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「松本人志」という器を利用する(「松本人志と世界LOVEジャーナル」を観て)

NHKで今秋放送となった「松本人志と世界LOVEジャーナル」。今のところ実験的な特番という位置づけだが、制作に関わったスタッフたちの気概を強く感じた。プロデューサーは神浦奈津子さん。

松本人志さんといえば、言わずと知れたトップ・オブ・トップのお笑い芸人。本人は「カリスマ」と呼ばれるのを嫌がるが、彼の芸に憧れを持った人間は数多いだろう。それは「お笑い」というジャンルを超え、クリエイティブに関わる人にさえ影響を与えている。

ただ、最近の松本さんの言動は、手放しで称賛されているわけではない。

テレビの発言を取り上げられ、非難を浴びることも少なくない。確かに松本さんが31歳のときに書いた『遺書』という本には、今読み直すと、首を傾げるようなエピソードが少なくない。書籍に限らず、過去の映像からは、いわゆる女性蔑視といわれても仕方のない表現も積極的に行なっている。(実際、そのことでキャスティングとして不適切だという批判もSNSでは飛び交っていた)

だが、僕はそんな松本さんだからこそ、この番組のキャスティングには最適ではないかと思っている。

伊集院光さんでもなく、タモリさんでもない。

良くも悪くも、わりと独自の価値観を持ち続けている松本人志さんだからこそ、性教育を学ぶことによって、偏見や先入観をアンラーニングできるはずだと思うのだ。

松本さんは今年9月に還暦を迎え、5年もすれば「前期高齢者」という見なされる。と同時に、晩婚だった松本さんには10代のお子さん(女性)がいて、父親としての顔も持っている。どんなふうに「性」に向き合っているのか、またお子さんに対して「性」を語るのか、非常に興味深く、そして番組も概ね良かったように思う。

一部の発言だけを取り上げると、「それはナシだよね」と感じることもある。ただ発言内容だけを取り上げ過ぎてしまうと、「アンラーニング」や「リスキリング」といった行為そのものを否定することにもなりかねないのではないか。番組には講師役といった存在はいない、監修として性教育に詳しい高橋幸子さん、取材協力には村瀬幸浩さん、リヒテルズ直子さんが名を連ねていた。おそらくスタッフも番組づくりを通じて学びを深めたことだろう。

出演者のひとり、鈴木涼美さんは最後にこんなことを言っていた。

人間、正しいものを愛するわけではない。正しいものに興奮するわけでもない。正しさを教えると、正しさから外れたものが差別・排除される。教えるとしたら『正解』ではなくて、『多様性』。『世界で私だけがおかしいわけではない』ということは教えられるのではないか

どの学問もそうかもしれないが、性教育から学べるのは、性に関する正しい知識だけではない

人間のこと、コミュニケーションのこと、他国との文化の違い、思い込んでいた知識のアップデート……。

テーマもそうだが、NHKということもあり、最初から最後まで出演者は番組のテンションを掴みかねていた。それでも、ときどき溢れる本音には頷くこともあったし、それがよもや偏見のひとつであることも自覚できた。

番組の評判はどうだったのだろう。

一回限りの特番でなく、ぜひ同じ出演者でシリーズ化してほしい。

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3年前に、村瀬幸浩さんの著書『おうち性教育はじめます』の感想をnoteにも記しています。子どもを持つ親は必読の一冊ですので、よければnoteと併せて読んでみてください。

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