Episode 711 グリーンに必要なものなのです。
日本には、「今」を支える原動力になった「高度経済成長」という時期があります。
具体的には1950年代の終わりから1970年代の初頭までを指すようですが、日本が「敗戦」からの復興を遂げ、経済的に「先進国」と肩を並べるに至る重要な時期なのだと思います。
その時代に作り上げられた価値観のひとつに「経営家族主義」などを基本とする日本的経営がありましてね。
詳しく話すと長いハナシになるので割愛しますが、父親を家長とする昭和日本的な家制度のような会社経営を指す言葉だと理解していただければ良いかな…と思います。
どんな経営方法にも「利点と欠点」があるのは当然のことでして、日本的経営にも当然「利点と欠点」があるワケね。
その欠点のひとつとして「労使関係」が対等ではない点があげられるのだと思います。
経済が右肩上がりであるうちは、労使が協力して仕事に精を出した方が良かった…下手に戦って関係を拗らせるよりは、手を取り合って同じ方向に向かって行動した方が安定した収入にも繋がったのです。
ただ、経済が停滞し始めると、賃金は上がらず、賃金を上げたくても、長く経営側と手を取り合ってきた労働側の組織は、権利を求めて経営側と戦った経験すらないワケね。
常に先進国を目標に追い掛けている立場だった日本は、先進国の仲間入りをした途端に「追いかける目標」を失ったように思います。
そこには、後発の劣勢から最短で追いかけ追い付くことを目的にした学校教育があり、実際に追い付いた後の「方針の転換」が上手くできなかった教育体制の不具合があるように私は思うのです。
そのあたりについての話題は埋め込んだふたつのnote記事に書き綴っているので、そちらをご覧いただくとして…。
日本的経営の価値観は、フレデリック・ラルー氏が示した「組織の発達段階」で言うところの「アンバー(琥珀色の)組織」が該当するのだと思います。
先行する国や地域に追い付くために必要な統率…と言う視点では、アンバー組織は理に適っているのだと思います。
ただ、追いついた後に目標を失って失速するのは、組織がアンバーからオレンジに進化し切れずにいるからだと思うのね。
世界は既にオレンジ組織を標準として、その先のグリーンに進化しようとしている…ここに「多様性」と言う言葉が現実味を持って登場するワケね。
グリーン組織の特長は、共有価値に向かって自由に創意工夫を行う権限を、組織を構成する全ての人に与えている点…つまり、多様な発想を持ち込むことが新たな価値を生み出すことに繋がると言う考えを持つことです。
世界が「ダイバーシティ」を求め始めた理由は、このオレンジからグリーンへの進化の過程にあることを意味しているのだと私は思っています。
ところが…日本はまだオレンジ組織の達成にも及んでいないのだと、私は感じているのです。
私は以前に「東側諸国」が経験した共産主義社会の失敗は、資本主義社会の成熟を経験せずに世界を共産化しようと試みたことに最大の原因がある…と指摘しました。
社会の成熟とは、その価値観を地域住民が等しく持つことによって達成されると思うのです。
日本の現状が「アンバー→オレンジ」への変革期にあるとして、グリーン組織の考え方である多様性を投げ込んで、それが正しく機能するのか…と考えた時、それは難しいだろうと思うのですよ。
その理由は「東欧諸国の共産主義社会の失敗」という、歴史的事実です。
「世の中はゆっくりと共産主義への道を歩んでいる」…そう言ったのは、私の大学生時代の恩師である横山昭男教授でした。
その時代に合った価値観により地域社会は構成され、世の中は動く…という事実を正確に捉えて、ではどうするのか?
経済的活動という人の生活に大きな影響を与える分野において、産業革命から現在に至るまでの資本主義社会活動を組織の面から切り取ったのがフレデリック・ラルー氏が示した「組織の発達段階」という考え方なワケです。
ここで示された「ダイバーシティ」の視点は、あくまでも人の生活を支える経済的活動としての視点だと感じます。
これを踏まえて、次回は人権問題としての「ダイバーシティ」とは何か…を哲学してみようと思うのです。
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