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オペレーションの手間をかけてまで、アップサイクルを加速させる理由は何か?

アップサイクルのアプローチで課題解決を図ろうとする取り組み、少しずつ増えてきましたね。

後述しますが、この取り組みは「モノを売る」ことを目的にしていないんですよね。より大きなビジョンを描いていることが素晴らしいですし、お客さんの共感を得られるものだと思います。

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自社ブランドのバッグ「SEAL」の企画・開発などを手掛ける株式会社モンドデザインが使用しなくなった傘のビニール部分を買い取る「Umbrella Recycling Program」を発表した。

廃棄されたビニール傘をバッグなどに再利用するブランド「PLASTICITY」に活用するようだ。

ソトコトオンラインの記事に書いてある「思い」にも共感する。

クリエイターの齊藤明希さんと共同開発したブランド「PLASTICITY」は、廃棄されたり忘れ物として保管期間が過ぎたビニール傘をバッグなどにアップサイクルし、プラスチックの廃棄問題が近い将来に解決されるという思いを込めて「10年後になくなるべきブランド」を宣言して2020年4月より販売を開始しました。
(ソトコトオンライン「廃棄ビニール傘のアップサイクルバッグ「PLASTICITY」 不要な傘ビニールの買取を開始」より引用、太字は私)

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公式サイトの商品ライナップを見ると、素人目にも、かなり洗練されたデザインだと分かる。国内工場で、熟練した職人によって手作業で生み出されており、サステナビリティという言葉に胡坐をかくことなく、丁寧なモノづくりにこだわっていることが分かる。

代表取締役の堀池洋平さんは以下のようにコメントしている。

──御社の製品を購入する方は、サステナビリティを意識しているとおもいますか?
堀池:お客さまは、たとえば防水性の高さなどの機能面やデザインのユニークさで購入されていて、「あ、実はエコな製品なんだね」という方が大多数だと思います。でも、使っていくうちに、周りの方に「この製品の素材は何だと思う?」という話題になって、ショップにご家族や友人を連れてきてくれることが多いのもSEALの特徴だと思います。
──確かにそうやって身近で使ってみて、サステナビリティを感じることはありますね。自分もフライターグのバッグをたまに使いますが、使っているとリサイクル、リユースということを意識します。
堀池:それでいいと思います。私たちが取り組んでいることは、リアルな環境問題への貢献という意味では数値的には微々たるものだと思います。でも、使うことで「意識を伝える」ことはできる。そういう役割になれればうれしいですね。
(FORZA STYLE「廃タイヤをリユースするブランドと考える“サステナビリティ”の理想と現実」より引用、太字は私)

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ここ1, 2年の間に、ファッション業界では、サステナビリティやSDGs、エシカルなどの言葉が爆発的に増えてきたように感じる。実際のところ「持続可能性や環境に配慮している」と喧伝したサービスやプロダクトもかなり目にするようになった。

だが(だからこそ?)、商品のクオリティと会社のビジョンのバランスが重要になり、両立しているブランドでないと生き残っていけないのが現状なのかもしれない。

・環境への配慮を怠っていると消費者にそっぽを向かれる
・商品の質が高くないと消費者に選ばれない(いわゆる「コスパ」で勝負すると、大手のファストファッションには敵わない)

ただ、バランスが大事とは言え「なんでこの企業が服やバッグを作っているんだろう」という点が企業の原点であり、存在意義だと僕は確信している。

服が余りまくっている時代に、そこを説明できない企業はなかなか厳しい。

オペレーションの手間を考えると「傘のビニール部分1枚につき100円分のポイントで買い取る「Umbrella Recycling Program」」というのは、あまりに無駄が多く、無謀な打ち手だ。そこから素材として切り出していく手間は膨大で、並の経営者はこのプログラムに踏み切ることは決してできないと感じる。

だけど彼らは、本気で10年後にプラスチック傘をなくし、「PLASTICITY」というブランドをなくそうと思っている。だからこそ決断できる打ち手であり、ここに企業や経営者の本質を見ることができるのだ。

「NO FINDER, future」というマガジンを運営している僕も、「それは本質なのか」という審美眼を磨き続けなければいけないなと、改めて感じた。ほんとに、自戒を込めて。




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