見出し画像

Episode 611 女性が少ないとは思えません。

最近は違うのかもしれませんが、長らく「自閉スペクトラム症は男性に多い」とされてきました。

アメリカ疾病予防管理センター(CDC)のAutism and Developmental Disabilities Monitoring (ADDM) Network によれば、およそ68人に1人がASDであると確認されている。
男児では42人に1人、女児では189人に1人と、男性に5倍多い。

Wikipedia

この引用データの出どころのは2015年7月2日の記事で、確かにそのような記述がされているようです…英語が苦手な私ですが、CDC発行の原文にもそのような記述が見て取れます。
ただ…この記述がされてから既に7年近くが経過しており、さらに調査対象が2002年生まれの子どもを2010年に調査した結果だったことがCDC発行の原文には明記されていですね、このデータの「その後」の調査が知りたいところだったりします。
大体にして、私は「ASD発現率に性別が関係する」という意見に否定的なのですよ。

最近、女性ASDに関する本が話題です。

数が少ないとされるが故に、男性ASD以上に難しさを感じる女性の多さが共感を呼んでいるのだろう…と思うのです。
実はASD女性は「発見」されないだけで、ASD男性と同じくらいの人数がいるのではないか…なんて、私は思うのですよ。

以前に私は「ASD女性と女性型コミュニティ」の関係性と、「ASD男性と男性型コミュニティ」の関係性を対比して、「ASD男性型ジェンダーの問題」と「ASD女性型ジェンダーの問題」を話題にしたことがあります。

このマガジンの中で私は、男性型コミュニティは「競争性」との相性が良く、女性型コミュニティは「協調性」との相性が良い点を指摘します。
詳しくはリンクからマガジンにジャンプしていただくとして…。
このマガジンを書き上げる過程で私は、ASDはその特性上「競争性」との相性が良いことを理解していくことになるのです。

コミュニティとは、その地域のマジョリティたる「一般的な人」が都合よく生活するために編みだした「生活の不文律」としての要素を多く含むのだと思います。
それ故に地域による「文化の差」は当然あるワケですよ。
ただ、人の生活の便利さと豊かさという点で、その文化が地球上のどこに行っても大枠でブレるようなことはあまりないように思います。
西欧諸外国と島国日本を比較して、農耕文化~貴族的社会の形成~武力の台頭と封建制度~貨幣経済へと進む歴史の流れは基本的に同じで、男性と女性の役割というものも「子孫を残す」という観点から、世の東西を超えて同じような役割分担がされてきたと、私は考えます。

「ウーマン・リブ」と呼ばれる女性解放運動の中心は欧米各国だったワケで、「未だに残る格差」の大小はあるにしても、ジェンダーの問題は日本だけの問題ではないのですよ。

ASDの特性を一言で言えば、「自分の感情をコントロールすることができない」ということだ…ということは、このブログシリーズで毎度のように言っていることでして、つまりそれは「自分の感情をコントロールすることができない」ということと、男性型コミュニティの「競争性」と女性型コミュニティの「協調性」のどちらが相性が良いか…という問いに置き換えることができるのではないかということなのです。

性自認が男性か女性か…という点は一旦横に置き、見かけ上の性別で判断され、その性別のコミュニティに所属せざるを得ないのが一般的なのだろうと思います。
ASD特性と相性の良い「競争性」に重点が置かれがちな男性コミュニティで、「得意分野への集中」というASD特性の解放がある程度許される男性ASDは、結果的に「発達凸凹」をそのまま(または強化して)発揮させて「ASDである」と発見される一方で、相性の悪い「協調性」に重点が置かれがちな女性コミュニティで、「苦手分野のトレーニング」というASD特性を打ち消す努力を強いられれば、「ASDである」という特徴は表に出にくいのではないか…というのが私の見立てです。
当然、「発見」される人数にも影響が出るでしょう…。

それ故に「私は男性らしくない」と思う男性ASDよりも、私は「女性らしくない」と思う女性ASDが多いのではないか…と。
それは女性型コミュニティとの相性の悪さからの「居心地の悪さ」というものが影響しているのではないかと、私は思うのです。

自助会を運営していて、「女性らしくない」と発言する女性当事者さんを見ていて、「いやいや、そんなことはないし、すごく魅力的だし」などと思うことが多くてね。

ASD女性が発見されない理由は、「コミュニティの質」というジェンダーの問題が大きいのではないか。
女性用のASD判断基準が必要だとすれば、このあたりの切り口は極めて重要な手掛かりになると、私は思うのです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?