新人研修期間に気を付けること
この記事の概要
私が人事として2社で働いた経験をふまえ、この春から新入社員として新たに社会人になる人が気を付けた方がいいと思うことをまとめた記事です。
ある程度以上の大企業を想定しています。小さな企業では事情が異なるかもしれません。
入社直前期
早めに引っ越すなどして、会社以外の新生活に慣れておく。
会社の場所を確認しておく。できれば下見に行く。
下見は平日に行くと雰囲気が掴みやすい。
入社前健康診断を忘れずに受ける。
就寝時間、起床時間を戻しておく。
食事のタイミングを戻しておく。
実名SNSの過激な過去投稿を消しておく。
持ち物や服装の準備を念入りにする。
鞄は大きめがよい。
シャチハタ以外のハンコを準備しておく。シャチハタは滲むので100パーセントバレる。
書類をもらいがちなので、クリアファイルを準備するとよい。
定期券はまだ買わなくてよい。会社によってはリモート研修だったり、本社とは別の場所にある研修所で研修がある場合がある。
当日の会社の緊急連絡先を控えておく。
入社初日
勤務開始前
一言で言うと、この日から御社が弊社になる。
会社としては、「良い人を選ぶ」という視点から、「どのように活躍させるか」という視点にかわる。
忘れ物をしない。
変な格好をしない。
遅刻をしない。
エレベーターや受付が混雑している可能性がある。オフィスには15分前くらいに行くとよい。
早めに着いたら周囲の人と仲良くなっておくとよい。
受付には社員以外の人が並んでいる可能性がある。当然、お客様優先であるので積極的に譲る。
エレベーターで乗り合わせた際も同様である。
先輩社員にはそこまで遠慮しなくてもよいが、礼儀正しくはしておく。
「今日は新宿で10時から入社式!」とかネットに書くと特定されるので気を付けた方がよい。
初日の勤務の流れ
初日は、人事の挨拶→偉い人の挨拶→書類の記載など事務手続き→福利厚生やオフィス利用ルールの説明→研修概要の説明→解散という流れになることが多い。
座席は指定されていなければ前方の中心に座ったほうがよい。
軽いグループワークをやらされたり、そうでなくても自然と仲良くなることが多い。怪しい人の近所には座らない方がよい。
壇上に上がる人の名前と顔くらいは覚えておくとよい。
あいさつ系の話の内容のほとんどは適当に聞き流しても大丈夫である。
稀にエイプリルフールで新卒にドッキリをしかけてくる会社があるので気を付ける。
偉い人の挨拶後、記念写真の撮影がある場合がある。社内報に載ったり、公式SNSで公開されることもある。
説明系の話についても、全部は覚えなくても大丈夫である。
ただし、エレベーターや社員証兼カードキーの使い方、社内マニュアルのURLやログインするためのIDパスワードなど、初日からすぐに使いそうなものについては、忘れると困ったことになる。
問い合わせ窓口もメモしておくとよい。
翌日以降の集合場所を知らされて終わりとなることが多い。初日とは違うことがあるのでこれもメモする。
途中、昼食タイムがある。初日は会社からご馳走される場合もあるので、あらかじめ準備していくと重複するリスクがある。
退勤後、新入社員の集まりがあれば積極的に顔を出すとよい。ただし、はしゃぎすぎないこと。
特に、企業秘密を人が大勢いる前でしゃべらないように気を付ける。
新入社員の小さな失敗を見つけてはしゃぎたい趣味の悪い先輩がいることを十分に理解しておくこと。先輩社員からすると冗談レベルの内容がほとんどであり悪意はないが、新入社員からすると本気で泣きそうになることもある。
社員証・社章等
社員証は身分証と入館カードキーの役目を果たすものであり、入社初日に発行されることが多い。
初日に社員証や社員プロフィールサイト用の写真を撮られる可能性がある。素人が適当に撮影することが多いので、そのつもりで挑む。
社員証は、社内では首からぶら下げる義務がある。変な写真を撮られると、半永久的にそれを携帯させられるということである。
