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Episode 215 練習すればできるのです。

ASDの私が飲食系の仕事をしていたと聞いて、カンが鋭い方は何か違和感を感じたかもしれません。
そのひとつが先に話題にした「感覚過敏/鈍麻の問題」、そしてもうひとつ「マルチタスクの問題」です。
この点についても以前に話題にしているのですが、出来るという明確な回答を示すことが可能です。

ASD者の苦手でよく言われる「マルチタスク」ですが、私も然りです。
同時にふたつ以上のことを考えられませんから、物事を考えるのには静かな場所でひとつずつというのが基本です。
でも、これはあくまでも「新しいことを考える」時であって、全てがこの図式に納まるわけではありません。

私の今の仕事はリーチ式フォークリフトのオペレーターで、左手でハンドルを握り、左足でブレーキペダルを操作し、右手で前後進と爪(フォーク)の操作をする計4本のレバーを操って作業をします。
フォークリフトを扱ったことがない人から見れば、それが例え定型者であっても、どこをどうやったらそんな動き方をするのか、ちょっとやそっとでは分からないと思います。
体を支える右足以外、それぞれがバラバラなことをしているワケですから。

これは、他のことでも言えます。
最近「発達障害者の運転免許取得」という話がメディアで話題になったりしています。
かいつまんでお話すれば、時間が掛かっても運転技術の習得は問題なくできる人が多く、免許を取得して安全に運転できる人は多数いる…ということです。

つまりですね、このことは運転技術の習得に限定される話ではなくて、全てにおいてそうだということです。
フォークリフトの運転だろうが、野球のピッチングやバッティングだろうが、それは二つ以上の動作を混合して体を動かしている話であって、それが出来るからこそスムーズな身のこなしに繋がるわけです。

もちろん個人差があって、向き不向きは当然あります。
練習すれば何でも習得できる…のなら、私だってイチローさんのようなスーパースターになれてますよ。

私は、自動車の運転やフォークリフトの操縦のような乗り物系の操縦には苦労していません。
もちろん、キチンと時間を掛けて技術の習得をして…の話です。
同じ要領で、調理や接客の作業についても時間を掛けて習得をした…と言うことです。

お客様を席にご案内してお水とおしぼりをお持ちする…これはできるだけ早く。
注文を伺うのはそれから約3分後、ランチはもっと早い…それくらいの時間帯でお客様がメニューから顔を上げるタイミングを覗っていればいい…。
配膳台からお客様にお料理をお持ちして配膳台に戻ってくるまで1分30秒くらい…お水をお出しして料理2往復運べば大体3分経過…ランチなら1往復、ディナーなら2往復。
聞いてなくてもタイミングは計れるのです。
注文の時だけ言葉が理解できていれば何とかなるのです。

これをマルチタスクと呼ぶかといえば、私の中ではクルマの運転をするのと同じ領域の話です。
つまり、定例作業の「ルーティン」です。

ルーティンとは、どうやったら上手くいくのかを自分なりに作り上げた塊です。
ルーティンの内側にある作業は、外側から見ればマルチタスク以外の何物でもありません。

こうやったら上手く行く…を作り上げるのに要領が悪いがゆえに時間が掛かっても、作り上げられた「上手く行く」を実行するのは、どれがどんなに複雑な同時進行を含んでいようと関係ありません。
ボールを見る・体重移動・体軸の回転・バットを振る・フォロースイング…をまとめて「バッティング」と言います。

つまり、私にとって接客や調理は、それと同じことだったと言うことなのです。

旧ブログ アーカイブ 2019/4/17

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