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迷う四季

季節がすべて前倒しになっている。
紫陽花も、雨の季節も、台風も、プールの授業も。
それでも、スーパーの鮮魚コーナーに並ぶカツオにすこしホッとしたりする。
あぁ、まだ世の中に初鰹は存在しているのだと。

もう数十年も前の話。
父親がひまわりの写真を見せてくれると言ったことがある。
なぜ父が花なんてと少々疑問には思ったが、きっととてもきれいなのだろうと期待を膨らませていた。

ところが、父が見せてくれたのは白黒の、なんだかボヤっとした写真で。
天気関係の仕事をしていた父は、子どもたちに気象衛星「ひまわり」が写した画像を見せてくれたのだった。
今のように衛星動画が誰でもすぐに見られる時代ではなかったし、きっと父は子どもたちに珍しいものを見せてあげようと思ったのだろう。
なんだか笑い話みたいだけれど、あの時は、内心がっかりしたのを覚えている。

その頃からずっと父は、エルニーニョだとか温暖化だとか言っていたけれど、今になってこんなにもあちらこちらでその言葉を聞くようになるなんて思ってもいなかった。

季語や歳時記なんてものも、揺らぎはじめているのかもしれない。
旬の味もいつかは消えゆくものだとしたら。
そんな危機感に煽られて、ついカツオのパックをカゴに入れる。


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