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本を読む習慣 — オバマ、ゲイツ、バフェット、出口 | きのう、なに読んだ?

こちらのQuartz の記事を読んだ。タイトルは「週5時間を学びに充ててない人は無責任だ」くらいの意味だ。

冒頭部分をざっくり訳す。

オバマ元大統領は、世界で最も多忙な人のひとりだったが、在任中、毎日1時間を読書に充てていた。なぜか?
史上最強の投資家であるウォーレン・バフェットは、若い頃から現在まで、時間の80%を読むことと考えることに充てていた。なぜか?
世界一の大富豪、ビル・ゲイツは、そのキャリアを通して、毎週1冊の本を読み、毎年2週間の読書休暇をとるという習慣を続けている。なぜか?
世界で最も賢く多忙な人たちは、毎日1時間(週5時間)意図を持って学ぶ時間を作れるのに、なぜ他の人たちは、時間がないと言い訳をするのか。

彼らにしか見えていないものがある。それは、何か?

答えは簡単だ。私たちの時間を投資して、リターンが最も高いのが、学ぶことなのだ。ベンジャミン・フランクリンも言っていた。「知識への投資が、最も利回りが高い」と。

ちなみに、オバマ元大統領はこちらのように、時々ソーシャルメディアにお勧め本を投稿する。ビル・ゲイツも、自分のウェブサイトでよく本を紹介している。ウォーレン・バフェットは、社主をつとめるバークシャー・ハザウェイの株主総会で、その年のお勧め本を紹介し、会場近くの書店で購入できるようにしている。

Quartzの記事は、ここから、なぜ学び続けることが大切かを述べている。しかし、その主張は「これからの知識社会では、新しい知識をどんどん身につけないと仕事がなくなる」というものだ。私の好みからすると、ちょっと功利的に過ぎ、かつ煽りすぎに感じるので、ここでは紹介しない。

一方、最近、日経ビジネスオンラインで見た出口治明さんの主張は、もうちょっと私の感覚に近かった。出口さんはたいへんな読書家で、読書に関する著書も何冊も出版されている。

この記事から、何箇所か引用する。

「これは関西学院大学の村田治学長がたくさん論文を書いていますが、日本の労働生産性は1970年に統計を取り始めてからずっと主要7カ国(G7)の中で最下位です。半世紀もの間、一度も6番にも、5番にもなったこともない。ずっとビリ。

村田学長の論文に挙げられているデータによると、労働生産性とその社会の大学院卒学生の比率はきれいに正比例します。考えたら当たり前です。好きなことを深く勉強した人がたくさんいたほうが、アイデアが出るに決まっています。」
「企業が変わることです。まずは大学院生をもっと採用することです。日本の大企業はいまだに、なまじ勉強した大学院生は使いにくいとか、アホなことを言っている。これでは話になりません。」
「友人は、日本人は優秀だと言っていました。
しかし、その結果が、2000時間労働で1%の成長です。それでいいのでしょうか。日本はマネジメントがダメだから、現場の素晴らしい仕事ぶりをマネタイズできない。生産性の向上に結び付けることができないのです。

 何でマネジメントがダメなのか。それは「低学歴」だからです。」

「「低学歴」とは、いい学校を出ていないことではなく、「学び続けられない状況」を意味します。そして、この状況から脱するには「人、本、旅」しかない。
「ーーその当たり前をなぜ、日本の経営者はできないのでしょう。
出口氏:勉強しないからです。不勉強で無知だからですよ。日本の経営層の知的レベルは、驚くべき低さです。それは彼らが悪いのではなく、勉強する時間が取れないからです。」
「メシ、風呂、寝る」を続けてきた想像力のないマネジメントが、パワハラ的な対応を若い社員にとっている」
「とにかく、副業でもいいし、学校に入り直すのでもいいし、あるいは1週間に1冊本を読むことでもいい。とにかくまず、何かを決めて一歩、踏み出すことです。
 講演を聴きに行くのでも、異業種交流会に行くのでもいい。はやっている飲み屋やレストランに週に1回、行くのでもいいんです。「人、本、旅」の「旅」というのは面白い場所に行くことなので。」

