漠然とした不安で深夜震えていた頃

何も知らない10代の頃は、26歳くらいで結婚するんだろうなと漠然と考えていた。大学生になっても考えは変わらず、かと言って彼氏はできなかった。

 

小中高、大学と好きな人はいたのに、彼氏はいなかった。彼女にしてもらえなかった。

それから社会人になって、仕事が忙しくなってそれなりに楽しくなって、合コンに呼ばれ、それなりにモテるようになった。

これは周りが先輩(年上)が多かったためで、年下、新卒というだけでモテていた。

 

デートを覚え、(思えばデートらしいデートは社会人になってから初めて経験したな)ちやほやしてもらえることを知り、それでも学生の時のように誰かにときめいたり、この人の彼女になりたいな、という人とは出会えなかった。

 

それから5年ほど、合コン、街コン、アプリ、紹介をずっと継続してきた。

3年くらい経った頃から、「私はいわゆるカワイイオンナノコとは違う人間だ」と自分のちょっとした違いに気が付いた。

それは格好だったり、好きな映画だったり、アニメだったり、仕事だったり、平日の過ごし方だったり、表情の豊かさだったり、ヨイショの下手さだったり、色々だ。色々が積み重なって、男性から「なんか違う」と思われてしまう。

 

1-2回のデートは喜んでしてくれても、3回目はない。

これは、5年間ずっとそうだった。

私が乗り気にならないこともあるが、4年目くらいからはそんなことも言っていられなくなり、誘われたらデートに行くようにしていた。

それでも、最後は「なんか違う」。なんか違うのだ。

 

なんか違うのは男性側に限ったことではなく、私自身もピンと来ていなかったのだが、その当時の私はカワイイオンナノコではない自分が誰かに選ばれて、あわよくば恋をして、ハッピーな結婚生活が送れるとは到底思えなかった。

私って、なんか違う側の人間だったんだな。

落ち込んで、途方もなく悲しくなって、それこそ枕を濡らしながら寝た。

(あの、深夜になると不安になる現象、なんだろうね)

 

街コンもだめ、紹介もだめ(頼みにくいし)、合コンもみんな結婚して少なくなって、アプリもぱっとしなかった。

それでも活動し続けたのはやっぱり、何かしていないと不安であったことと、彼氏がいない可哀そうな人、になりたくなかったから。プライドが高いのも、「なんか違う」要因の一つだと思う。


5年が経って、しばらくして、ふとアプリをやってみようかな、という気持ちになった。omiai、Pairs、タップルなどに登録し懲りて退会したくせに、もう一度登録することにした。

ゼクシィ恋結びってやつだ。

なぜこのアプリに登録しようと思い立ったのか、きっかけは覚えていないけど、ゼクシィのアプリに登録する男性は少ないだろうなと思ったことは覚えている。ゼクシィ=結婚のときに読むもの=結婚を意識した人がいるのでは、と考えたんだろう。


ちなみにこの頃楽天オーネットにも登録しようとしていた。その後売り込みの電話が鬼ほどかかってきて結局入会せずにやめたけど。

 


ゼクシィ恋結びも、別に他のアプリと一緒だ。

ゼクシィだからって、何がどう変わるもんでもない。

登録して3日くらい経ってから、オススメされた男性の中にちょっといいなと思う人が出てきた。

笑った顔(の写真)がかわいかった。

 

とりあえずいいねを押すと、相手からもお返しのいいねが返ってきた。

そこからメッセージを数回やり取りして、思ったよりもご近所さんであることが判明し、1週間後くらいに飲みに行くことに。

 

初めて会った彼は、写真通りの人だった。

いや、それよりもかっこよかった。

そのとき私は、この人と結婚するやもしれん とアホみたいなことを考えていた。

顔がかっこよかったからとか色々要因はあったんだと思う。

 

飲み会はすごく盛り上がった。

近くのお店を予約してくれていて、カウンターで飲んだ。

飲んだといっても、お酒2杯と、少しのおつまみ程度。2人で会計2,000円台だったと思う。話しに夢中になって、箸が全然進まなかった。

 

自分の話から映画の話、本の話、いろんな話をした。

どの話をしても、共通点があった。これは初めての感覚だった。

おそらく、この人も「なんか違う」と言われてきた側の人だったんだろう。


だから、何の話をするのも怖くなかった。

共感してくれる人がどれだけいるかわからないけど、私は他人に自分のいいと思ったものを伝えることが苦手だ。

好きな映画とかそういうものを、人に話したり、ましてや婚活で知り合うような人に初っ端から話せるような度胸がない人間だ。

これは引っ込み思案とか、そういうことではなくて、話したときに理解してくれなかったり、そもそも知らない作品だったり、それによって「なんか違う」と判断されることを恐れて言わなかっただけ。

カワイイオンナノコとは違うことはわかっていても、どうにかそちらに寄れないかと、コスイことを考えていたためである。

(そんなこと関係なくおもしろいように話せる人が本当にウケがいい人だと思うけど、私には到底できそうにない)

 

でも、彼には自然とそれが話せた。

共通点が多いから、話しても引かれないだろうと思えた。

そして、食事しながら過ぎていく時間を覗き見て、今日が終わらなかったらいいな、と名残惜しくなった。

話すのがうまかったし、気遣いもできて、行儀もいい人だったから、他からも声がかかっているだろうなと(そもそもアプリで知り合っているし)。

そしたら、この週末もだれか別の人と3回目のデート、そのまま交際、なんてことになってしまったりするんだろうな、と悲しくなった。

 


5年間うんともすんとも言わなかった私が、自然とそういう感情が芽生えていることに、とても驚いた。

恋をしかけていた。

気に入っている人と過ごす時間はあっという間だと、久しぶりに思い出した。本当にそうだった。

高校のとき、気になるクラスメイトと過ごした放課後も、飲み会の帰りたまたま一緒の方向になった2回生のあの日も、アラサーになった私と全く同じで、変わっていなかった。


恋、できんじゃん!

突如現れた変化に感動したと同時に、怖くなった。

この人が誰か別の人と結ばれたらどうしたらいいんだろうとリスクの方を考えてしまった。


結局、その食事の後、連絡先を教えてくださいと彼が言ってくれて、そこから関係が始まるんだけども、私はあの一瞬を今でもハッキリ覚えている。


この人を好きになる気がする、と浮ついた感覚を、できれば永く忘れたくないと思う。


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