眠る、落ちる、往く。
眠れない夜がある。
特に理由があるわけでは無いが、
どうにも体勢が定まらない。
詮無きことで思考が止まらない。
思考と言っても、同じところをくるくる回り続けているような、振り子の如く行ったり来たりを繰り返すような、徒に実のない思考である。
こんな時には、いつもと反対を向いて寝ることにしている。
要は北に枕を向けてみる。
言わずと知れた、釈迦入滅の方角である。
仏教文化が根強く残る日本においては、
北の枕は死を忌む不吉の方角とされ、一種の禁忌となっている。
仏となった遺体は煩