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七月の星々(140字小説コンテスト第2期)応募作 part4

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月ごとに定められた文字を使った140字小説コンテスト。

今月の文字は「放」。

7月31日までご応募受付中です!
(応募方法や賞品、過去のコンテストなどは下記をご覧ください)

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応募作(7月20日〜26日・投稿順)

鳥谷(サイトからの投稿)
 金魚が戻ってきた。三日前、池に放した金魚の死骸が戻ってきた。家に帰った時には既に空っぽの水槽の中にいて、仰向けに浮きながらぽかりと口腔を開けていた。湿った雨の臭いに生臭い水の気配が混ざり、締め切ったアパートの部屋に充満している。

朝本箍(サイトからの投稿)
今日の贈り物はなかなかの出来だ。色様々発光する粒を瓶一杯に、君へ見せれば「ほうっておいて」のつれない言葉。落ち込んでいるのはわかるけど、私にだって感情はあるんだよ。そんなに言うなら。贈り物を力一杯夜空へ放る。粒は瓶から飛び出して空一面に瞬いた。これなら君も。あぁ、名は何としよう。

吉岡幸一(サイトからの投稿)
別れの言葉を言い放った後は、爽快感よりも虚しさに襲われた。仕方がなかったと言い訳してみても、努力しなかったことが悔やまれる。「月がない夜ね」と言った君に、「月がきれいだね」と言いたかった僕。いつまで経ってもバス停にバスは来なかった。月がない夜空に月を待ちながら僕は見あげ続けた。

りふぇーる(サイトからの投稿)
 放課後、君への想いを書き綴った手紙を、折り畳んで下駄箱に入れた。
 誤字脱字はないか、10回は見直した。宛名も差出人も書いた。
 やがて、玄関に現れた君は、怪訝そうな顔をして手紙を鞄に入れた。
 そして一週間。私は裏庭に呼び出された。
「手紙、折り方が複雑で開封出来ないよ……」

ヒトリデカノン(サイトからの投稿)
食べられる食器ができた。当然のように服も家具も食べられるようになった。味も食感も栄養もバラエティに富んでいた。人々は料理を忘れ洗濯を忘れ、欲望のまま欲しいものを手に入れ、飽きたら食べる生活をするようになった。ゴミ問題からも解放され、つまらない本も地球上から跡形もなく消えた。

ヒトリデカノン(サイトからの投稿)
運を握ったコインを発明した。運を天に任せたとみせかけて、実はコインが握っているというわけだ。使い方は簡単。願い事が叶うように放り投げればよい。早速私は量産する為にクラウドファンディングすることにした。その前にコインを投げてっと……。あれからずっとコインが落ちてくるのを待っている。

ヒトリデカノン(サイトからの投稿)
掌をじっと見ていたらコインが上から落ちてきた。「表だ」「10億人目おめでとうございます!こちら賞金の10億円です」喜びと共に両手を放り投げたら、コインが弧を描き募金箱に入った。あっという間に地球上から不幸が消えた。なんの文句もなくなって、することもなくなった。そしてコインが……。

吉岡幸一(サイトからの投稿)
「大嫌い」
君が放った言葉に絶句していると、雨が降り出してきた。
傘を持っていない君に傘を渡して立ち去ろうとすると、貸した傘をひろげて僕を入れてくれた。
「大嫌い。でも好きなの」
君は雨よりも激しく泣きだした。
出来たばかりの水たまりに、色鮮やかなネオンの光が写っていた。

ヒトシ(サイトからの投稿)
感性を鈍らせているのは、連日の暑さか、それともおのれの慢心か。日毎、厳しさを増す状況が、底の浅い経験値の応用力のなさを浮き彫りにし、何ひとつリカバリができないまま時間だけが過ぎてゆく悪循環。今日も熱帯夜。冷たい汗が全身から滲み出し、出口の見えない焦燥感に縛られたままただ放心する。

ヒトシ(サイトからの投稿)
温暖化が極限を迎え、生態系のバランスは遂に崩壊する。しかし、氷河の奥底で眠っていた太古の植物の種が芽吹き、たちまち大きな葉を茂らせて、地上を覆い尽くす。緑葉の屋根が太陽の熱を和らげ、空気を循環させ、食物連鎖を再構築する。新しい創造主のもと、緑の星はまた新しい命の輝きを放ち始める。

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