特に女性は『なんかあの人、社員証の写真と全然違くない?』と社内で噂されがちである。
社員証を毎日長時間ぶら下げていると肩がこるので、慣れてきたらタイミングを見計らって外すのも手であるが、少なくとも初日は外さないほうが無難である。
折れ曲がりなどに気を付ける必要がある。内蔵された電子チップが壊れると会社に入れなくなる。
カードキーはオフィス入り口のゲートだけでなく、オフィス内の廊下と執務室の間の扉の開閉にも使う。
つまり、執務室内にカードキーを置いたまま廊下に出てしまうと入れなくなるので注意する。
社員証と別に、複数のカードキーをもらう場合がある。重ねていると干渉しあってタッチしても作動しないことがあるので、間に紙を挟むなどするとよい。
社員証を発行するのには1万円程度はかかる。紛失したら始末書を書かされたり、弁償させられる場合がある。
社員証ケースやストラップは紛失・破損しても問題ない。
社員証は社外に出たら忘れずに外す。社外でむやみに自分の所属先企業を名乗らないようにする。
社章は別につけなくてもよいが、こちらも紛失すると始末書を書かされる場合がある。
社員証はストラップの色で雇用形態が違う会社が多い。正社員が何色か把握しておくと、質問などをする際に便利である。
福利厚生等への申し込み
初日に福利厚生に関する説明をたくさんされ、数週間以内に提出するよう求められることが多い。
申請しなければ損をするものもある。こちらが得をすることは向こうからリマインドしてくれないが、こちらが損をすることは向こうからリマインドがくるのが社会であると心得る。
通勤ルートは最短ルートまたは最安ルートで申請しないとバレる。
親などの親族が無職であり、他の誰にも扶養されていない場合、自分の扶養に入れると得をすることがある。
別居していても扶養には入れられる。
企業年金は申し込んでおいた方が得になることが多い。
確定拠出年金は新卒のうちはたいした拠出額ではないので、気にしなくても問題ないレベルである。
どちらかというと、元本保証よりも株式等に全振りした方が得だと思う。
「るいとう」こと株式累積投資など、自社株の株主になれる制度は利用すると得なことが多い。なぜなら、会社が10パーセント程度報奨金を出してくれるからである。
しかし、新卒のうちは結構生活がキツキツなことも多いので、無理しなくてもよい。
勤務先が倒産した時に、仕事も資産も失うことにならないよう、買いすぎに注意すること。
るいとう以外の方法で自社株を買う時や、既に手元にある自社株を売る時は、インサイダー取引に該当しないか注意すること。社内で申請をしないと売れない仕組みになっていることが多い。
当然、入社前に買っていた株式であっても同様である。
労働組合に加入するかどうかは、先輩に聞くとよい。入ったほうが出世しやすい会社や、入ると目を付けられる会社など様々である。
傾向としては、とりあえず入っておいた方が無難なことが多い。
教えてくれそうな先輩がいない場合は、同期のネットワークを頼るとよい。同期の中には先輩と繋がっている人がたいていの場合存在する。
企業単位の労働組合がない場合は、業界単位の組合などにわざわざ入らなくても大丈夫である。
新人研修
マナー研修
入社1日目の後半や2日目からマナー研修が始まることが多い。
全職種共通である。
マナー研修は1日~3日程度で終わる。
講師は外部企業の人出ることが多い。
名刺の渡し方やお辞儀の仕方などは後でなんとなく覚えられるので完璧にできなくてもよい。
上座下座もなんとなくでよい。
ちなみに高層ビルの場合、部屋の奥を譲ることがよいとは限らない。ドア側の方が窓の外の景色がよく見える場合があり、あえてそちらを譲ることもありえるからである。つまり、わりと適当な認識でよい。
敬語はそれなりに面接をこなしてきた人ならそれなりに話せると思うので、あまり意識しなくても大丈夫である。
メールマナーは早めに覚えた方がよい。研修の成果を人事や講師に報告することがある。
総じてマナー研修はムキになりすぎなくても大丈夫である。
グループワーク
