東京タクシービビッド

カメラの世界、東京から

一年前にカメラを買った。
きっかけはスマホの望遠に満足できなかったこと。
アップにするとどうしても画像が荒くなってしまう。
撮りたいものが、に口惜しさがあった。
自分の目で見た瞬間、景色を切りとりたいと思っても、ざらついた世界へと変換されてることに、どこかむずがゆさを感じていた。
そんなこんなで、カメラ購入にいたった。
そして、切りとる「瞬間」を探しに、東京へ向かった。



雲間から


その日は、早起きで眠かった。
だけど、スカイツリーを目の前にして、眠気はどこかへ飛んでいった。
東京に行くと決めてから、ずっと楽しみにしていたから、
展望台へと連れて行ってくれるエレベーターは加速を感じさせない。
それに反して、胸の鼓動の速まりは明らかだった。

空はあいにくの曇り模様。
もし晴れていたら、一面ガラス張りの世界は、どこまでも遠くを見せてくれそうな気がした。
ふと、雲の切れ間から差し込む太陽。
いつもより近い空から、何か降りてきそうな気がして、また鼓動が速くなっていた。

浅草寺

浅草寺は喧騒にあふれていた。
右も左も外国人観光客。
もう少し人の少ない場所へ移動することにした。
そして、ひっそりと奥ゆかしそうな雰囲気を探した。


ここは、東京。

東京での一日はすごくつかれた。
人ごみをかき分けるために体をくねらせたり、複雑な電車の乗換を前にたじろんだり。
それに、いつもテレビで見てる景色が目の前に現れるのは、ちょっと不思議な感覚だった。
スカイツリーに浅草寺。
あと、国会議事堂に、皇居。
自分だけ別の世界にまぎれこんでしまったようだ。

最後に訪れたのは渋谷。
ハチ公像に、スクランブル交差点。
一日の終わりも近かった。
朝よりも理解している。
ここは別世界なんかじゃないんだ、ということを。
ふと夕暮れの空を見上げ、確認するように頭の中でくりかえした。

「ここは、東京。」



大切な一瞬は、いつでもある。
そういう瞬間は、記憶の中にとどまり続けることも多いけど、次の日にはまるっと忘れていることもある。
短い時間で昇華していくのも素敵だけど、写真は「瞬間」の余韻を残す。
「こういう写真を撮りたい!」そう思ったときの気持ちとともに。
文章も一緒なんだろう。
見逃されてしまうような一瞬の感情を取り上げて、残すこと、そこに凝縮されるものがある。
誰かが忘れてしまったり思い出せなかったりする、いつかの感情を文章に閉じこめていれば、いつでも取り出せる。

きっと僕は、カメラにも文章にも通じる「巻き戻しできる世界」をつくれることに惹かれている。


#エッセイ #大学生#カメラ#写真#東京#スカイツリー#浅草寺




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