マッドパーティードブキュア 29
その部屋には曖昧なものは何一つなかった。直線と円弧で構成された床に柱。傷も、欠けも、歪みもない。
広い部屋だ。数百の人間が入ってもまだ余裕はあるだろう。その広さを装飾が覆いつくしている。執拗なまでに全体と部分が一致した装飾。常に歪みと混沌が侵食し、万物の境界があやふやになるこの街で、調和を作り維持するのは容易なことではない。
「それで、首尾の方は?」
部屋の最奥、幾何模様の生命の樹をかたどったステンドグラスの下、一人の天使がいた。天使は仮面のような笑顔で、足元の男を見下