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教壇に立ち続ける 88 英語科との教科横断授業について【note限定記事】

今週の前半は真面目に起きていたのに、昨日は死んだように眠っていたので、フルタイム勤務への道のりは遠いと思っております。どうも星野です。10月の定期更新日は水・土。今日は水曜の分を更新です。お題は「英語科との教科横断授業」について。10月末からいよいよ本格始動する企画について紹介します。この記事を読んで、参考になったなーとか、いいなと思って頂けたらサポートをお願いします。minneとFantiaはこちら。最近小説を書けていない……体力の衰え……それでも作品づくりは辞めたくないので、ご支援いただけますと幸いです。

生徒の「言葉をとらえる」力を伸ばしたい

そもそも、事の発端は英語科の先生(この方は進路指導主任も兼任されています)が「生徒たちって『言葉が貧弱』なんだよね」とこぼしていたことでした。以前何かの記事でも書いたと思うのですが、定時制の生徒も、全日制の生徒も、とにかく学習言語が身についていないのが現状の課題なのです。学習言語――いうなればそれは、教科の知識を「じぶんごと」にするために、生徒一人ひとりの頭の中で学習した内容をかみ砕くために、必要なものです。しかしそれが育っていないがために、生徒はテスト終了と同時に模範解答・解答用紙・問題用紙と知識を一緒くたにして、ゴミ箱へポイしてしまうのです。それを英語科の先生は大変憂慮していらっしゃって、どうにかして品詞の知識は身につけさせたい……と同じ学年を担当している私に話をしてくださいました。その問題について話し合っている途中で、私が以前私学の研究会に出席した際に得た話をして、「村上春樹の作品を英語科と国語科で扱った授業実践があります」と申し上げたところ、「面白そう!」となり……現在の教科横断授業の構想の種となりました。
言葉の貧弱さを補うために、英語科では詩歌を使って品詞の学習や再話の活動をされているそうです。卒業後は就職する生徒が主なクラスと、進学を希望する生徒の多いクラスの間で、学力に大きな開きがあるものの、おおむね楽しく授業を受けているようです。これについては後日授業を見学させて頂けるということでしたので、また詳細は書いていく予定です。続報をお待ちください。

詩歌で教科横断

今回英語科で題材に選んだのは Simon & Garfunkel の“I am a Rock”だそうです。私も詩歌の内容を少しだけ読んでみたのですが、英語の学習から離れて久しい私でもなんとか読めるくらいの難度でした。これを使って訳しながら詩歌の技法等を学んでいく……という方針を立てているとのことでしたが、まだ授業が本格的に始まっていないので、ここからどう発展するかは我々の準備と指導の質次第。
とりあえず国語科で、詩歌の授業として“I am a Rock”を使ってできそうなことを考えてみたのがこちら。

授業の段階は3ステップあります。①品詞分類の日英比較、②詩歌の技法・内容についての日英比較、③詩歌の世界観を意識して再話する活動、のみっつです。
文法から始めないことには、英語科での共通の課題である「語彙の獲得」には繋がらないと考えたため、まずは中学校で学習する日本語文法をもう一度おさらいしながら、英語にあって日本語に無いもの、その逆などを考えたうえで練習問題に挑みます。練習問題は、品詞の分類を考えるというもの。連体詞と形容動詞の識別、形容詞などの用言あたりでつまずくことが予想されます。英語との比較で、日本語に無い品詞を選ばせるのとかも面白そうだなと思っています。また、文の構造についても説明するつもりでして、SVOCを学習しながら日本語のSOV文に目を向ける(あるいは主語の無い文などはどう認識するか、「は」と「が」の違いとは何か、などにも触れる)授業にしていきます。
日本語の詩歌は、高見順の「われは草なり」を対置することにしました。タイトルの比較から始めて、日本語の定型詩のルールや表現技法の共通性などにも触れていきます。その過程で、音節あるいは拍の概念が重要になると思われるので、その音声学的な話もします。大学レベルのことをやっているようにも見えるかもしれませんが、定時の生徒は半分が就職の道を選びます。将来学びなおしをしたくなったときに「戻ってこられる」ようにしてあげるのも、私の授業に課せられた役割だと思うからこそ、少しばかり難しい内容にも踏み込んでいくことになります。そこは相手の発達段階や理解・認知レベルにあわせてかみ砕いたり説明を省いたりすることはありますが、決して甘い授業委はしないつもりです。どこまでも知的に負荷をかけていく。そういう心意気でやっています。
最後の活動は、詩歌の世界を自分なりに再話することで、「じぶんごと」に落とし込む活動です。主にアニマシオンの技法を使って、個人の想像の世界を豊かにしながら正確な読みができるように生徒のスキルアップを目指すものにしていきます。幼児や小学生に効果を発揮するアニマシオンの中にも、中学生~高校生向けの活動は結構ありまして、どうしてこの詩歌が気に入ったのかを論理的に説明する作戦などもあります。それをうまく改変して、生徒がストーリーテリングを使って自分の中にある言葉と向き合う時間を1コマ取ってあげたいと思っています。

それが終わると最後の単元、鷲田清一の「自由のはき違え」になるので、3年生にはこの詩歌の活動でめいっぱい楽しく頭の体操をしてもらいたいです。実践の報告も今後掲載しますので、引き続きの購読・コメント・応援をよろしくお願いいたします。それでは、また。

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