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フィクションに留まるか、現実を生きるか。(映画「パーム・スプリングス」を観て

2021年4月公開の「パーム・スプリングス」、めちゃくちゃ良かったです。

映画界には数多くの、タイムリープ / タイムトラベル / タイムループ系の作品がある。日本で一番ヒットしたのは、新海誠さんの「君の名は。」だし、今年は「ブラッシュアップライフ」もそれなりに話題になった。メタファー的な意味でのタイムリープまで含めると、枚挙にいとまがない。

言うまでもなく、タイムリープ系映画は、「時間」が演出上の装置として活用されていく。時間を可変なものとして扱えるならば、現実ではあり得ない「もし」を扱うこともできる。

もし、私があそこで〜〜な行動をとっていたら。

「もし」が可能ならば、人生のやり直しも効く。(「やり直さない」という選択もアリだ)

「イマココ」の人生もあながち悪いものじゃない。現実はやり直せないんだから、一度きりの人生を最大限楽しもうぜというメッセージが伝わりやすいのだ。

*

そんな「パーム・スプリングス」の面白さは、タイムリープされる人生も悪くないんじゃない?と思えるところにある。

サラは結婚式の前日に、妹の婚約者と不貞行為をしたという後ろめたさがあるけれど、基本は「自由」を満喫できる立場にある。

実際ナイルズは爽やかな言動もあいまって(タイムリープすると分かっているから、何事も大胆に行動できるのだ)、タイムリープを繰り返す中でたくさんの女性と文字通りのワンナイトラブを繰り返していた。

サラも自分に自信はないものの、基本的に自由を満喫できる立場にある。なんたって目覚めたら結婚式の朝、前日までバカンスを楽しんでいた環境で、とびきりのバカ騒ぎができる。

空き家にあるプールに忍び込んで、ピザの浮き輪を浮かべてビールを飲む。空き家の住民は帰ってこないのが分かっているから、その日はセカンドハウス的に好き放題できるというわけだ。同じ境遇の気の合う男女。「現実の苦しい日々に戻らなくても良いじゃないか?」と思えてくるけれど、サラは違っていた──

という流れだ。

エンディングも「それなら納得!」という結末に。

サラの立場にもナイルズの立場にもなりながら、どちらにも深く感情移入できてしまうから不思議だ。

タイムリープするなら、ひとりよりもふたりの方が良い。共に苦難を乗り越えた先に、新しい人生の扉が開かれている。これもまた現実世界のメタファーなのかもしれない。

……ははーん。さては、宮﨑駿さんも「君たちはどう生きるか」の前に、「パーム・スプリングス」観たんじゃないか?なんてね。

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