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こんなやつもいるから大丈夫です、知らんけど

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日常の疑問や問題意識、抽象的な問いをあーでもない、こーでもないといいながら、簡潔で読みやすいエッセイにまとめます。 どうぞ、肩の力を抜いてお読みください。 きっと何か発見があり…
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#田舎暮らし

分かり合えなくても、分かち合うことはできる ~「ねじれの位置」を目指して~

私とあなたは「分かり合う」ことができるだろうか。 私はこれまで、あなたと「分かり合いたい」「分かり合えるはずだ」と信じて生きてきた。きっとそれが、私にとっては、あなたという存在に関心を注ぎ続けるエネルギー源だったように思う。 しかし、25歳になろうかという頃、私はこの信念を覆すこととなる。 私は他人を理解できない私は他人を理解できない という事実を私は知らされる。発達障害。医学的な見地からの診断である。 その特徴の一つに、会話や言葉の文脈やニュアンス、また他人の顔色や

90歳のおばちゃんは島で死にたい

「朝起きたら山の緑がキレイやろ、ちょっと歩いたら海が青うてええやろ。近所の人もええ人ばっかやったし。だから、ここがええんや」 おばちゃんは今年90歳になったらしい。夕方、畑で作業をしていると、耕運機が動かんのやと声をかけてきた。 結論から言うと、耕運機は直らなかった。ただ、その分、小一時間ほどおばちゃんの話を聞いたことにもなる。 島に来る前は大阪に居たり、博多に居たり。彼女の半生は波乱万丈なものだったらしい。 「島で死にたいんや」 と嬉しそうに言う。死に対して、どこ

農家が収穫よりも好きなこと

「この世に在る線は全て、線分である」 高校生の時に、そんなフレーズどこかで目にした。直線とは、ある2点を通る無限に続く線である。だから、その2点は端点ではない。一方で、線分は有限で端点が2つすなわち始点と終点を持つ。 高校時代、数学の授業で配られたプリントの座標平面にはしばしば2点を通る直線が印刷されていた。しかし、それはやはり数式的には直線でも、眼前の物質的な事実としてはせいぜい5㎝くらいの線分だった。私はその後も大量の線分を直線と呼びながら高校生活を送った。 時に一

丁寧を添える暮らし

「島で丁寧な暮らししてますよね〜」なんて言われ始めて早四年。とはいえ、私は未だに大盛りチャーハンも、空きっ腹にビールも好きです。 そんな私の昼食の定番はインスタントラーメン。最近は春なので花壇で爆発している葉物やネギも適当に放り込んでおります。 思うに私の生活は丁寧な暮らしではなく、丁寧を添える暮らしだと思うのです。インスタントラーメンに旬の野菜を入れるみたいなもんで。 たとえインスタントラーメンが体に悪いとしても、私はやっぱり食べたい。だから、今日も少しだけ丁寧をラー

大工の祖父は船乗りになりたかったらしい

ある時、祖父の親指の爪が割れていた。 聞けばトンカチで釘を打っている際に、誤って親指の爪を思い切り叩いてしまったらしい。 祖父はいつの日か自分の建てた家が新聞に載っていると嬉しそうに話した。またひょいと美しく強固な踏み台や棚を作った。しかし、幼き日の私にとっては、そんな傑作以上に割れた爪こそが彼が大工であることを表明しているように思えた。 そんな祖父は祖母に比べれば遥かに口数が少ない。正確に言えば、大阪難波で生まれ育った祖母と香川の離島で生きてきた祖父の間には、その数に大

【3日・日曜】マルシェ野菜ラインナップ! 〜さいたま新都心駅・けやきの下マルシェ〜

いよいよ次の3日・日曜日、さいたま新都心駅「けやきの下マルシェ」に出店します!(さいたまスーパーアリーナのある駅です) 農薬・化学肥料は一切使わずに育てた野菜たちを島から持ち込み販売!! ほとりの野菜の他、島のおっちゃん・おばちゃんたちから仕入れた産品も販売します! ほとりの味、香川の離島の味を埼玉でも! ぜひぜひお越しくださいませ☀ というか、会いにきてください! ほとりの野菜 島のおっちゃん・おばちゃんより

ベル、都会も都会で大変らしいよ

香川の離島での生活は、毎日ほぼ同じだ。 天気はずっと晴天だし、夜は波音が聞こえるくらい静かだし、日中見かける島民もほぼ同じ顔ぶれだ。なにせ島には150人くらいしか人がいないのだから、そりゃそうか。都会で刺激ある生活を送っている人からすれば、極めて退屈な生活にも見えるであろう。 「田舎で退屈な暮らし」と頭の中で反芻すると、いつもあのキャラクターが頭に浮かんでくる。 ディズニー映画「美女と野獣」のヒロイン・ベルが暮らす街を歌ったこのシーン。ベルはこうした退屈な毎日を乗り切るた

