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偶然の対義語は、必然ではない。(映画「偶然と想像」を観て)

「ドライブ・マイ・カー」の濱口竜介さんの話題作、ようやく映画館で観ることができました。3つの短編が通底したハーモニーが心地良く、幸せな気持ちに浸ることができました。(決して作品は「幸せ」がテーマというわけではなく、良い作品を鑑賞できたことのホクホク感です)

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偶然とは何か?

映画タイトルの通り、「偶然」というのが全ての作品に共通したテーマになります。どの偶然も「なぜこんなことが起こるのか」という感じで、だけどどこか「起こるべくして起こった」という必然性も感じられるような内容です。

偶然の対義語は、必然ではない。

生と死が対立概念でなく、むしろ紙一重であることと同じように、両者がふとしたことをきっかけに混じり合うような「奇跡」あるいは「危うさ」があるように感じます。

映画「ドライブ・マイ・カー」との相似

3作目「もう一度」で、占部房子さんが演じるあやが「自分の感情と闘わなかったことを後悔している」と吐露します。

映画「ドライブ・マイ・カー」で主人公の家福(演・西島秀俊さん)が、妻の浮気に見て見ぬフリをしていたことへの後悔と重なります。

監督を務めた濱口竜介さんは、会話劇が特徴だと言われます。だけど僕は、会話劇は単なるフックであり、会話で語られない部分(語られたとしても僅かしか言葉にされない部分)を印象的に見せたいのでは?と感じています。

語られた言葉の裏で、何が語られなかったのか。観る者の想像力が試されているように思います。

森郁月さんの色気

どれも楽しく鑑賞したのですが、個人的には2作目「扉は開けたままで」が好きでした。

森郁月さんが演じる奈緒が魅力的で、若者とのセックスに溺れる冴えない女性が、徐々に大人の色気をまとっていくシーン。渋川清彦さんが演じる瀬川の目線と重なり見入ってしまいます。

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モチーフとして重要なのは「」でした。

この扉は、いったい何を意味していたんだろう?

開けっ放しの扉、閉じられる扉、扉を突き破って共有される情事……。いまだに、なぜ扉は、ずっと開けたままにされていたのか謎のままです。

奈緒が読み上げるセクシャルな描写、もしかしたら扉が開けっ放しで外部と接続されていたからこそ、よりセクシャルに感じたのかもしれません。この辺りの解釈は、様々あることでしょう。

森郁月さん、これからの作品も楽しみです。

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