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堂々とそびえ立つ1本の謎の草がある。そいつはいつもベランダの私の枕元にいる。

そいつを植えた覚えも、種をまいた記憶もない。水をやったり肥やしを与えた記憶もない。ただ気づけばそいつが私を見下ろしていた。

全く世話をしていないのに、どこからともなく種がやってきて、勝手に大きく育った。

そして、堂々ととてつもなく凛々しく、ただ空だけを見つめて、定規で描いたかのようにまっすぐと太陽の方へと上だけを見て育っていった。

「謎の草、君はいいよね。ただ上だけを見つめて目指す方向があって。そこに向かえば良いからいいよね。」と少し皮肉を込めて言えば、それを跳ね返すかのごとく、さらに堂々と根を張って大きく育った。その姿がとてつもなくまぶしくて、輝かしく立派で、私が放った言葉が全て自分に跳ね返ってきた。

うまい言葉が見つからないが、ただ単純に、「強い」とか「立派だ」とか「輝かしい、まぶしい」と言う言葉が似合う。そしてそのまっすぐで純粋な姿がただただ見ているだけのこちらを魅了してしまうのだ。

「やぁ、謎の草。どうして君はそんなにまっすぐなんだい?」と私。
「やぁ、人間。どうして君はそんなに横たわってばかりなんだい?」と謎の草。

私たちは、常にクロスした関係で同棲している。縦にまっすぐとそびえ立つ謎の草。そして真横に永遠に横たわる私。

きっとこの謎の草は、私に何かを伝えようとして真横に舞い降りてきたのであろう。
…「ところで君の名前は何?」

私はこの名もなき謎の草になりたい。


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