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八月の星々(140字小説コンテスト)応募作 part1

part1 part2 part3 part4 part5 結果速報
【お知らせ】
ワークショップと140字小説コンテストの受賞作を掲載した雑誌『星々──生きるように書くこと』の予約販売を兼ねたクラウドファンディングをお盆後の8月中旬頃よりスタートします!
予備選通過作をすべて掲載した小冊子など、リターン商品も検討中です。
ご支援いただけたら幸いです。

月替わりのテーマで開催する140字小説コンテスト。

【8月のテーマ】
作中に必ず『』という文字を入れる。

8月31日までご応募受付中です!
(応募方法や賞品、各月の受賞作などは下記をご覧ください)

受賞作の速報はnoteやTwitterでお伝えするほか、星々マガジンをフォローいただくとhoshiboshiメンバーの記事とあわせて更新のお知らせが通知されます。

応募作(8月1日〜5日・投稿順)

木村建太(サイトからの投稿)
三年前に投げたブーメランがやっともどってきた。朝、新聞を取りに行ったとき、犬小屋の前に刺さってるのを発見した。犬に刺さらなくてよかった。百均で買った「く」の形をしたプレーンなブーメラン。最近のは百均でも三年保つ。糸星がたくさん絡み付いていて、犬にあげたら、尻尾を振ってよろこんだ。
uriko(サイトからの投稿)
生きてきて一番美しかったものはあの夜の星空だ。と母は言う。母も友も恩師も故郷のだれもが、あらゆる電灯が消えたあの初春の夜空の美しさを語る。神と人への呪いや喪失を抱えながら。夢見るように少し微笑んで。美しかったんだよ、と。あの日東京にいた私はそのたび静かに「そう」とだけ相槌を打つ。
uriko(サイトからの投稿)
星間旅行が当たり前になったころ天国が発見された。はるかかなたの太陽に似た星だった。ツアーチケットを運よく手に入れ宇宙船で天国へ近づくと友の顔が見える。こんなところにいたのですか。また来ます。ゆらめくフレア越しに手を振り合う。視界の隅で船から飛び出した乗客が幾人か炎に飲み込まれる。
uriko(サイトからの投稿)
仲の良い兄妹がいた。兄が妹のファミコンのセーブ記録を上書きし、妹は仕返しに兄のゲームボーイを破壊した。激しく争った二人は星座になった。妹のデコられたゲーム機は太陽に、兄の水浸しの液晶は月になった。やがてこの星が滅びた後も二人は喧嘩を続けて、1億年に一度マリオカートで決着をつける。
uriko(サイトからの投稿)
あの、鉄格子の向こうのひときわ輝く星に死体を隠したのです。と容疑者は刑事に囁いた。死体が見つからない以上あなたは私を逮捕できない。30年後、刑事は伴侶とその星にたどり着き、地表に遺棄された死体を見つけた。君は嘘をついていなかったと刑事は囁く。伴侶は笑って頷き、銃の引鉄に指をかけた。
かえれないカエル(サイトからの投稿)
あなたは知らないでしょうけれど
お酒を飲んだ後家まで歩いた
蛙鳴く畦道あなたと二人
横顔越しに見た星空を
私は一番覚えてる

あなたは知らないでしょうけれど
私がいなくなったのは
自分が怖くなったから

あなたは知らないでしょうけれど
私も知らなかった
5年経ってもまだ
こんなにもあなたを
uriko(サイトからの投稿)
少女は髪を切った。ただそうしたかったから。汗まみれでフィールドを駆ける女達は花の名で呼ばれた。ほかの言葉を持たなかったから。敗北した青年は泣いた。恩師を男にしてやれなかったから。星のように眩い勝利の影にひしめきあう呪いの言葉たち。少女は清しく髪を切った。ただそうしたかったから。
uriko(サイトからの投稿)
星の寿命が近づき、人類は星と肉体を捨てることにした。脳を小さな機械に移植して、宇宙船で月を目指すらしい。肉体がある内にファーストキスをすませちゃいたい。親友も同じ考えということが分かり私たちは海辺でキスをした。400度の海水が私達のスカートの裾を焼いたけど、彼女の唇はそれより熱い。
uriko(サイトからの投稿)
私たちは一人一つずつ対応する星を持っています。明るいあの人は赤い星で優しいあの人は白い星。私の星は肉眼では見えません。光を受けず暗闇の宇宙に埋没し、ゆっくり自転をしています。百年に一度朝が来る星。最近彗星が衝突して少し賑やかです。うるさいのが苦手な星なので心配して観察しています。
ねこまないネコ(サイトからの投稿)
方舟にはあなたを乗せましょう。それからあなたの愛する人と、信頼しあう仲間たち。そこに私はおりません。私自身は舟を作って、見送るまでが役割です。私を見ずに行ってください。私を知らずに行ってください。私の想いはそうやって、星の彼方に紡がれて、緩やかに穏やかに、溶けてゆくのです。
uriko(サイトからの投稿)
ママはお星さまなんだよ。幼い私に父が言い聞かせた言葉が比喩でなくただの事実だったとは。「愛した人が人間だったんだもの」と彗星の母ははにかむ。でも結局離れ離れなのだから、星と人の恋は成り立たないのだ。月のクレーターに制服のスカートの裾を広げてため息をつく。月が慰めるように月蝕する。
uriko(サイトからの投稿)
夜の海辺を散歩する。月と灯台が海に影を落とす。夏の潮風が突如花のような香を孕んだ時、熱帯雨林の果実を積んだ船が港に着いた。星の裏側、農夫の本日の食事は十分な量だろうか。問いかけはどこか空々しく、翌朝私は格安のバナナの恩恵を享受するだろう。南の原野に雪が降るかどうかも知らないまま。
uriko(サイトからの投稿)
星港の砂浜に魔女の遺体のかけらを埋めた。処刑の直後に星のように結晶したので、それを聖状で砕いたものを、私を含めた異端審問官たちが持たされた。残りのかけらは別の国に埋葬されるだろう。恐ろしい魔女が決して復活しないように。星港の町を見渡す。幼い私が彼女に拾われたのもこの町だったのだ。
uriko(サイトからの投稿)
その店は全ての本に空白のカバーをかけていた。好きな香りの本を選んで、と風変わりな店主が言う。雪の覆う花野か月夜の海で針を探すように本を探す。雨の香りの本に惹かれたが湿気は本に悪い。代わりにその影の本を選んだ。帰宅して本を開くと頁から星が落ちたので部屋の灯にした。時々磨いている。
ケロボン(サイトからの投稿)
銀河の末端に、とあるカフェがある。
そこのメニューは全て飲食できる星で作られている。
「ねえマスター、僕が作ったパフェを見てよ。」
「ああ。」
下から、星屑のフレーク
    雲のマシュマロ
    また星屑のフレーク
    天の川銀河の星のムース
    一等星で作ったソース
    流れ星のキャンディ
「上出来上出来。」
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