お迎え頼みますね、春さん。

「迎春言うても、アホ寒いやないか」と毎年愚痴をこぼすものでしたが、年末年始に畑に行けば「ほんまに春が来るんやなぁ」と感じたりもします。 オオイヌノフグリ、コハコベ、ヒメオドリコソウ、ホトケノザ。 3月頃から誇らしげ咲く草花が、ちょうど今、冬を様子見るようにちらほら顔を出すのです。 これまでは春を迎えるつもりで生きてきました。 だからこそ、2022年は、春に自分を迎えてもらおうかなと思います。 良いお年を。

何事も経験だけど、経験すべきことが多すぎる件

やらないよりはやってみた方がいいし、 失敗も重ねた方がいい。 私もなんだかんだそう思う。ただ、なんか経験すべきこと多くないか? 最近、世の中自分の知らないことだらけだなぁとよく思う。改めて。 それは昔ながらの料理法であったり、図書館で見向きもしなかったジャンルであったり。ソクラテスは無知の知の存在を指摘したが、私からすればこの現代は「自分って何にも知らねぇな」と思わされる場面だらけのような気がしている。 古い本や高齢者の武勇伝はまさしくその要因だ。かくして途方に暮れてい

ここ掘れイノシシ、奇跡のスマホ

この夏、私はスマホを失くした。しかも、畑で。 遡ること、4ヶ月。 畑作業と友はいつも私にラジオや音楽を届けてくれた。そんな友を私は畑で失くした。それから一週間、毎日畑を探してみたが、全く見つからない。ついには諦めて新しい友を迎えることとした。彼は畑で殉職したのである。 さて季節変わって秋も深まる11月。冬を迎えるせいかイノシシの活動も活発になってきた。そんなイノシシのたちの被害に悩む私は、今日も畑の見回りに。 当たり前のように足跡が付いているのをみると、胸の奥に冷や汗が

久しぶりに野菜を買うと、新しい味がした

自分が育ている作物は購入しない。 また旬ではない作物も買わない。だから、冬にナスやトマトを食べない。 そんな生活が早一年半になった。そのため、昨冬は畑のカブ、水菜、小松菜ばかりを食べていたら春が来ていた。 今年はそうも行かないらしく、当面は野菜を買うほかなさそうだ。だって獣害が出たから。 さて、そろそろ収穫するはずだった野菜を買ってみると、買った野菜、そしてその生産者に対して凄くありがたみを持つようになっている自分がいる。なぜなら、一応は私もその苦労を知っているから。

島旅農園「ほとり」を旅してもらいました

今回は私の記事というよりも、こちらの記事をぜひお読みいただければ。 旅の道中、畑、お料理、宿の様子。 それぞれの場面を皆様にも感じていただければ。 さてパステルプラネットさんはフォロワーさんというだけでなく、私の事業のロゴを作ってくださった方たちでもあります。 愛らしいタッチのイラストもぜひチェックしてみてくださいね。 ではでは長くならないうちにこの辺で。

酒も慰めもいらない、旅するための距離が欲しい

辛い日が続くと途端に旅に出たくなる。 私は昔からそんな人間だった。 ただここ数年はほとんど旅に出ていない。 昨今、あの感染症のせいで、旅に出られない時間が年単位で続いているからである。また私自身が個人事業主とアルバイトの2足のわらじで働いているジリ貧状態ではなかなかはそうはいかないのだ。 もちろん居住地の近隣を移動するような旅のスタイルもある。ただどこか私はそれを受け入れられないようだ。 香川県丸亀市に居住する私は、先日原付を走らせ香川県三豊市へ。無論、三豊市には三豊市

あの日の虹はピザ1切れ分

ピザ1切れは中心角30°の扇形であった。 私が宅配ピザ店でアルバイトをしていたあのころは、いやたぶん今も、Lサイズのピザは12等分されていたように思う。つまり、ピザは1切れあたり、360°÷12=30°の扇形をしていたというわけだ。 ピザ1切れが30°と知ってから、かれこれ6年が経つ。この紛れもない事実は、全くと言っていいほど私の人生に影響を与えてこなかった。 進学したり、就職したり、移住したり。 そのどの場面を振り返っても、半径15センチの、表面積18.75π㎠、弧の