観客巻き込み型演劇

観客とのコミュニケーションからスタートする作品を僕はよく作っている。
これは僕が以前所属していた劇団が使っていた手法である。
また、僕の好きな一人芝居のほとんどがこの手法を使っている。

お客さんとの関係をフラットにしていく。
特に演劇文化が根付いていないところではこの手法が有効だと考えていた。

要は、前説である。前座である。

かつて私は何度も「お前に才能はない」と言われてきた。今考えれば相当なパワハラ・モラハラである。けれど、その人を訴える気はない。訴えたところでその人が変わるわけではないし、仕組みが大きく変わるわけではない。仕組みを変えるためには、自分やこの先の人たちがそうならないようにすればいい。自分がその仕組みの上に立たなければいい。

話が横道に逸れてしまった。

観客巻き込み型。それは既にいろんな形で世に出回っている。イマーシブシアター、謎解きイベントなど。
僕が以前西会津町で関わったシアター&レストラン「注文の多い料理店」やまちめぐり演劇「銀河鉄道の夜」もその一種である。

先日、せんがわ劇場演劇コンクールで上演した「『なめとこ山の熊のことならおもしろい。』」は、僕の中では巻き込み型の一つであると考えている。常にコミュニケーションを取りながら、舞台を進行させていく。観客の中にはきっと嫌だという人もいたに違いない。それは本当に申し訳ないことをしたと思っている。

時には観客に舞台まで来てもらうということもする。
ほしぷろvol.7「虔十公園林」では舞台の上を観客に行進してもらう、というシーンを作った。大人たちがノリノリで舞台上を歩き回った。子供たちが興奮のあまり舞台美術を破壊するということも起こった。想定外のことだったが、それもまた「虔十」という人間の切なさを演出する効果があったと思える。子供の想定外の動きもまた演出の一つになった。これはむしろ私が巻き込まれてしまったのである。

観客が俳優を巻き込むパターンも発生した。今後は、どのように観客を巻き込んでいくのか。私自身課題は山積みである。

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