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半農半X?いや1農9Xやろ。

農業と農のある暮らしは違う。

これは私が農業を小さいなりにも始めてみて痛感するところだ。今、香川県の「讃岐広島」という離島で農家民宿(農家が自宅等を利用して営む宿泊業)を経営していると、ときおり移住相談を受けることもある。そうすると多くの移住検討者が、

「田舎で農業をしてみたいんです!」

なんて口にする。ただこれは実際のところ庭先で家族が食べる分の畑を持つという意味であって、別にそれを商品として換金しようと意気込んでいるわけではない。つまり、農業ではなく、農のある暮らしを望んでいるのだ。やはり農業は「業」である以上、それはカネを稼ぐ手段でもあるため、これは大きな差異である。

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と偉そうな事を言ってはみたが、私も農家であるとはいえ、極めて農のある暮らしに近い農業をしている。つまり、生産農家として出荷しているとはいえ、農業の売り上げ・栽培面積の規模は相対的に小さい。
また事業経営のバランスも、現在のところ2:1、将来的には8:2で宿泊業の収益を増やしていこうというところだ。

★★★

さて、先日、香川県庁農林水産課の方が「半農半X」をテーマに私のもとに状況調査に来てくださった。その方に話を聞いてみると、香川県内にも私のような農家民宿はもとより農業×カフェ農業×カレー屋なんていうビジネスを展開している方も少なくないらしい。気になるのは、農業とカフェがそれぞれどのくらい割合を売り上げに占めているのか?と言う点である。

「うーん、9割くらいはカフェの売り上げらしいですね。畑も家庭菜園程度の大きさですから」

と担当者は言う。なるほど、半農半Xどころか、1農9Xというわけか。私も2農8Xを想定しているので、正直少し安心したところである。

★★★

実際、農業が副業化するのは今に始まったことではない、なじみ深い言葉で言えば「兼業農家」という語句に言い表される。
香川県でも、農家の大半はこの兼業農家(準主業的経営体・副業的経営体)である。

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資料引用:香川県農林水産部,2022「データで見る香川の農業・水産業」,p4

もちろんこれにはサラリーマンが実家の畑や水田を引き継いでいるパターンが多く含まれるが、1農9Xにせよ、サラリーマン農業にせよ、このデータが示すのは、

「農業だけでは、食えない」

という点である。もちろん専業で食えている農家はいるし、その技術は凄まじいものがある。ただ、彼らはマイノリティだ。

★★★
だとすれば、もしかすると半農半Xは農業の延長にあるのではなく、農のある暮らしの延長にあるのかもしれない。もっといえば、農を事業にするのではなく、農をその他の事業に取り込むということを指す気もする。

だからこそ、一度疑問を投げかけるためにも叫んでみたいのだ。

半農半X?いや1農9Xやろ 

と。

(終)

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