お盆の情景
幼少期の私にとって、お盆はおばあちゃんの家に帰れる、楽しみな日だった。
大人になった今、実家近くに住んでいるため、そんなワクワクさとは縁遠くなってしまった。
特に、ここ数年は社会情勢的にも大人数で集まりにくく、自然とみんな足が遠のいてしまったと思う。
だけど、今年は違った。
遠方にいる義姉と甥っ子姪っ子も久しぶりに帰ってきて、久しぶりの賑やかなお盆。
決して狭くはない義実家が、ぎゅうぎゅうに感じられるほど、人のぬくもりに包まれた空間だった。
食べたいものを買いにスーパーに買い出しに行って。
子供たちだけでお寿司の大皿がすっからかんになってびっくりして。
ご飯も早々にほっぽって隣の部屋で遊び始める子供たちを横目に、残り物を食べる大人たち。
慌ただしくも心はゆっくりと過ごせる時間。
ここ最近、心が塞ぎ込みがちだったなと気づく。
夏の暑さなのか、日頃の疲れなのか、仕事へのモヤモヤのせいなのか、なんだかすっきりしない日々。
突き抜けるように青く解き放たれた夏空が、なんだか後ろめたくて。
必死にノートを開いて言葉を紡いでみるも、それすらも怖くなってしまう日もあった。
だけど、こうやって「家族」に囲まれていると、心の輪郭が少し戻ってくる。
特に何をしたでも話したでもないけれど、なんだか私はここにいてもよかったみたい、と素直に思える瞬間。
いつも、うまくいかないことばかりに目がいって、自分のことが情けなくて。
人と会うと比べてしまって心がしんどくなってしまうのでカチカチに凍らせて。
でも、そういう気持ちすらも溶かしてくれるのも、また人なのだと実感する。
夜、家の前で花火をした。一体何年ぶりだろう。
気軽な気持ちでやった小さな打ち上げ花火が、思いの外激しくて、叫びながら笑ってしまった。
こうやって笑ったことは、きっと忘れない。
私はちゃんと、思い出の中でも生きてた。生きてる。
みんなそれぞれ違う地で生きているから、次また会える日はいつになるかわからないけれど。
それまで変わらず私は私なりに生きていくだけ。
だけど、その道に確かに、ほんのり残った夏の思い出。
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