第3話 運命の出会いはTwitter? ししもん流・アジア転職必勝法!
捨てる神あれば拾う神あり
※以下、前回の記事の続きです。
はじめてのシンガポール転職への第一歩としての問い合わせ。
「あなたに紹介する仕事はありません、ムリムリ」
ハイスペの対極・ロースキル28歳フリーターはばっさり全否定される。
超ショック!!!
―でもさ
寝て起きて、落ち着いた頭でよく考えてみた。
―当たり前だよね
日本人が日本で就職できてないんだから、外国人として海外で働こうなんてもっと難しいに決まってる。問い合わせの人の反応は至って普通だ。私が無謀すぎるだけで。
―わかってる、でもあきらめたくない
もうすぐ30歳になる。うちの田舎では「とりあえず下積み3年」とかまだ言ってる。ぶっちゃけ流行と医療と教育が東京より10年遅れてる、愛しくてにくらしい我が故郷!
28歳の私が今すぐどこかに就職しても、下積みとかいうわけのわからない忍耐の時間だけで30歳を越えてしまう。そこから結婚妊娠出産育児なんて人生のライフステージを駆け上がるのか。いや遅くないか?
そしてなによりワクワクしない。面白そう! とか、やってみたい、とか感じられない。なにがなんでもシンガポールで働くって決めた時のワクワクがまだおさまらない。
ーよし、再開!
どこの誰かも知らない人に「絶対ムリ」って言われて逆に私のなにかに火がついた。ロースキルでもできるシンガポール転職を探し出してやる!
コレだ! Twitterでの出会いにすかさずコミット
数日後に見つけたのがとあるTwitterのつぶやき。アカウント名は「ししもん」
可愛い動物のイラストアイコンで、シンガポール現地採用がいかにゆるいかをだらだらつぶやいている。
『退勤1時間前。やることねー』
『午前中ヒマだったのでKINDLE読書がはかどった。最近は哲学が面白い』
『土日はスマホオフ! 会社から電話? 知らんわ』
ゆ、ゆるい…!
シンガポールでゆるふわOLを目指すと決めたけど、当時のししもんのゆるさは突き抜けていた。
(※注 ししもんは現在フリーランスとして活躍中です)
そんなししもんのある日のつぶやきに私はすばやく反応した。
『大卒の日本人ならシンガポール現地採用はマジちょろい。誰でもできるって。相談のるんでDMください〜』
コレだ!!!
シンガポール現地採用の仕事探してます! 前に問い合わせしたんですけど絶対ムリって言われました。でもあきらめたくないんです。
『オッケー。じゃあ履歴書と職務経歴書をまず送って。添削するから。めちゃくちゃ厳しいけどwww』
DMを送ったら返事はすぐに来た。うっ、書類をまずは見せてという前回と同じパターン。
それから3日かけて履歴書と職務経歴書を作り直した。今度こそ、なにかきっかけをつかみたい。
渾身の書類をししもんに提出した。
そして忘れもしない、ししもんからの返信はたった一言、シンプル。
『残念! これではどこにも受かりません\(^o^)/』
ええぇーーー!
やっぱダメじゃん!!
『あのね、全然分かってない。ハイスペ人材の王道とは違って、おれたちみたいな日本でのおちこぼれにはおちこぼれなりの攻め方ってもんがあるの』
言い方はぶっきらぼうだけど、それからししもんは私に猛特訓をつけてくれた。
ししもん流 アジア面接必勝法
日本人が海外で最もアピールするべきこと、それは日本人であることそのもの。
具体的には、日本のおもてなしの精神、いわゆるホスピタリティってやつ。
さらに、日本人は要求水準も高いので(つまり他人に厳しい)、日本人が満足するサービスを提供できる、ということも大きなアピールポイント。
これは接客業はもちろん、取引先とのやり取りという風に考えたら全職種に応用できるよ
ーししもん、すごい。
ししもんは自称・面接の鬼で、書類審査さえ通れば面接は必ず突破できる自信があるんだとか。
『日本人は謙虚になりすぎてアピールが弱い。自分が持ってる具体的な実績や数字を論理的に伝えて、即戦力になるとみなしてもらえば、人事担当は採用しない理由がない』
ーおおお、なるほど。そうか、そういうものなのか。面接というのは、もっと自信をもってアピールしないといけない場面。
ししもんはIT専門。プログラミングやゲーム製作みたいな経験が学生時代にすでにあったので、そこからアピールすることで面接無双になっていったらしい。
その経験に日本式ホスピタリティという能力を掛け算して、ししもんの当時の仕事は外資系のIT機器メーカーのテクニカルサポート。
商品購入後のトラブルに関して、日本のガジェットマニアが電話でしつこく問いただしてくるらしい。
技術的な面では解決フローを具体的に説明し、感情的な面ではマニュアルに沿いつつ、日本式に粘り強く聞く。
まさに、ITの専門知識 x 世界に誇るおもてなし。
スキルは掛け算! 掛け算で希少価値を出すとはまさにこのこと!
そのやり方を私の接客業に応用するとこうなる。
「日本式のきめ細かなサービスを御社で完全に再現し、全ての顧客に提供することができます」
なんか、やたら立派な人みたいに見えるよ!
……えー、ちょっと待って。
こんなのでホントに大丈夫なの?
はい。
実際にコレを読んでる方はそう思われるかもしれませんが、ホントにこの一文をベースに自己PR文を作成、職務経歴書の冒頭にどどんと載せました。
日本のサービスや商品の高品質は世界に認められていて、それを再現して提供できることにはとても価値をつけてもらえた。
さらにシンガポールは当時4万人の日本人が住んでて、シンガポールの値段が高い割に雑なサービスにみんなうんざり。そこで「日本人クレーム対応できます」って言うとウェルカムモード。
だいたいクレームいれる人って、話聞いて尊重してほしいってことなので、傾聴の心でひたすら聞いてうなずいて「そうですよね、わかります」を繰り返すと満足して帰ってくれるんだけど。それがなかなか難しいことらしい。
日本人の、日本人による、日本人のための接客サービス。
自分にとって当たり前のことが、外の世界にもっていって同じことをするだけでこんなにも評価してもらえるなんて。
それからししもんの鬼の添削指導は10往復は続き、わずか1ヶ月間で修正変更を5版ほど重ね、私の履歴書と職務経歴書は洗練された仕上がりになった。
このししもんとの出会いとドンズバなアドバイスで、私のシンガポール転職は一気に現実味を帯びてきた。
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