレスリリースする前提で進めるのもよさそうです。アーカイブ動画の公開をわざわざプレスリリースする理由については、芝浦工大のように想定外に好評だったからというのもありですが、◯◯について少しでも多くの人に知ってもらいたいから、とか、ここでしか聞けない貴重な内容だったから、とか、いろんな理由づけができるように思います。そしてこの理由をちゃんと述べることで、講演会の価値をさらに際立たせることができるのではないでしょうか。

小さな工夫で、大学にも、企業にも、うれしい取り組みに

もう一つ、今回のプレスリリースで面白いと感じたのは、動画の公開先である特設サイトが、SWCC株式会社のサイトだったんですね。これって、大学はもちろん、コラボする企業にとっても大きなメリットなように思います。

講演会の動画が掲載されたSWCC株式会社の特設サイト

まず大学側にとっては、企業側がこの講演会を高く評価していることが言外から強く伝えることができます。プレスリリースで、自大学の取り組みを、いくらよい取り組みだったと書いても、どうしても自画自賛感が出てしまいます。でも、今回のように特設サイトの運営先やアーカイブ動画の公開元が企業側だと、”企業がわざわざそういったことをするだけの価値がある”ということが自然と伝わってきて、説得力が付加されます。

企業側にとっては、普段接点のない人たちに自社を知ってもらうきっかけになるというのが大きいように思います。とくに今回は、ダイバーシティ、それに理系女子学生の活躍をテーマにした講演会だったため、在学生(とくに女子学生)が見に来てくれる可能性も高いわけです。そして、学生たちは、ダイバーシティや理系女子に配慮のある企業というイメージを持ちつつ、サイトも動画もSWCC株式会社側にあるので、そのままSWCCの他サイトや動画を見てくれることも期待できます。これって採用活動のプロモーションだと考えたとき、けっこういいやり口だと感じました。

アーカイブ動画の公開をプレスリリースで告知する。こう書いてしまうと、とってもシンプルです。でも、実はいろんな工夫があり、大学はもちろん、企業にとってもメリットのある取り組みに仕立て上げています。こういう細かい工夫を仕込んで活動の価値を底上げしていくのも、広報の面白さのような気がします。

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