見出し画像

Episode 276 プレゼントで考えます。

先週の土曜日はパートナーの誕生日で、その日はパートナーも私も仕事だったのですが、早めに帰ってささやかなお祝いをしました。
お互いに仕事だったので料理に手を掛ける余裕もなくて、いつもは手が出ないちょっと良いビールと、いつもよりもチーズが増量されたサラダで特別感を出すぐらいの本当にささやかなお祝いでした。
「この齢になったら誕生日なんか嬉しくない」なんて言いながらも、それでもパートナーは喜んでくれてね。
私の誕生日が来る8月までの2か月間だけ、パートナーと私は同い年になるのです。

以前、物に拘るASDの話の中で、プレゼントを話題にしたことがあります
その中で「家事や仕事の道具をプレゼントとして選ばない」とお話ししました。
実はこれ、過去にパートナーが私に言ったことが思考のベースになっているのです。
「がんばれは要らない」とハッキリ言われたのです。
それはまだ私たちが結婚する前の話でした。

「家事の道具なら必要に迫られて買わざるを得ない、そんなものと私への気持ちを一緒にするな。」
つまりね、「これ使って頑張って仕事や家事をしてください」というメッセージは要らないということです。
私はそれの本当の意味が分からなくてね。
物理的に具体的にしか理解できないASDの私は、プレゼントに「実用品はダメ」という縛りを掛けます。
自ずと用意するものは装飾品か衣料品か…そして、事件は起きるのです。

ある年のパートナーの誕生日のプレゼントに私は「浴衣」を用意します。
長女と次女がまだ小学生のころ…長男は幼稚園児だったハズです。
プレゼントを見たパートナーはあからさまに困った顔をするのです。
「ねぇ、これ…いつ使うの?」

まぁね、浴衣なんて年に何回使う機会があるか…。
しかも子どもに手がかかる時期にですよ。
私は私なりに「美しい彼女」を想像して選んだんですけどね…。

3年前に、パートナーは猛勉強をしてケアマネジャーの資格を取ります。
介護の仕事に就いて5年経過でケアマネジャーの受験資格が発生して、このまま介護職で仕事をするにしても、年齢的な問題でずっと現場は厳しい…と考えたパートナーは、将来を考えて資格取得を目指したのです。
見事に合格したパートナーは、ケアマネジャーとして栄転します。
そこで私はパートナーにちょっと良い「名刺入れ」をプレゼントしました。
これを受け取ったパートナーは、驚きを隠さずに喜んでくれました。
「仕事のモチベーションが上がるね」ってね。

私がプレゼントの「縛り」を初めて解いた瞬間だったと思います。

パートナーや子どもに対して、自他の境界が曖昧になってしまうのはASD者にとってありがちなことのようです。
私のプレゼントの問題は、このあたりの感覚を良く表していると思います。
子どもに対しての誕生日祝いやクリスマスプレゼントはパートナーと相談して「パパママより」とか「サンタより」として贈るので、あまり問題にならなかったのでしょう…もちろん、贈ったものが的外れだった年もありましたが。

浴衣のカワイイのはパートナーも良く分かっていたハズ…でも、今はそれじゃなかった。
これが付き合っていたころに…だったら、大喜びだったかもしれないけど。
名刺入れは「これからの仕事頑張ってね」ではなく、大変な試験勉強を仕事と家事の合間にやり続けて手に入れた資格、頑張ったパートナーへのお祝い、「ご褒美」だった。

プレゼントは、自分の気持ちを伝えるもの…それは正解、間違えてない。
でも、相手がどう思っているのかの想像力も必要なのです。

私はずっと物に拘って、相手に似合うかどうかを一生懸命考えてきました。
でもそれは私だけの考えで、私が良いと思ったものをあなたが良いと思うかは別だと、なかなか理解できなかったのだと思います。
プレゼントは、相手が何を欲しているのかを想像するトレーニングになる。
ケアマネジャーに合格したパートナーが欲しかったのは、頑張った私を褒めてくれることだったのだと思います。

今年のプレゼントは、普段使いできる感じのピアスにしました。
ちょっと良いヤツは持っているけど、なかなかいつも使うには…と感じているらしく、普段使いのピアスはローテーションが限定されているようでした。
もちろん、服装とかとのコーデも関係するでしょうけどね。

そんなに高いものではないけれど、喜んでくれている様子でちょっとホッとしています。
他者の気持ちを考えるとは、こういうことなのかな…と、最近やっと分かりかけてきた気がします。

旧ブログ アーカイブ 2019/6/17

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?