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三菱UFJ銀行、一律の賃上げ廃止へ

三菱UFJ銀行の労使は今年の春季労使交渉で、行員ごとの人事評価に基づいて賃上げ率を決める方式で合意する見通しだ。一律の賃上げ要求をやめることになる。今年の交渉ではトヨタ自動車の労組も個人の評価に基づく賃上げを要求する。人材の獲得競争が強まるなか、金融と自動車のトップ企業による成果重視の賃上げは産業界全体に影響を与えそうだ。

日本の労使による交渉は賃金水準を一律で底上げするベースアップ(ベア)を軸に議論されてきた。中でも銀行は出世にも年功序列的な慣行が色濃く残り、賃金も年齢に応じて上がる要素が大きかった。金融とIT(情報技術)が融合するフィンテックの普及に向け、優秀な人材に報いる賃金制度は大きな課題だ。

三菱UFJ銀は賃上げにも人事評価を反映させる仕組みを目指す。三菱UFJ銀の従業員組合は今年の交渉から年数%などのベア要求をやめ、給与と賞与を合わせた「支払総額」の要求に切り替える。総額の伸びのうち給与分は、評価に基づいて配分される形になる。

同行の給与は年功的な要素の強い「資格」と仕事の内容と評価で決まる「職務」で構成される。従来は資格部分が6割だったが、2019年4月からは職務を6割に逆転させた。さらに今後は同世代で同じ職務でも、前年の仕事への評価で賃上げ率が変わる。制度が長く続くと、能力に応じた賃金の差が大きくなる。上司や同僚の意見を基に評価を決める。

組合の執行部は2月下旬をめどに要求する総額などを固める。3月下旬に労使で合意する見通しだ。経営側も賃上げ方式の改定については受け入れる方針だ。

メガバンクのうち三井住友銀行とみずほフィナンシャルグループは今春の交渉で評価を反映するベアを議論する予定はない。ただ、三井住友銀は今年1月に新人事制度に移行し、30歳前後で最も高い評価の人は給与額が1割増え、評価が低い人は減るようにした。みずほも20年度から職務や成果に応じた新たな評価制度を導入する。成果によって年次と報酬が逆転しうる制度になるという。

総務省の労働力調査によると、金融・保険業の役員を除く雇用者は19年に約158万人。三菱UFJ銀は単体で約3万3千人の従業員がいる。メガバンクは新卒採用で優位だったが、最近はフィンテックの人材争奪が激しい。知名度の高い三菱UFJ銀が評価重視の仕組みで人材確保に動けば、他の金融機関も対応を迫られる。

産業界では労使ともに、優秀な人材には賃金を手厚く配分し、企業の競争力につなげるべきだとの認識が強まっている。トヨタの労組はベア単体の要求を示さない方針に転換している。本田技研労働組合は、月2千円のベア要求のうち月千円分を社員個々人の評価によって賃上げ原資を配分する「チャレンジ加算」制度に充てる方針を示した。

日本の賃金は賞与などの一時金から成果や能力を反映する仕組みが取り入れられてきた。給与と賞与の引き上げは将来の年金額も左右する。安倍政権になってからは政府が経済の底上げに向けた賃上げを要求し、18~19年は定期昇給とベアで2%台の賃上げが実施された。

参照記事:日経新聞


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