マナー研修が終わるとグループワークをやらされがちである。これも全職種共通で、外部講師であることが多い。
「社会人とは何か」「嫌な人と一緒に働くときはどうするか」といった抽象的なテーマで議論をして、それを発表する。
その後、3日~5日程度かけて、「架空の商店街を復活させるプロジェクト」みたいなことをやることがある。
架空のプロジェクトでは、一般人になりきった講師から情報を聞き出す必要があるなど、選考でのグループワークに比べると多少は本格的ではある。
とはいえ、おままごとの域を出ないのであまり難しく考えず、楽しく乗り切ろう。
このあたりから仲良し同期というのが固まり始めてくる。
職種別の研修
グループワークが終わると、共通の研修は大体終わりである。この後は職種別研修などに移る。
このあたりから、研修に成績が付き始める。自分の成績について教えてくれる場合と、教えてくれない場合がある。
職種別研修は、その職種ごとの先輩社員が行う。
まだOJTではない。専用の研修プログラムである。
社内用語や社内システムの詳しい使い方についても、このタイミングで教わる。ややこしい略語がたくさんある。
入れ代わり立ち代わりいろんな人がいろんなことをしゃべるので、到底覚えきれない。覚えてなくてもよい。
研修中に居眠りをする人が出始めるのもこの頃からである。
社内の資料などが読める環境になり次第、興味のあるものを読んでみると楽しい。
どんな職種であっても全員、工場研修やコールセンター研修などを行う企業もある。これらは会社の泥臭い部分であることが多く、心身ともに疲れる人が目立ち始める。
地方オフィス巡りがあると、ちょっと楽しい。
研修中の有給休暇
研修中でも有給休暇があれば取得できる。法的には勤務開始6か月間は付与義務がないが、付与されている会社も珍しくない。
しかし、取得しすぎると研修に取り残される可能性が高まるので、おすすめはできない。配属されてからとりまくろう。
不慮の体調不良や年末年始等の連休の延長などにも有給を消費する人が多い。付与後2年間は消えないので、多少は余らせておくとよい。
とはいえ研修は、体調不良や冠婚葬祭などがあるのに無理して出なければいけないほど大事な物ではない。
有給取得の理由は言いたくなければ伝える必要はないが、まだ配属先決定前である。人事に面倒なヤツと思われすぎないよう気を付けた方がよい。
バースデー休暇を取る人はあまりいない。4月生まれの人はだいたい初年度は諦める。
生理休暇は必要以上に人事内で共有されることはないが、単なる体調不良では伝わらない。女性の人事などにハッキリ告げる必要がある。
遅刻や早退をしたら半休扱いになり有給残数が減らされる場合がある。
有給がないのに休むと欠勤扱いとなり、給料が引かれるだけでなく、賞与も少なくなる。人事評価にも響くので、よほどの事情がない限りしないほうがよい。
研修中の設備利用
自販機、食堂、マッサージチェアなど、禁止されていない範囲で使ってみるとよい。
他のフロアにも行って見学してみるとよい。ただし大人数でゾロゾロ行くと迷惑なので気を付ける。
会社から貸与されるPCやスマートフォンの使用履歴は全て見られていると思った方がよい。
特定のフリーソフトなどをインストールする際には、セキュリティの問題などで、会社の承認が必要な場合がある。使い慣れているエディタなどがある場合は一応確認した方がよい。
勤務時間外の利用はしないほうがよい。会社は、サービス残業をさせていると勘違いされることをとにかく恐れている。勤務終了後は、仕事関係のものには触れないこと。
その他の研修関連の話
「研修最終日に講師に花束を渡そうぜ!」とか言い出す同期がいる。500円くらい取られる。
外部講師の場合はおそらくもう二度と会うことはない。個人的には、社会に出て初めて世話になった人なので今でも覚えている。良い人だった。
特にマナー講師はさすがプロであり、喜び方も上手なのでそれも勉強になる。
