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Episode 115 泣いてる理由がわかりません。

長女が生まれて半年、結婚して1年が過ぎようとした1997年の春、私はマネジャー登用の社内試験に合格し、東北地方の某市へ栄転で異動します。
長女がようやくハイハイしようかという時期。
家族3人で新居を探しに行き、納得して契約したアパートに入居した初日に、段ボールの山に囲まれた部屋でパートナーが泣いていたのを覚えています。
衝撃的でした。
4月になったというのに小雪が舞う寒い日でした。

知らない街で、知り合いのひとりもいない環境で、娘とふたり放り出された気がしたのだと思います。
引越し当日までは義父母もいて、何かと準備も忙しくて考える間もなかったのでしょうが、いざ引越しが完了してしまえば家族3人にならざるを得ないワケです。
一気に心細くなった…というのは、今思えば容易に想像できるところです。

一方、当時の私はパートナーの涙に衝撃を受けながらも、何で泣いているのかは理解できていませんでした。
出世の最前線を行き、余裕があるとは言わないけれど、家族で生活するには経済的には問題ない収入もあり、何より愛すべき子どもも生まれ、順調で円満な家族と思いこんでいる能天気。
そんな私がどれくらい家事・育児に参加していたか…といえば、お恥ずかしいと言わざるを得ないレベルなワケです。

完全分業にシフト出来てしまった原因は、前任地での義父母のフォローとそれ故に私の行動を容認してしまったパートナーにもあったと思います。
当然、その上に胡坐をかいてしまった私が最大の問題だったわけですが、一度できてしまったパタンを崩すのは非常に難しい…なにしろ予定調和で完璧主義が、私のASD傾向だったワケですから。

ハイハイを始めたばかりの長女とふたりっきりのアパートを思い、不安を募らせるパートナー。
念願のマネジャー職に就き、仕事絶好調でやる気満々の私。

お互いの気持ちのベクトルが違う方向を向いている新生活が始まろうとしていたのです。

旧ブログ アーカイブ 2019/1/7

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