見出し画像

Episode 617 そのシステムが無いのです。

少女漫画の金字塔「ガラスの仮面」に出てくる「奇跡の人」のお話は、私に「自閉」について数多くの「気付き」を与えてくれたエピソードでした。

コミュニケーション・チャネルが限定されることによって、意思疎通の手段を持てなかったヘレン・ケラーは「身体障害に起因する自閉状態だった」…と仮定することで見えてくる「私の気持ちのコントロールが難しい(=あなたとの意見調整が難しい)」という状態は、自閉の本質を知る上で大きな手がかりになったと思います。

ここから「ガラスの仮面」という物語の主題でもある「役作りとは何か」を考えるうちに、人格・パーソナリティの語源となる「ペルソナ」…即ち「(対外的な)仮面」を持つことが、あなたとの意見調整をする上で重要な役割を果たすのだ…と、理解するに至ったのです。

ただ…私には、ここから先がさらに難問でした。

自閉の自閉たる部分の想像は付いたのですが、それはあくまでも「どうしても私に表れてしまう自閉の思考」を言語化しているに過ぎず、定型と呼ばれる「普通」の人がどのように思考しているのを想像して「違うと思う部分」をお話ししていただけだったワケです。
先天的障害は後天的障害と異なり、「途中で失ったもの」ではなく「元から備わっていない」ものなので、持ち合わせていない機能を完全な形で理解することはできないのです。

ですから…例えば「ペルソナが作れない」を説明することはできても、「ペルソナを作るとは」という定型者が習得することが一体どんなことなのかを理解することが難しいのです。
それは「ペルソナを作る」を標準仕様とするあなたが、「ペルソナを作れない」自閉仕様の世界を想像するのが難しいのと裏表の関係だということです。

そんな疑問を悶々と考えていた先日のこと。
私はこの話題について、定型一般がどのように
考えているのかを知る手がかりを得るのです。

ASDである私は「あなたと私は違う考えを持つ別の人」ということを頭では理解しているのです。
でも、どうしてもあなたの考えていることがわからないと「不安」になり安心できないのです。
コレを放っておくと「不安」は周りの湿気を吸って大きくなり、「恐怖感」という雨を降らせるようになるワケです。
だから「不安」にならないようにあなたの考えていることを知ろうとするし、それでも考えていることが上手く私の理解に繋がらない時に、あなたの考えていることを「指定」しまうのだと思うのです。

このツイートに反応してくれた方がいます。
何度かこのブログシリーズにご登場していただいている、まめ(@mo_zahrada)さんです。
その、まめさんのツイートがこちら…。

なんかコレ、頭を鈍器で殴られたような衝撃的な言葉だったのですよ。

コミュニケーションで
「あなたってこういう人なんだ!」を交換こして
自分を知っていく作業は
「快楽」としか言いようがない

なんだって?
「ペルソナ」といわれる人格・パーソナリティを形成するとは、あなたに対しての私という個性を示し、私とあなたの意志の疎通を円滑に行う「システム」である以外に、自分自身を知るためのシステムでもある…と?
そして自分を知ることが「快楽」である…マジで?

ここに私は、定型一般の方の意見として、初めて「心の理論」の獲得によるコミュニケーションの真意を聞くのです。
必要に迫られた「負のベクトル」による獲得ではなく、自己形成と自己認知を積極的に求めた結果としての「正のベクトル」が原動力…そうなのか。

この意見を聞いて、私は自己形成と自己認知に積極的に取り組んだのかを自問自答することになるのです。

「ペルソナ」の形成に関するまめさんの見解は、コチラの記事に詳しく書かれています。
マジョリティ・サイドから見た「定型×ASD」のペルソナの裏表が解説されていますよ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?