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七月の星々(140字小説コンテスト)応募作 part2

part1 part2 part3 part4 part5 結果速報

月替わりのテーマで開催する140字小説コンテスト。

【7月のテーマ】
作中に必ず『』という文字を入れる。

7月31日までご応募受付中です!
(応募方法や賞品、各月の受賞作などは下記をご覧ください)

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応募作(7月6日〜12日・投稿順)

uriko(サイトからの投稿)
時間遡行もののSFが好きだ。タイムマシン、タイムパラドックス、すれ違う恋人たち。理屈は分からなくても滔々とした説明そのものがいい。思いがけない事故によって3021年から時間遡行をしてしまった僕は戻る方法を探してSFを読み始めたのだが今のところ役に立ってない。役に立たなくてもSFが大好きだ。
uriko(サイトからの投稿)
時々どうしようもなく死が近くに寄ってきて、楽な死に方をあれこれ考える。あれは痛そう、これは人に迷惑をかけそう。誰かに薬を盛られるのが妥当という結論に至る。そしたら次は犯人の気分。死体をどう始末するかを考えて、あれはバレそう、これは大変そう。考えてる内に死が遠のくのを知っている。
uriko(サイトからの投稿)
小学校の時七不思議ってあったの覚えてる?トイレの花子さんとか動く標本とか。全部知ったら呪われるっていうオチだったよね。あれ嘘だよ。私。実は七つ全部知ってるけど何にもないもん。まあちょっと見た目こんなんなっちゃったけど。ねえだからドア開けてよ二人で同窓会しよう。開けろあけろあけろ!
鳥谷(サイトからの投稿)
 心臓の音がうるさい。こうしている間にも多くの命が失われているというのに。
「あの装置を起動させろ。この鍵を反時計回りに回すんだ、逆だと爆発する」
 さっき死んだ祖父の遺言。
しかしここに来てド忘れ。頭を探っても、携帯電話の画面ばかりが浮かんでくる。だが、一か八か、やるしかない。
右だ!
uriko(サイトからの投稿)
Uさんは同人誌を出すタイプのヲタクでした。ある日大正時代ジャンルにはまってしまい本の表紙を活版で刷ってもらうことにしました。なんとも美しい表紙が刷り上がりました。わずかなへこみを指でなぞって百年前に思いを馳せます。Uさんの本は十年すら残らないけれど、へこみの分ちょっと長く残るかも。
uriko(サイトからの投稿)
オリンピックほんとにやるのかな、中止するんじゃないかな、と思っているうちに時は過ぎとうとう明日開幕ということになった。さすがにここにきて中止はなさそうだ。東京にいるのもなんなので深海に潜ってやり過ごすことにする。あ、びびびと花火の振動。深海には光は届かない。貝を齧って音だけ聞く。
uriko(サイトからの投稿)
今日は事件の時効だ。大泥棒が時計台の時価3億円の時計を盗んだのだ。時の流れと共に往事のニュースは忘れ去られたが探偵は諦めない。このご時世聞き込みも大変だったが、時化の海を船で逃げる泥棒を追い詰め、一時停止させる。「お縄に着く時だ」と言われた泥棒は笑い、時限爆弾で自爆してしまった。
uriko(サイトからの投稿)
時が全てを忘れさせてくれるというけど、時が連れ去るのは柔らかなものだけだ。痛みをふわりとくるんでくれていた真綿のように脆いきらめきたち。それらが去れば剝き出しの痛みだけが残る。近年宇宙葬が流行っている弊害で、痛みは小さな彗星となって激しく燃えながら地球へ落ち、地面に歪な穴を作る。
uriko(サイトからの投稿)
字を書くことは麻薬のようなもので、体内に巣くう何者かの怨嗟の声をひと時かき消すためにわざと音を立ててキーボードを打つ。つまり幻聴と執筆は卵と鶏の関係というわけ。昨日食べてしまった初恋のあの子が腹の中でわめいていて、かき消すために指を動かした。今のうちに賞の応募作を書いておきたい。
uriko(サイトからの投稿)
不登校だった中学生の時、国語の先生が言った。「奥の細道の冒頭文を暗唱すれば進級させてあげよう、五分後に開始だ」。今でも思い出せる「つきひははくたいのかかく」。職員室の隣の陽の射さない小部屋。居合わせた教頭先生が拍手してくれたこと。私もいつか「たびにしせる」がいいなと思ったことを。
芦田晋作(サイトからの投稿)
くるくると時を巻き戻している少年がいたので歴史の勉強?と聞くと違うと言う。失恋なのと聞くと違うと言う。一番幸せだった時まで戻るのです、と言いながら少年は消えてしまった。生まれる前まで巻き戻してしまったのだ。私はそれを見てくるくるする手を止めた。ほどほどにしておいた方が良さそうだ。
芦田晋作(サイトからの投稿)
少女は時が流れていってしまうのを手でせきとめていた。まだあるから大丈夫だと言い聞かせた。少女は言うことをきかなかった。少女の前には花が咲き空は晴れ蝶が舞っていた。夢に見ていた全てが舞った。それは美しかった。しかし少女の手はふさがっていたから、老女になってもまだ何もつかめなかった。
芦田晋作(サイトからの投稿)
絵で時を止めてある。老爺が誉めた。静かな海だと誉めた。少女が見に来た。時は動き出した。雷鳴が近づき、波は高く、舟を飲み込み、鳥は鳴き、漁師は耳をふさぐ。雲間から差し込む光が広がり、晴れ渡る。浜辺には子どもが集まり親は椅子に座り読書する。老婆が見に来ると、また時は止まってしまった。
uriko(サイトからの投稿)
藁人形を打つ不審者が出ると聞いていたのに、連日の残業で疲れていた私は丑三つ時の公園を通ってしまった。女が人形に五寸釘を打っていた。血走った目と目が合う。早く逃げなくては。女は私に近寄りそっと人形を握らせ「一緒にやる?」 私は人形に名前を書いた。翌日から定時退勤になった。かみさま。
uriko(サイトからの投稿)
いたいけな大学生の時駅前で絵を売り付けられかけた。イルカの絵か夕日の絵、30万を4年ローンで買えと言う。なんとか逃げ出したが、あの妙に感じが良く明るい詐欺師達はどうしているだろう。今もイルカと夕日の絵を抱えて旅から旅の楽しい詐欺生活だろうか。何故か少しそうあってほしい気もするのだ。
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