大工の祖父は船乗りになりたかったらしい
ある時、祖父の親指の爪が割れていた。
聞けばトンカチで釘を打っている際に、誤って親指の爪を思い切り叩いてしまったらしい。
祖父はいつの日か自分の建てた家が新聞に載っていると嬉しそうに話した。またひょいと美しく強固な踏み台や棚を作った。しかし、幼き日の私にとっては、そんな傑作以上に割れた爪こそが彼が大工であることを表明しているように思えた。
そんな祖父は祖母に比べれば遥かに口数が少ない。正確に言えば、大阪難波で生まれ育った祖母と香川の離島で生きてきた祖父の間には、その数に大