研修中に仲良しの同期ができなくても、心配しすぎなくてよい。一緒の部署に配属される人とか、部署の先輩社員とか、この後でいくらでも人間関係はできる。
稀に研修中に退職する人がいるが、釣られてやめないようにする。新卒と第二新卒の市場価値は天と地ほど違う。
配属・OJT
決定前
配属先は主に研修中の成績と、本人の希望や適性を考慮して行う。
研修の成績が良かったからといって、希望通りに配属されるとは限らない。優秀な人を偏らせないようにするためである。
希望は、『〇〇がしたいです。』とはっきりと伝えた方がよい。遠慮はしなくてよいが、『〇〇以外は嫌だ』というような言い方をしても効果はない。『〇〇がしたい理由』を明確に述べることが重要である。要するに面接と概ね同じである。
勤務地についてもハッキリと希望を伝えた方がよい。
聞かれなければ、自ら伝えに行ってもよい。その際、人事も忙しいのでまずはメールで連絡すること。
配属後
希望通りではなくてもガッカリした顔を配属先の人に見せないよう気を付ける。
配属されると、まず最初に部長や課長など、その部署の役職者から業務内容について概要が説明される。
その後、個々人に担当の先輩社員が付くことが多い。
わからないことは積極的に質問する。
調べられることは頑張って調べる。
テレワークの場合、雑談なども意識して行うとよい。
新入歓迎会など、初回の飲み会は先輩社員が幹事をしてくれる。
翌日に幹事や上司にお礼を言うとよい。
業務中であっても気を張り詰めすぎる必要はないが、絶対に守るべきラインは守る。
具体的には、定期的に行われる人事研修や面談がその一つである。会社員である限り、人事研修は今後の出世にも超重要である。
しかし、実際の業務が始まると、これをおろそかにしだす人が多い。本来の業務自体はだいたいみんな頑張るので、こういうところで差がつく。
なぜなら、人事は利害関係がある上司からの報告よりも、自分の目で見聞きした情報を信じる傾向にあるからである。
最終的な決定権限は上司ではなく人事にあることを十分に理解すること。
勤怠についても重要である。短時間であっても遅刻が多いと人事から厳しい目が向けられる。
人事以外が主催する研修やeラーニングなどは手を抜いても、少なくとも人事評価には関係がないことが多い。
あとがき
2022年3月卒業の皆さんが入社するまで、あと1か月余りとなりました。ネット上では優しく後輩の指導をしている人たちも、そろそろ自分のことで落ち着かなくなってくる頃だと思います。
そこで、この記事では、概ね時系列順に、様々な観点でしない方がよいことやした方がよいことを記載してきました。
とはいえ、実際はこんなに厳しい話ではありません。会社にもよりますが、現実は多少の手抜きやサボりは許されますし、テンプレ通りにやらなくても失礼に当たらないことも多いです。失敗しても、ほとんどのことは挽回が効きます。
しかし、そうはいっても、そのあたりの匙加減がわかってくるまでは基本的にはしっかりしていた方がよいのも事実です。月並みな話ではありますが、緊張感や不安感も後から振り返ると楽しい思い出になるでしょう。
落ち込んだ時に思い出して欲しいのは、あなたがもうこの会社で頑張っていくしかないのと同様に、会社はもうあなたを上手く使う以外の選択肢がないということです。これが、「選考の結果不合格だからさようなら」となっていた就活生時代との最も大きな違いの一つです。
会社は新入社員を成長させ、会社の役に立つ人間にしようと必死です。だから、頑張っている新入社員を手助けしてくれる先輩はたくさんいます。私たち人事もそうです。
もちろん、なかには嫌な先輩もいます。希望通りに配属されない人もいます。また、現実問題として成績が順位づけられることもあります。しかし、まずは自分自身ができる範囲で一生懸命頑張ることが重要ではないかと私は思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
ほしの
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