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50歳を迎えて、多角的に自分を表現したいと思った〜宮本浩次「ROMANCE」〜

言語化するのが憚られるほどに、素晴らしい作品でした。

あっぱれ、宮本浩次!

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エレファントカシマシのフロントマン・宮本浩次さんが、カバーアルバム「ROMANCE」を2020年11月18日に発売した。自身初のカバーアルバムは全編女性歌手の楽曲を取り上げている。(Apple Musicはこちら、Spotifyはこちら

男性歌手が、女性歌手の楽曲をカバーすることは珍しいことではない。だがカバーアルバム全て女性歌手の楽曲で構成されているというのは僕の記憶にない。宮本さんのキャリアを考えても極めて珍しいと言えるだろう。

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コンセプトの明快さが話題になるだけでなく、作品の素晴らしさゆえにしっかりとヒットとなっている。歳を重ねるごとに表現力が高まっていく宮本さんの円熟味は驚くばかりだ。

「コロナ禍で時間があったため、1日1曲以上カバーすることを自分に課した」というエピソード、逆境をポジティブに捉えて「作品」として形にする姿勢は見習いたい。

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僕は、わりと満遍なく本なり音楽なりに触れていたいという想いがある。

だが振り返ってみると、自分が想像するよりも同性(=男性作家)の作品に接する機会が多かった。

以下は、読書をする男性にアンケートした記事だ。「あなたの好きな作家は?」という質問があり、男性作家を挙げた回答が大半を占めている。

この点、正式な統計もないし、無理やり一般化するつもりはない。

だが「無意識に同じ性別の作家を読んでいる / 聴いている」といった傾向を持つ人は、それなりに存在するのではないだろうか

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先に紹介した日本経済新聞のインタビューで、宮本さんは「50歳を迎えて、多角的に自分を表現したいと思った」「女性のピュアな感情が胸を打つ曲ばかりで、歌いながら号泣した」と語っている

言うまでもないが、現代において「男性らしい / 女性らしい」という表現は不適切だ。

従来の環境(周囲の価値観を含む)が「そうさせている」だけで、実際のところ「男性らしい / 女性らしい」行為や価値観なんて、何一つないはずだ。

そんな中で敢えて思うのは「自分の性とは異なる感性」の存在は何かしら存在していることだ。折に触れて、その感性が、僕の中をふと通過することがあるのだ。

ジェンダーの垣根を超えた精神性は普段は眠っているのかもしれない。何かのきっかけに目を覚まし、価値観を軽く揺さぶるような経験 / 感覚を引き起こす。その経験 / 感覚に意識的であることは、芸術に携わる携わらないに関わらず大切なことで。普遍性を帯びる類の「バランス感覚(≒知性)」とも言えると僕は考える。

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愚論を重ねてしまったが、理屈抜きで「ROMANCE」は素晴らしい作品だ。まだ聴いていない方は、ぜひ宮本さんの歌唱に耳を傾けてほしい。(Apple Musicはこちら、Spotifyはこちら


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