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2018年5月の記事一覧
【児童文学】僕のあだ名は
僕は、何をやるのもだいたいのろい。学校の黒板は、最後まで書き写さないうちに、先生がチョークで書いた内容を「はい、次ね」って消しちゃうし、給食の時間は、給食当番の女子たちに「もうっ、お昼休みになってもまだ食べてるの、奥山くんだけだよっ。あたしたち片づけて遊びに行けないじゃない!」ってすぐどやされる。かけっこだって遅い。逆上がりだって、できたのはクラスで一番最後。おまけに、しゃべるのだってゆっくりだ。
もっとみる【児童文学】亜樹とともだち
ゆるく巻かれているきれいな金髪を、おもちゃの櫛で梳きながら、亜樹はその金髪の持ち主——人形のカンナに、話しかけた。
「ねえ、カンナ。今日も、中学校早退してきちゃったよ」
カンナの青いつぶらな瞳が、亜樹をじっと見ている。まつげにふちどられたその綺麗な瞳は、亜樹が七歳のときから、そのさびしいとき、つらいときに寄り添ってくれていたものだった。
学校から帰ったまま、セーラー服から部屋着へと着替える前