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Episode 176 必要なことが大事です。

発達障害があることで障害者手帳を取得した私が改めて感じることは、障害者は守られるべき存在として社会が認識しているのだという事実です。
そして「守ってあげているのだから口出しするな!」という無言の圧力です。

ウチの会社は、社員への福利厚生には積極的です。
それは、日配と言われるカテゴリに所属する食品メーカーであるウチの会社が、典型的な労働集約型の産業たからということと無縁ではありません。
以前お話ししたことがありますが、半年ごとに大規模な商品改廃が行われるのが通例の業界では、年間通して製造できる「看板商品」以外の機械化が非常に難しく、看板商品に育つまでは地味な手作業による商品製造が行われるワケです。
そこには手作業のプロ、百戦錬磨の熟練工がいて、そのほとんどが細かな手作業を地道にコツコツとやって来た「おばちゃん」なのです。

今となってはそれが良いこととはとても言えないのですが、地元のおかあさんたちが子育てをしながらでも雇ってもらえる低賃金の手作業をコツコツとやってきたというのが本当のところだと思います。
結果的にこれが熟練の技を培ったワケで、この熟練工をナシにして会社の経営は成り立たないのです。

それ故に、会社の屋台骨を支える現場の熟練工(≒おばちゃん)がいなくなってしまうのはすごく困るワケで、現場の作業員への福利厚生は必然的に厚くなっていくのです。

有給休暇の取得義務化なんて、今になって社会が大騒ぎしてますが、ウチの会社は有給休暇の取得率100%なんて、とうの昔に達成して当たり前になっているし、「産休・育休明けで職場復帰できない」とかの話なんてあり得ないどころか、本社には企業内保育園があり、社員であれば保育料無料(給食費と教材費のみ実費負担)で子連れ出勤・退社が可能、保育園に入りたいといえば、本社併設の工場など、通える範囲に仕事を探してくれるのです。

今、会社が力を入れているのは、男性社員の育休取得だったりするワケで、この辺りの福利厚生に関しては間違いなく時代の最先端を行くのです。

会社としては、現場で頑張る社員がいないと困るのです。
それこそ昔は低賃金で粘り強く働く女性が生産現場で重要な役割を果たしていたワケで、その流れがあるからこそ女性に対しての福利厚生が充実したのです。
時代は男女平等の方向に進み、今度は現場で働く男性陣にも福利厚生を考える必要が出てきたワケです。

例えば…お母さんが子どもを保育園に預けて一所懸命に仕事して、家に帰って家事一切…では、困っちゃうわけですよ。
昔なら家には爺さん婆さんがいて、孫のお守りや食事などの家事を任すことができた…でも時代とともに核家族化が進み、女性が働くには家事を分担するパートナーとしての男性の存在が欠かせなくなってきたワケです。
ウチの会社的には女性の担ってきた熟練工は手放せない…なら、男女分業の代名詞みたいな「男は黙って残業バリバリ」をなくさないとならない…。
そんな必要に迫られた状況でこそ時代は新しい方向に進むのです。

残念ながら、労働集約産業であるが故に集まって仕事をすることは外せない、故に在宅勤務やフレックスタイムなどは仕組み上、無理です。
状況によっては昼からの出勤をお願いするとかもあるワケです。
それでも、できる分野とできない分野をキチンと分かって、できる分野での福利厚生を充実させるのは、企業としてあるべき姿だと思います。

その一方で、障害者雇用はどうなのか?
国や自治体が定める障害者雇用の基準をクリアし、実績認定を貰うなどの「企業努力」をしているのは事実です…が、障害者雇用枠で与えられる仕事は「清掃」や「軽作業」ばかり。
残念ながらこちらの方は「障害者の雇用もキチンとしてますよ」って、ポーズにしか見えないのです。

私は、会社の女性雇用に対しての福利厚生の厚さと、障害者に対しての意識の薄さは、どれだけ会社に重要と思われているかの差なのだろうと思っています。

障害者雇用に福祉的見地以外で会社に有用な状況があるのか?
これこそ既成概念が打ち破れない根本的な問題なのだろうと思うのです。

旧ブログ アーカイブ 2019/3/9

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