Knight and Mist 一章-6 大広間1
スコッティ・プレスコットは、一言でいえばイケメンだった。
精悍な顔立ち、引き締まった身体、生真面目そうな性格。
第一印象は最高で、とても信頼できる人だと分かった。
ハルカの事情を聞き、スコッティは旅の案内人になることを快諾してくれた。
「エルフか。生きている間に会うことになるとは思ってもみなかったな。楽しみだ。よろしく、ハルカさん」
「よろしくお願いします、スコッティさん」
握手を交わす。今のところ順調だ。
それに少し面白いことがあった。
「……って、どうしたのレティシア? さっきからカーテンに隠れて出てこないけど」
「そっ、そんなことありませんよ! ちょっとカーテンの触り心地がよかっただけでっ! わ、わたし、地下牢のひと呼んできます!」
レティシアはそういうとだっと部屋から出て行ってしまった。
顔を見合わせるスコッティとハルカ。
スコッティは苦笑した。
「いつもああなんだよ」
それも無理はないな、と思った。ハンサムで、誠実そうで、背が高くて、茶髪にハシバミ色の目をしていた。
誰でもクラッとくるような人だ。
レティシアはスコッティと手が触れては赤面し、目を合わせられずに空咳をし、動揺しまくっているのがまるわかりだ。
レティシアがこの男に惚れているのは確実だった。
逃げるように大広間を出て行くレティシアの背中を思い出しつつ、ふふっとつい笑ってしまう。
「リルとレティシアとは家族同然だ。というか実は、僕とレティシアは婚約してるんだ」
「えええっ!?」
さっきのレティシアの態度を思い出し、ハルカは素っ頓狂な声をあげた。
「婚約者なんですか? なんか中学生の淡い恋心みたいな感じでしたけど」
「実際そうなんだよ。慣れてくれないと困るのに。手を貸してくれないかい?」
スコッティはワインをグラスにあけ、ハルカに手渡した。ハルカは喉がカラカラだったのでそれをグイッといったあと、大きく頷いた。
「もちろん! もちろん応援しますとも! ここがどこで何が起きてるか分からないけれども、恋なら分かる! わたしはご無沙汰ですが!」
「じゃあ、レティシアと僕の恋に」
ハルカのグラスにワインをそそぎ、それからグラスをかかげた。ハルカもグラスをかかげ、
「レティシアの恋に」
それからスコッティとおしゃべりをする。
たわいのない話で、砦での生活を聞いていた。
リルとレティシアの親はここの領主で、二人は領民を保護してこの砦にいるらしい。
スコッティの父親は昔からレティシアたちの父の右腕で、だから兄妹同然に育ったらしい。
領地の美しさをスコッティは熱心に話していた。
いかに緑が綺麗か、どのような花が咲き、鳥が歌うか、そんな話だった。
遥香はほぼきいているだけだった。
それから郷愁に駆られたスコッティが吟遊詩人を呼ぼうと言い出した。
そのときだ。
大広間の扉が開いた。
一瞬、心臓を鷲掴みにされたような感覚がはしる。
恐怖なのか、なんなのか。
分からないまま、遥香は大広間に入ってきたひとを見つめたーー
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