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閉鎖病棟の患者の様子

床に座ったり、寝転がったりするのは当たり前でした。誰も目に留めません。
1日に5回以上着替えをする人、ほとんどご飯に手をつけない人、私のように他人の余り物でも食べる人、点滴が痛くて声を出して泣いてる人、ずっとテレビにかじりついている人。
「すいませーん!」「看護師さーん!」と呼び続ける人は多かったです。すぐに対応してくれないからです。
そうでなくてもナースステーションの前を四六時中誰かがうろうろしていました。
やることがないし、人間観察的な意味もあるし、「こうしてくれたらいいのに。でも無駄か」と思いながら私も様子を窺っていました。

いびきがうるさい人には本当に困りました。
「熊みたいないびきが聞こえるけどこれは本当に聞こえてますか」とスタッフに聞いたら、「それは本当。隣の人すごいんだよね」と笑っていました。
私にとってはうるさくて目が覚めてしまい、笑い事ではなかったのですが。その頃には夜間でも鍵を閉められずに自由に出入りできました。

しかし最初ホールに出る許可が下りたときはまた閉められるんじゃないか、水がなくなるんじゃないか、との思いから、部屋に(毒親に差し入れられたと後から聞きました)見覚えのないスリッパでストッパーがわりにしていました。水は常に持ち運んでいました。
他の患者もほとんどが水を持ち運んでいました。

一番制限のきつい病棟から次の病棟に移ったとき、「こんにちはー」と突然声をかけられ驚ましたが、それが熊のいびきの人だと思います。
病棟移動初日にホールにいた知的障害っぽい男の子はいつのまにかいなくなっていました。

そちらの病棟では床に寝転がったり床に座る人はいませんでした。
ただ、何かとうるさく私は携帯が許可されている時間は病室にこもっていましたが。

朝起きたらまずは携帯を取りに行きます。そして朝ご飯まで待つのです。
ご飯が終わったら所定の場所から歯磨きコップと歯ブラシ、歯磨き粉を取りに行き、歯を磨きます。
そのとき熱いタオルが洗面用に用意されていました。”何かのときのために”毎朝そのタオルを病室に運び入れていました。

次に着替えを持ってきたりスタッフが体温と血圧を測りに来ます。
私は最後まで老人用のようなパンツと肌着と靴下を履くことを拒否し続けました。退院する頃になって「もったいないからレンタルやめる?」と聞かれましたが、そんなことが可能だとは知りませんでした。

入浴の時間には全裸の女の人がまだ身体を拭いていました。プライバシーはほとんどありません。見えても何とも思わなくなるのが閉鎖病棟です。
要介護の男性患者と入れ互いになるからとカーテンのそばで待っていたこともあります。
ドライヤーを使う時間も決められていて、髪が長い私には充分ではありませんでした。
櫛はビジネスホテルやラブホの使い捨てのようなものでした。
タオル一枚にも使用料がかかると貼り紙がしてありました。

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