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いろんなことに、『YES』って言ってるような人だった



こんにちは

去年頃から
お香にはまっておりまして

よく部屋で焚いていたのですが

夏になると
湿気を含んだ暑苦しい空気とともに

お香の香りが
まとわりつく感じが気持ち悪くて
引き出しの中にしまってしまいました

涼しくなり
思い出したようにお香に火をつけると
どこか懐かしく
気持ちがとても落ち着きました


今回ご紹介するのは
吉田修一の「横道世之介」です

ドラマ「半沢直樹」を見ている私は
人の名前がタイトルのこの作品に
妙に惹かれまして

大いなる期待を胸に
手にとりました



タイトル : 横道世之介
著者 : 吉田修一 (よしだ しゅういち)
出版社 : 毎日新聞社
価格 : 定価1600円 (+税)
ページ数 : 423ページ

大学入学を機に
長崎から上京した男子大学生の物語

平凡な
どこにでもいそうな大学生だが

サンバサークル
娼婦と呼ばれる年上女性の千春
社長令嬢で世間知らずの祥子
妊娠を機に学生結婚をし大学を辞めてしまう倉持と唯

出会う人は個性派揃い

そして
世之介のお人好しな性格のおかげで
紡いだそれぞれとの思い出が
温かく描かれた作品

途中から
世之介以外の登場人物たちが
世之介との思い出を回想するシーンが盛り込まれるが

肝心な世之介の回想録はない

その理由を知った時
悲しいけど優しい気持ちになれます


「一浪することを決めた時、俺、思ったんだ。人生ってやっぱ長そうだし、こんなに早い時期に妥協なんかしたら、一生そんな人生なんじゃないかって」(22ページ)

「免許取る奴もいれば、そのせいで殺される人もいるんだよなぁ」(108ページ)

「何かが欲しいんじゃなくて何かを捨てたいんだと思うのよ」(257ページ)

「たとえばユータ君が初めて食べるものを、もうその彼女が食べたことがあるとするよね?でも彼女にとってもやっぱり初めてなんだよ、ユータ君と一緒に食べるのは」(265ページ)

「いろんなことに、『YES』って言ってるような人だった」
「もちろん、そのせいでいっぱい失敗するんだけど、それでも『NO』じゃなくて、『YES』って言えるような人」(374ページ)



最初は
アルバイト、サークル、恋愛、と
大学生あるあるを
見ているようで

共感はあるが
驚きや感動は薄かった

だから印象が薄い

回想の中でも
登場人物たちははっきりと世之介を思い出せない

つまり
彼には特徴がないんだ

世之介を一言で言えば
「なんかいい」じゃないかな

大した取り柄がない
でも嫌いじゃない人物

祥子の回想の中で
そんな世之介の良さが
はっきりしてくる感じがしました

そして
私は最後にドカーーーーーン
と心を持っていかれました

私の心の端っこの方にも
世之介は居続けると思います


最初は辛抱です
退屈してしまうこともあるでしょう

それでも読み続けられる
辛抱強い人は味わうことができます
少し悲しくて温かい感動を


最後まで読んでくれて
ありがとうございました

ばいばい。

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