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北欧ウォーク 3 ロマンティック・バレエの博物館 コペンハーゲンの古典劇場 3つの王立劇場①  

コペンハーゲン最大の人気スポット ニューハウン 写真右外に古典劇場 正面奥の左手に演劇場、その対岸にオペラハウスがあります

ここに取り上げるのは、150年の歴史を持つバレエ中心の古典劇場、今世紀に建てられたオペラハウスと演劇劇場の3つ。どれも1673年に掘られたニューハウン港の近くにあります。
ミュージカルは、唯一の民間経営の新劇場(1908年建造)が専門に上演しています。ここで見た「オペラ座の怪人」は、わたしの中ではNYやロンドンのプロダクションよりよかったと評価しています。
どの劇場もシーズンは8月末から長くて6月初めまで。

王立古典劇場

劇場の中。女王は向かって左側の赤い椅子席からよく鑑賞される。カーテンには神話の世界。幕が開けば、中世のニンフたちが乱舞。甘味に満ちたしばしの夢

☆ つないでいくことの大切さ
旧市街の中、コンゲンス・ニュートー広場に面して1874年に建てられた劇場。近代になり、最大の観光地ニューハウンの入口、ストロイエ商店街の入口、デバート・マガジンの前、さらに地下鉄駅までできて、きわめて騒々しい場所になってしまいました。内部に入れば、屋外の音はきっちり遮断されていて、静かに芸術を楽しむことができます。
客席は5層になっていて、1300人が入れます。とはいえ、ルネッサンス調の古い建築なので、ところどころに柱が立っていて、見にくい席もあります。また、地球温暖化前の建築で冷房がないので、2023年のように熱い夏は、汗を拭きながらの鑑賞になります。この劇場はデンマーク王立バレエ団の本拠地です。このバレエ団は、バレエの博物館と呼ばれるように、19世紀半ばから後半にパリで生まれたロマンティック・バレエの様式や演目を守ってきました。柱になっているのは、19世紀に活躍した、コペンハーゲン生まれのフランス人男性ダンサーのオーガスト・ブルノンヴィル。「ナポリ」や「ラ・シルフィード」などの代表作を生みました。パリのロマンティック・バレエは衰退しましたが、デンマーク王立バレエ団はこれらの作品を自分たちの宝として頑なに守り通し、今日まで上演を続けています。ロマンティック・バレエのわかりやすい特徴は、優雅な舞い、長めのスカート (チュチュ)、つま先立ちの踊り(ポワント)、ストーリー性などにあります。

古典劇場の全景。右が正面入口。イタリア・ルネッサンス調の建築だそう

23-24年シーズンは「ラ・シルフィード」とジョージ・バランシンの「スコッチ・シンフォニィ」で開けました。バランシンは若い時にこの劇場で振付し、ブルノンヴィル作品から影響を受け、のちにNYのバレエを世界的ものにした立役者です。予想を裏切る動きで目をひきつけ、美しい世界を形づくってくれます。先達の世界をさらに高めて、みごとに継承してくれました。
9月、土曜のマチネーを楽しみました。暑さから逃れるように劇場を出ると、正面入口の前で、客席で見かけた10才くらいの女の子が数人、タイツをはき、チュチュをつけて舞っていました。「わたしたちはいずれここの舞台で踊るの、待っていてね」といっているような、かわいらしい演技でした。こうしてこの劇場のバレエは、次の世代へと引き継がれていくのでしょう。「しっかりね」の気持ちを込めて、小さく拍手しました。


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