太宰治の「女生徒」を読む

 この話は太宰ファンの女子生徒が自身の日記を太宰に送り、太宰がそれを基にして作った物語であるというのを聞いたことがある。最初はいかにも乙女チックな文章が綴られているのだが、途中から太宰の人生観のようなものが見受けられた。私は太宰治についてあまり詳しくないので、太宰が実際にどのような人生観を持っていたか分からない。しかし、女子生徒の何気ない日常を描いた小説から垣間見える太宰の人生観は、興味深かった。

 檀一雄の「小説 太宰治」には「女生徒」について書かれた文章がある。当時出征していた檀は、上官の持ち歩いていた本が「女生徒」であったと回想している。戦地に赴く兵士が、女子生徒の平和な日常が綴られた物語(といっても戦争の翳りはあるのだが)を読んでいたと思うと何だかやるせない気持ちになる。

 最終的にこの上官は亡くなる。死んだ上官の胸ポケットからその本を取り出し、持っていった檀の心情を考えると、何とも言えない気持ちになった。