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【日本神話⑨】天孫降臨 日向の秘境

 高天原側から「国譲り」を迫られた地上の中津国・出雲の大国主命(オオクニヌシノミコト)は、息子の建御名方神(タケミナカタノカミ)が敗れたことで、これを承諾しました。その交換条件として建てられたのが出雲大社だそうです。

 オオクニヌシの返答を受け取った天照大神(アマテラスオオミカミ)と高御産巣日神(タカミムスヒノカミ)は、アマテラスの息子・天忍穂耳命(アメノオシホミミノミコト)を中津国へ下らせようとしましたが、アメノオシホは自分の子(アマテラスの孫)である邇邇芸命(ニニギノミコト)を推薦し、ニニギが降臨することになりました。

参考資料:神様が乗ったお神輿を先導する天狗面の猿田彦(長野県飯山市の小菅神社で2013年7月15日撮影)

 アマテラスの孫が高天原から降りたことから「天孫降臨」といわれるゆえんです。さて、ニニギらが出発しようとすると、天と地の間に猿田彦命(サルタヒコノミコト)と名乗る神が現れ、道案内を買って出ました。他には「天の岩戸」で踊りを披露した天宇受売命(アメノウズメノミコト)ら8人の神様が従ったそうです。この神話から、サルタヒコは各地の神社の祭事で先導役を務めることが多いです。上下の写真は「天孫降臨」とは関係ない神事ですが、地方の神社でもこの風習がある例です。

神社前で火柱を立てて松明を振り回す猿田彦(同市の奈良沢神社で2010年9月18日撮影)

 私は仕事の都合で長野県に住んでいた時期があるのですが、この時に見た神社の祭事でも天狗面のサルタヒコが先頭に立つ様子が見られました。お祭り行列を率いた後、神社境内前に張られた縄を松明や刀で切って「道開き」を行っていたのを覚えています。日本神話を知っていてよかったと思う瞬間でしたね。なお、先導役を務めたサルタヒコは交通安全の神様として知られています。また、サルタヒコの妻は芸能の神アメノウズメです。

猿田彦命や天宇受売命らを祀る宮崎県高千穂町の荒立神社(2013年12月31日撮影)

 さて、天孫ニニギが降り立った場所ですが、二つの候補地があります。ひとつは宮崎県北部の高千穂町。もうひとつは同県南部の高原町と鹿児島県霧島市の県境の高千穂峰と名の付く場所。どちらも神話中の地名と共通点があります。まずは高千穂町を巡って紹介したいと思います。

高千穂峡

高千穂峡(2013年12月31日撮影
高千穂峡の「真名井の滝」(同日撮影)

 いわずれと知れた「高千穂」の代名詞的な場所ですね。真名井の滝。落差は17mだそうです。HPによれば、阿蘇火山活動の噴出した火砕流が、五ヶ瀬川に沿って帯状に流れ出し、急激に冷却されたために柱状節理の懸崖となった峡谷だそうです。

柱状の崖を流れる五ヶ瀬川(同日撮影)
新旧3本の橋が架かる高千穂の峡谷(同日撮影)

 高千穂峡は熊本県境に近く、けっこう山深い場所にあったと思います。到着したのは年末の30日の日暮れでした。宿に入って朝日系列のTV番組「アメトーク」の年末特番に間に合ったと思ったのですが・・・宮崎県は民放が2つしかなく、チャンネルを回しても放映しておらずショックを受けた思い出があります。私は引っ越しの多い人生ですが、こんなことは初めでかなり驚いてしまいました。別にディスっているわけじゃないんですけどね。純粋に驚いた思い出です。

いずれも高千穂神社。邇邇芸命らを祀り高千穂神楽も行われる(同日撮影)

 これまでの記事で何度か登場した「高千穂神楽」を見たのは、写真の高千穂神社です。邇邇芸命らを祀っています。神楽は台詞はないのですが、日本神話を知っているだけで、何が起きているのか分かるので、やっぱり勉強しておいてよかったと思いました。こうして記事を補完する写真にもなっているわけですしね。歌舞伎や能はさっぱり分からないんですけどね・・・いや、知っている話もあるのだろうけど、見たことはありません。

邇邇芸命が降りた地名を冠する槵触神社の鳥居(同日撮影)

 槵触(くしふる)神社はニニギ降臨地「くしふるの峰」の名前を冠した神社です。古事記では「筑紫(九州)の日向(宮崎県)の高千穂の久士布流多気(くじふるたけ)」にニニギは降りたと書いてあります。この神社は背後の山を「槵触山」として御神体としたそうです。

「国見ヶ丘」から見下ろす高千穂の里(同日撮影)

 ニニギは降臨する道中、「二上峰(ふたかみのたけ)」に到着したのですが、霧で地上の様子がよく見えなかったそうです。すると大鉗(オオクワ)と小鉗(コクワ)の二人が現れ「その手に持つ稲千穂を籾にして巻けば霧は必ず晴れるでしょう」と助言しました。これで無事に降りることができたため、ここが「高千穂」と呼ばれるようになったそうです。写真はニニギが国を眺めた「国見ヶ丘」からの眺めです。早朝ですが幻想的な風景でした。

「国見ヶ丘」の邇邇芸命(中央)と大鉗、小鉗の像(同日撮影)

 オオクワとコクワの二人は「日向風土記」に出てくる人物だそうです。全国各地の風土記が散逸せず残っていれば、古事記と日本書記だけでなく、各地方の詳細な地歴、神話や伝承、記紀の元ネタやそこから推察する史実のヒントなども知ることができたのでしょうね。現存するのは出雲、常陸、播磨、豊後、肥前のみです。その他は、逸文などわずかだそうです。

高千穂峡のソフトクリーム(同日撮影)

 さすが天孫降臨の地。ソフトクリームは豪華ですね。ニニギは「ここは朝日がよく差し、夕日も明るくいい国だ」と褒めたたえたそうです。私も早朝から朝日を浴びつつ、行けるだけ行く感じでノンストップで神話の世界を追っています。本当に神話の世界を体現するような自然豊かで荘厳な雰囲気漂ういい国でしたね。次は鹿児島県境の高千穂峰を紹介します。厳しい登山となりました。

高千穂峡↓

表紙の写真=高千穂の「国見ヶ丘」(2013年12月31日撮影)

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