この記事は、日本経済が過去30年成長しなかった理由とその処方箋というテーマで、出口さんもテーマに沿って「マネジメントが学び続けなくてはいけない」と主張している。

冒頭に紹介したQuartzの記事では、本を読む理由は、主に知識を身につけ良い仕事に就くため、というものだった。日経ビジネスの出口さんの記事では、日本のマネジメントがイノベーションを引っ張る力をつけるため、ということになっている。

マネジメントに必要な勉強は、知識だけではない。人間理解も同じかそれ以上に大切だ。他者理解、そして自己理解も。出口さんの言葉にあった「想像力のないマネジメントが、パワハラ的な対応を若い社員にとっている」は、そのひとつの現れだ。

「心技体」という言葉がある。技(知識)、体(健康)とともに「心」も磨き続けたいし、技や体と同様に「心」だって鍛えることができる

本を読むことが「心を鍛える」ことにつながったことを、オバマ元大統領がNew York Times のインタビューで詳しく語っている。読むことと書くことという切り口で見たオバマさんのちょっとした自伝のようで、しみじみとした読後感。インタビューは2016年、オバマさんの退任直前に行われた。インタビュアーは、辛口レビューで有名なミチコ・カクタニ。

"I loved reading when I was a kid, partly because I was traveling so much, and there were times where I’d be displaced, I’d be the outsider. When I first moved to Indonesia, I’m this big, dark-skinned kid that kind of stood out. And then when I moved back from Indonesia to Hawaii, I had the manners and habits probably of an Indonesian kid. And so the idea of having these worlds that were portable, that were yours, that you could enter into, was appealing to me. "

子どもの頃は本が大好きでした。移動が多くて、根無し草、アウトサイダーだったんです。アメリカからインドネシアに引っ越した時は、私は大柄な色の黒い子で、目立ってしまっていました。その後、インドネシアからハワイに移りましたが、おそらく態度物腰はインドネシア人の子どもそのものだったはずです。ですので、自分が持ち歩ける世界、自分だけの世界、そこに入っていけること。それが魅力的でした。

"For me, particularly at that time, writing was the way I sorted through a lot of crosscurrents in my life — race, class, family. And I genuinely believe that it was part of the way in which I was able to integrate all these pieces of myself into something relatively whole.

People now remark on this notion of me being very cool, or composed. And what is true is that I generally have a pretty good sense of place and who I am, and what’s important to me. And I trace a lot of that back to that process of writing."

あの時期(大学生の頃)、私は書くことを通して、私の人生の中で交錯するさまざまな流れーー人種、社会的地位、家族ーーを解きほぐしていきました。自分自身のさまざまな側面を統合して、まあまあ全体感を持つことができるようになったのは、書くことをしてきたのも1つの理由だと、心から思います。
皆さんが私を評して、落ち着いているとか、取り乱さないと言われます。実際、自分の居場所はどこか、自分は何者か、自分にとって何が大切か、私はけっこう分かっているんですね。それはやはり、書いてきたということにルーツがある。

"At a time when events move so quickly and so much information is transmitted, the ability to slow down and get perspective, along with the ability to get in somebody else’s shoes — those two things have been invaluable to me. Whether they’ve made me a better president, I can’t say. But what I can say is that they have allowed me to sort of maintain my balance during the course of eight years, because this is a place that comes at you hard and fast and doesn’t let up."

(大統領在任中も文学作品や古典を読んできたことを振り返って)出来事の進展が速く情報も多いこの時代、ペースを落として俯瞰する力、そして他者の立場に立てるようになる力。この2つは私にとってかけがえのないことでした。これが出来たからといって、自分がより良い大統領になれたのか、それは分かりません。でも、次々と難問が降ってきて逃げられない場所に8年間いて、ずっと自分の中のバランスを保てたのは、そのお陰だと、はっきり言えます。

今日は、以上です。ごきげんよう。

(Picture by Minke Wagenaar)

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