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枯れ沢を復活させ生物多様性の杜を造るための地図を作る

このレポートは、現場の地図から読み解ける情報や実際に歩いて調査した情報を地図に書き込んだ情報を共有します。多くの人たちと情報を共有して知恵を集めることを目的としています。

このレポートを書いているのは、枯れ沢復活&ホタルを飛ばす会応援団のまぁちゃんです。高尾山域でハイキングをしたりハンモックを張ったり沢歩きをしたりして遊んでいます。詳細は、twitterinstagramblogを。

地図とは

地図を作ることは現場を知ること、未来を思い描くために必要な情報です。

地図は、計画を立てること、今どこにいるかを知ること、記録を残すこと、つまり未来、現在、過去について考える時に役に立ちます。地図がある多くの人と情報が共有しやすくなります。地図は共通言語だからです。

山で遊ぶ時に、計画を立てる時にまず地図を見るし、現在地と目的地を知るために地図を使うし、思い出の写真にも地図情報が入っています。

地図を読むことでわかることがあります。さらに必要な情報を書き込んで自分だけの地図を作ることもできます。

概念図

概念図とは、地図から必要な情報を抽出し、見やすくした地図です。

枯れ沢復活&ホタルを飛ばす会の概念図
枯れ沢復活&ホタルを飛ばす会の概念図

登山での地図読みの基本は、山頂を探し、尾根を探し、谷を探します。これがわかると二次元の地図情報から三次元の実際の情報に脳内変換することができます。

黒の三角は山、緑の線が尾根、青の線が沢筋です。谷に水が流れるので地図から推測しています。そこで、実際に現地を確認すると水が流れた後がありますので、青の部分は沢筋です。ホタルの会では要になる情報です。残りの記号はこの土地の特徴的な部分を書いています。詳細はホタルの会にご参加を。

沢の呼び方

みんなと同じ認識を保つために、沢に名前をつけました。そうすれば言葉で情報交換ができるようになります。

沢のおおまかな名前の図

この沢は大きくわけて3つの部分があります。本沢と右沢、左沢です。名前の由来は地図上の見たまんま。

これをさらに細かく見てみると

沢筋の名前の図

このようになっています。実際に足を運んで調査をするともっと細かく沢筋がありますが、地図から読める沢筋に名前をつけました。

右から順に一ノ沢、ニノ沢、三ノ沢、四ノ沢、五ノ沢です。右沢には一ノ沢、ニノ沢、三ノ沢が含まれ、左沢は四ノ沢、五ノ沢が含まれます。零ノ沢は後から本流に流れる沢にも名前をつけようと思ったので、ゼロという名前にしました。言葉で書くとチンプンカンプンですが地図を見れば一発でわかります。

わかりやすく地図上に黒丸の0〜5の数字として沢名を書き記しています。

これで「今日は三ノ沢で作業するよ」と言えば、仲間内で情報共有が簡単にできるようになります。そして記録も残しやすくなります。

次に地図から読み解ける情報について書きます。

流域思考で考えよう

山に雨が降り注ぎ、その水は谷に流れ、水が集まり沢を作ります。つまり山の尾根から谷に水は流れていきます。登山地図を見る時の基本は尾根と谷を見極めること。それがわかると、どこから水がやってくるのかがわかります。

僕たちが手を入れている沢の水が山のどの部分から流れているかというと下記の図の水色の部分からです。

流域思考図

つまりホタルの会で手入れをする場所は、水色の部分だということです。この場所に降った雨が沢に流れ込んでいます。

さらに沢が集まって川ができていきます。多摩川水系、相模川水系、鶴見川水系というのは川全体の流域思考になっています。ちなみにこの沢の水は浅川に、そして多摩川へと流れていくので多摩川水系です。

川の一部だけを考えるのではなく、山に水が落ちるところから始まり、上流から下流まで水の流れ全体から考えることが流域思考です。流域思考は水害対策に重要な考え方として使われています。

枯れ沢を復活させホタルを飛ばすためには、沢だけを見るのではなく、山も含めた流域全体を見る必要があるのです。

広葉樹はどこにある?

森を健康にしていくためには落葉広葉樹の役割が重要です。毎年秋に大量の落ち葉を山に落とします。その落ち葉は、昆虫の住処になったり、ミミズの餌になったり、微生物が分解したり、朽ちて植物の肥料になったりします。落ち葉は命の循環をするために必要な森の宝なんですね。

(株)エコリスが植生図なるものを作っています。山がどのような植生になっているのかを調べるのに役立っています。その山の特徴がわかるからです。

この地図に植生情報を落とし込むとこんな感じになります。

(株)エコリスの情報から作った植生図
(株)エコリスの情報から作った植生図

濃い緑の部分が「コナラ・クリ群集」になっています。残りの部分は「スギ・ヒノキ植林」です。

この山のほとんどが戦後に植えられた植林です。戦後の木材の不足から需要が高騰し山に大量の杉や檜が植林され、その後木材の値段が暴落し、山は放置林だらけになってしまったという経緯があります。

ちなみに植林されていない場所は、人間の手が入りずらいので放置されている土地である場合がほとんどです。なのでそんな山に入る時には注意が必要です。

この植生図だけでなく、Googlemapを見て落葉広葉樹がどこにあるのか落とし込んだ地図がこちら。

Googlemapから作った植生図
Googlemapから作った植生図

オレンジ色の部分が落葉広葉樹です。エコリスの地図とちょっと違いますがだいたい同じです。違いを考えるとコナラ以外の広葉樹なのかもしれません。

植林された針葉樹が密集した光が入らない森は、1年中、生き物の気配がなく死んだ森のように感じます。とても居心地が悪いです。

落葉広葉樹の森は、春は新緑が美しく、夏は葉が繁り日陰で涼しく、秋は紅葉で美しく、冬は葉が落ち太陽の陽が入り、生き物の気配も多く、とても気持ちが良いです。

この流域で造作をして感じていることは、針葉樹がとても多く、土中環境を改善するための材料となる落ち葉や落ち枝が少ないということです。そして生き物の気配が薄いことです。

針葉樹と広葉樹の情報は、枯沢を復活させる計画にとって重要な項目のひとつになります。

最後に

地図を持って山を歩くことで見えてくることがありました。そして、地図に情報を書き込むことで何をしたら良いのかも見えてきます。自然と対話し自分の頭で考えることができるようになるからかもしれません。

科学的な視点で森を見ることで、新しい視点が手に入ったのではないかと思います。多様な視点を持って観察していきたいですね。

この地図の情報を使った定点写真はこちらに載せました。こちらもぜひお読みください。

この記事が、今まで参加してきた人たち、これから参加したい人たちのお役に立てれば幸いです。

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