マッドパーティードブキュア 23
「もしや、ドブキュアって、やつなんでしょうかね?」
ズウラが凶悪な顔をゆがめて呟いた。
ドブキュア、この街で生きるものが一度は聞いたことがある名前。女神の酩酊と気まぐれにより、付近にいる中学生少女に与えられる祝福、あるいは呪い。街の脅威に対抗するための恒常化プロセス。街の脅威への対策っを押し付けられる厄介事。宝くじに当たるような幸運の結果。落雷に当たるような不運の結末。
その力は本来、中学生相当の少女を対象に与えられるもののはずだ。それがなぜマラキイに降りかかってきたのかはわからない。なんらかの非常事態だったのか、単に女神が間違ったのか。
おそらく、マラキイはドブキュアとなってしまった。あの混沌の獣に対抗する力はドブキュア特有のものだろう。戦闘時に少女になったのも、ドブキュアならば当然のことだ。全ての説明はつく。
ただ一つ、マラキイが成人男性であって、中学生相当の少女でないということを除けば、だが。
捻じ曲げられた道理は、事実を捻じ曲げることで道理を正常にした。
マラキイはドブキュアの戦闘モードから解放されても、成人男性の姿に戻ることはなかった。中学生の年頃の少女のまま、いつまでたっても元に戻ることがない。
真実を知る女神は、眠ったまま何も語らない。
「せめて、ラゲドの野郎を締めりゃ、なんかわかるかもしれねえですが」
「次は逃さねえ」
言って、マラキイは拳を掌に打ちつけた。ペチンと軽い音。戦闘状態でない少女の身体はひどく貧弱だ。
「失礼するよ」
ノックもなく、扉が開いた。声の主は診療所の主、カツラザキ先生だ。
「悪いけど、相部屋一人増やさせてもらうよ」
「別に、俺らは構わねえけど」
マラキイは先生の方に目をやった。ぬらりと長い髪が顔を覆い隠している。その後ろに、土気色のうつろな顔をした男が二人、担架を持って追従している。
「そいつは」
マラキイは担架の上の患者を診て、驚きの声を上げた。
【続く】
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