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バイオリンの弓はお馬のしっぽ
レッスン中、生徒さんから
「弓の毛って馬のしっぽなんですよね?」
と聞かれたので
「そのとおりです。弓の毛はお馬さんのしっぽで、バイオリンの弦は羊の腸ですよ〜」
と軽い調子で答えたところ
「え”っ!?」
「あっ・・・」
みたいな気まずい感じに。
グロテスクだったかな、ごめんなちゃい。
バイオリンの弦は、テニスのラケットにも使われているガット弦に、スチールがコイル状に巻かれている。最近はガットではなく金属弦を使う方が多いのだけれど、第2次世界大戦以前はガットが主流だったので、長い歴史に敬意を表して、少数派でも、わたしは頑なに使い続けていきたい。
ガット弦は調弦が狂いやすい傾向があるので(だって生き物だものね)敬遠されがちなのだが、こまめに調弦するなり、自分で音程を微調整させればよいわけで、音のあたたかみと太さというメリットを考えれば、自分の技術と判断できる耳を鍛えたほうが良いように思う。
木枠のラケットにガットを張っていた一昔前のテニスプレイヤーは、ボールの芯を捉えるのが非常に上手かったと言われている。確実に芯を捉えなければ、ボールがネットの向こう側に返っていかないからだ。
同じように、弦も音程も確実に芯を捉えない限り、音は客席のうしろまでは通らない。そして確実に芯さえ狙えば、驚くほど軽やかに力みなく届かせることができる。(楽器のポテンシャルによっても変わる)
ガット弦が主流ではなくなって70数年。ここ10数年における全体の印象として、ひとりひとりの音程感が崩壊の一途を辿っているように感じる要員は、これなのではないかとすら思う。だからわたしはここで、声高に叫びたい。
「ガット弦、使お♡」
話が脱線したけれど、バイオリンの弓の手元のキラキラした装飾はアワビを磨いたもの。滑り止めに巻かれているのは動物の皮(牛や蛇など)銀糸のような部分は鯨の髭が使われていて、チップは象牙。ありとあらゆる生き物の力を借りて、楽器は成り立っているのだ。
世界一小さな木造建築とも称されるバイオリンの楽器内部には、建築でいうところの心柱のように、表板と裏板を繋ぐ魂柱(こんちゅう)という小さな柱が立っている。この魂の柱があるおかげで楽器全体が響き、心地よい波動を届けられる。
大切な命の源に触れるつもりで、楽器と関わり、音を奏でていきたい。
愛をもって愛を伝える。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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