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第四次ベンチャーブーム?歴史から学ぶ本物のスタートアップ・起業時代

第四次ベンチャーブーム

第四次ベンチャーブーム?バブル?2013年からベンチャー投資額は右肩上がり。近年は企業業績の回復と投資家心理の改善により、ベンチャー市場に更なる大きな資金が流入。2021年に過去最高の8000億規模を達成。2022年は世界経済の変調により踊り場ではあるものの、JACAの最新調査(2022/12/26公開)によると、「増やす」もしくは「今まで通り」と回答した企業が9割を超え、「増やす」と回答した企業が昨年の41.9%から今年は43.2%に増加しています。

https://signal.diamond.jp/articles/-/989


https://jvca.jp/

とりわけベンチャー企業の中でも、急成長している、もしくは今後大きな成長が見込まれる技術やイノベーティブな取り組みをしている企業は「スタートアップ」と呼ばれ、未上場で時価総額1000億を超えるスターアップをユニコーンと呼び、そしてユニコーンの10倍の価値を付けるデカコーン、100倍でヘクトコーンという概念まで登場しました。

伴って、新規IPOやベンチャー企業のバイアウト件数も大幅に増加。「△△会社が〇〇億円の資金調達に成功」「VCとエンジェル投資家から数億の資金調達!」など景気の良いニュースが毎日のように伝えられているよう、スタートアップを取り巻く環境は近年で大きく好転しました。

これは政府の後押しに加え、VC(ベンチャーキャピタル)・VI(ベンチャーインキュベーション)・CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)・エンジェル投資家などの民間支援者が増加し、ベンチャービジネスを育成するエコシステムが急速に構築されつつある証拠でもあります。そして、この第四次ベンチャーブームの波に乗り遅れまいと多くの起業家が続々とスタートアップに挑戦しています。

過去のベンチャーブームから学ぶ

第四次ベンチャーブーム?・・ということは、当然過去に第一次~第三次がありました。そこで今回は「賢者は歴史に学ぶ」という名言に従い、過去の第一次~第三次ベンチャーブームに誕生した企業と著名起業家について調査。ベンチャーの歴史を年代別にまとめてみました。

それぞれの時代に誕生した会社が今現在どうなっているか?

これらを先人事例として位置付け深堀していくことで第四次ベンチャーブームでスタートした企業における「今後の歩み方」について様々なヒントが隠されているかもしれません。

そもそもベンチャーとは?

ベンチャー業界にいる人達には愚問ですが、そうでない人のために、まずはベンチャーの定義をおさらいしておきます。Wikipediaではベンチャーの定義を以下のように解説しています。

ベンチャーとは、企業として新規の事業へ取り組むことをいう。このような事業をベンチャービジネス(英:Venture Business)という。事業は新規に起業したベンチャー企業によって行われるものを指すことが多いが、既存の企業が新たに事業に取り組む場合も含む。

ベンチャー起業家は時代の変革期に誕生する傾向があるのですが、その第一期であり、ベンチャー黎明期(誕生期)とも言えるのは明治維新後。日本が近代国家として歩み始めた時代です。尚、ベンチャーという言葉が日本で使われ始めたのは1970年以降ですが、ここでは同じ意味合いの起業・創業事例を一括りにしてベンチャーと呼ばせて頂きます。

ベンチャー黎明期(前期)

ベンチャー黎明期(前期)は、明治維新を経て日本が近代国家としての道を歩み始めた政経変革時代。

この時代には、日本を代表する起業家(実業家)である渋沢栄一氏や三菱グループの創始者である岩崎弥太郎氏、NEC創設者の岩垂邦彦氏など、近代における日本経済の基盤を作った超有名&大物起業家がいます。

中でも渋沢栄一は、1873年に設立された日本で最初の株式会社である第一国立銀行(現:みずほ銀行)の頭取就任に始まり、金融・鉄道・エネルギー・サービス・メーカーなど500社以上の様々な業種業態の会社を設立した人物です。

現在も残っている代表的な大手企業を挙げると、エネルギーインフラ→東京ガス(当時は東京瓦斯)。金融→東京海上火災保険・東京証券取引所。メーカー→キリンビール・サッポロビール・大日本製糖・明治製糖、東洋紡績、王子製紙・日本製紙、太平洋セメント。鉄道インフラ→東京急行電鉄、秩父鉄道、京阪電気鉄道。建設→清水建設。その他サービス→東京商工会議所、澁澤倉庫、帝国ホテルなどがあります。

