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七月の星々(140字小説コンテスト第2期)応募作 part5

part1 part2 part3 part4 part5 結果速報

月ごとに定められた文字を使った140字小説コンテスト。

七月の文字「放」は7月31日をもって締め切りました!
(part1~のリンクも文頭・文末にありますので、作品の未掲載などがありましたらお知らせください)

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そして八月の文字「遊」です!
応募方法や賞品、過去のコンテストなどは下記をご覧ください。

応募作(7月27日〜31日・投稿順)

吉岡幸一(サイトからの投稿)
鎖から放たれた子犬が小さな女の子に向かって走り出した。
「おかえりなさい」と、女の子は飛び付いてきた子犬を泣きながら抱きしめた。
送り届けただけなので事情は知らなかったが、子犬も女の子もとても幸せそうだった。
見ていた僕の心も幸せに向かって解き放たれたようだった。

鯉瀧堂(サイトからの投稿)
「解放管理員」という仕事をしている人がいる。同調圧力や承認欲求で心は常に縮こまっている。このままでは多くの人がダメージを受けてしまう。だから心を解放しているかを常に見張っている仕事が生まれた。管理員になるのに試験は無い。「解放管理員」という名札とアルカイックスマイルがあればよい。

鯉瀧堂(サイトからの投稿)
この世の中はモノで溢れかえっているといっても過言ではない。ヒトよりもモノは断然多い。だからモノに話しかけると無限大につながりが広がっていく。でもモノと心が通わない時はモノを放り投げてみる。モノは自ら放物線を描いた。放ったことを後悔させるいつもと違う虹が雨上がりの空にかかっていた。

sato(サイトからの投稿)
都合の悪い事を後回しにするから、余計に都合が悪くなる。青い空も睨んで歩くから真っ赤に見える。奔放に生きてみたいと思っても、つまらぬ意地張って小さく張り詰めたままでいる。暮らしに塗れるってもっと別のことだったような気がして歩きながらつい首傾げてすれ違う人の目が気になる。死にたい夏。

鯉瀧堂(サイトからの投稿)
皿に残った唐揚げをジャンケンで勝った人が食べることになった。でもジャンケンには参加しなかった。唐揚げを食べられるかもしれない権利を放棄した。そういえば親の骨を拾う権利は誰にでもあるのだろうか。どちらの親も骨を拾わなかった自分は権利を放棄した覚えはない。ただ参加をしなかっただけだ。

鯉瀧堂(サイトからの投稿)
乗り放題で出かけたら遊び放題。お土産は季節の花を摘み放題と名物の詰め放題。夜は食べ放題と飲み放題で温泉に入り放題。おしゃべりに花が咲いて言いたい放題。寝る時はいつもより広いスペースを使い放題。朝はドリンク飲み放題とパン食べ放題。帰路も乗り放題。やりたい放題で最後は#我が家が一番。

ちる(サイトからの投稿)
ラジオを聴きながら受験勉強をしていた頃、暗い曲ばかり放送している番組があったんだ。気怠げな声の女性がDJをやっていて、読まれるメールも重々しい内容のものばっかりでさ。最初はなんだこれと思ったけど、妙に落ち着くのでたまに聴いていたんだ。でもあるとき英会話の番組に変わってしまったよ。

ちる(サイトからの投稿)
弾かれないままになっているピアノが、怒って暴れるという事件が立て続けに起きた。恐ろしくなった人々は、ピアノを逃がした。野に放たれたピアノたちは、草原や山岳に散らばった。四つ足であることから、野生動物ともうまくやっていった。今やピアノたちは、自然の中で思い思いの音楽を奏でている。

月街夢子(サイトからの投稿)
「幸せを放棄してはならぬぞ。」教室でぼんやりとしていた私に親友が言った。授業は終わり放課後になっていた。昨夜は夏祭りで好きな人が浴衣を着た女の子と歩いているのを見た。「桃のタルト、食べに行こうではないか!」親友はそう言うと私の腕をぐいとひっぱり駆ける。私は泣き笑いしながら走った。

鯉瀧堂(サイトからの投稿)
「解放管理員」の名札を下げた人に誘われた場所は小学校の体育館。木が使われた床や肋木は運動神経の鈍い私でも懐かしさに心がほぐれた。皆に開放しているのでまたどうぞとその人は言った。名札を見直せば「開放管理員」とある。勘違いを責めない表情の管理員は解放も業務の1つと心得ているはずだ。

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