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寿命の換金(「パラダイス〜人生の値段〜」を観て)

2022年、映画「PLAN 75」に感銘を受けた。

映画テキストサイト「osanai」でも取り上げたし、色々なところで話題にしたように思う。

そんな中、Netflixで新しいSF映画が公開された。タイトルは「パラダイス〜人生の値段〜」。原題は副題なしの「Paradise」である。

この物語のベースは、遺伝子やDNAなどの研究が進み、寿命の受け渡しができるようになった社会だ。「技術によって寿命が伸びる」のでなく、ドナーとよばれる適合者が現れれば、そのエキス(のようなもの)を抽出し、寿命の交換ができるというもの。

勘の良い方は、「パラダイス」で描かれている社会とは、富裕層と貧困層、つまり持つ者と持たざる者のメタファーであることを読み取れるだろう。「パラダイス」では難民も描かれており、市民権を得るために必要なお金を、寿命を売って調達するというシーンが映されていた。

「パラダイス」は、「PLAN 75」のように社会問題を真正面から取り上げただけではなく、そこから人間の心理戦、即ちサスペンスの領域へと進んでいく。「正しさとは何か?」だけでなく、極限状態に立たされたとき、人はどんな選択をするのかという“現実的な”イシューも突きつけられるという構図だ。

大義を掲げた人間は、どこかで致命的に狂ってしまうことがある。

それはミッションやバリューを掲げて会社経営する人間や組織にも、同じことがいえるのではないだろうか。話題に上がらない日がないJ社やB社、そして東京オリパラの汚職事件に関わっていた各社は、大義を守ろうとするがあまり、「切ってはいけない木」を切り落としてしまったのではないだろうか。

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しかし、ローン返済に自らの寿命を担保に入れてしまう(入れることができる)世界って、めちゃくちゃ恐ろしいですね。裁判をはじめ、刑罰の執行もものすごく迅速で、いくらテクノロジーが進んで便利になったとしても、こんな世界は御免だなと感じました。

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ランキングTOP10にも入っていたので、既に鑑賞している方もいるかもしれません。こういう作品が上位に食い込んでいると嬉しくなります。

主演のコスティア・ウルマンさんは初見でしたが、気になる俳優になりました。こういう「追い込まれる系」俳優って、映画で重宝されますよね。

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