近代日本の経済界を作った人物であることから「日本資本主義の父」と呼ばれる元祖中の元祖の起業家です。

ベンチャー黎明期(後期)

ベンチャー黎明期(後期)は、年号で言うと大正から明治時代初期。時代背景は、第一次世界大戦を経て、第二次世界大戦の敗戦、そして戦後の焼け野原から復興を遂げていく時期です。

今では日本を代表する世界的有名企業や起業家がこの時代に続々と誕生。そしてこの頃から、いわゆる財閥資本ではなく、独立資本系ベンチャーが増え始めます。

戦前では、東芝の前身となる田中製造所を創業した「田中久重」。Panasonic(旧:松下電器産業)を創業した経営の神様「松下幸之助」。日本企業で時価総額一位のトヨタ自動車を創業した「豊田佐吉」。タイヤ世界シェア一位のブリヂストン創業者「石橋正二郎」。農業機器大手の日本首位クボタ創業者「久保田権四郎」など。

そして戦後には、家庭用血圧計の世界シェア50%を誇るオムロン創業者の立石一真。家庭用ゲーム機大手任天堂の「山内溥」。ソニー創業者の「盛田昭夫」・「井深大」。ホンダ創業者「本田宗一郎」。日用品の最大手である花王の「長瀬富郎」。調味料分野で世界に名をはせる味の素の「鈴木三郎助」。カップヌードルで有名な日清食品創業者の「安藤百福」。日本広告業界でダントツのシェアを誇る広告代理店大手の電通創業者「光永星郎」。村田製作所創業者の「村田昭」など。

これらの企業・起業家は高度経済成長期を牽引すると共に、日系ブランドを世界に知らしめる大きなきっかけとなった日本発・世界水準のベンチャー企業と起業家達です。

ベンチャー成長期(ブーム)

ベンチャー成長期(ブーム)の大きな潮流は合計4回で現在は第四次ブームにあたります。それまでにもベンチャーや起業家という概念はあったのですが、この頃から「ブーム」という言葉が使われるようになりました。

これは、開業率の増加というマクロ指標だけでなく、ベンチャービジネスや起業家に対する世間の認知度・注目度が向上した要素を追加。特に、第二次ブーム以降、マスコミがベンチャー企業や起業家をスターのような切り口で報道する風潮に因んでブームという表現が使われるようになったと言われています。

時代により開拓市場やビジネスモデルは科学技術や社会ニーズにより異なるものの、ブーム勃興、終焉を繰り返しながらベンチャーという文化や起業家の遺伝子は時代を繋いでいきます。

第1次ベンチャーブーム(1960年代後半~1970年代前半)

第一次ベンチャーブームは1960年代後半から1970年代前半と言われています。この時代は、高度経済成長期の真っ只中。池田内閣による国民所得倍増計画や田中角栄による日本列島改造論の提唱等、経済成長のエンジンとなるような政策が数多く打ち出されました。

更に、東京オリンピックや大阪万博などの経済特需もあり、1968年には国民総生産(GNP)が世界第2位まで急成長。

経済規模の拡大に伴ってあらゆる市場が成長する中、雇われない生き方・キャリアの選択肢として、脱サラ(サラリーマンを辞める意味)起業や学生起業家という概念が登場。彼らのキャリアとしてもベンチャービジネスに大きな期待と注目が寄せられました。

第一次ベンチャーブームに生まれた企業と起業家の代表例としては、日本マクドナルド創業者でソフトバンクの孫正義氏が影響を受けた起業家として有名な「藤田田」。民間警備会社最大手のセコム創業者「飯田亮」。家具通販の最大手ニトリホールディングスの「似鳥昭雄」。ゲーム・アミューズメント大手コナミホールディングスの「上月景正」。介護大手のニチイ学館「寺田明彦」。高収益体制のハイテクベンチャー代表格であるキーエンスの「滝崎武光」。精密小型モーターの世界一のシェアを誇る日本電産「永守重信」。ファミレスの元祖”すかいらーく”を生んだ「横川竟」。チケット販売大手の”ぴあ”の「矢内廣」。紳士服大手の”コナカ”創業者「湖中久次」など。

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