新人キャピタリストの動き方・その4(CVC編)

私の社内向けブログをnoteで公開する企画も第四回に突入しました。キャピタリストになりたての方に私が業界の先輩方から学んだこと、当時のもがき苦しんでいた頃のエピソードなどを中心にお届けしていきます。

今日は「盛り上がったのに自然消滅してしまったイベント」と、「そこで感じた反省と今に活かしていること」についてです。


前回から続いているイベントの話の続きです。

キャピタリストになってから重い腰がなかなかあがらなかった私ですが、小澤さんの協力もあってようやく自分でイベントを回すことができました。無責任コンサルは試験体となる起業家が受けるコンサルの内容がコントロールできないのと、会によっては主催者の狙った効果を得るのが難しい日もありました。もっと頑張って続ければ良かったのですが、自分の性格の飽きっぽさもあってやり切らずに自然消滅してしまいました。一番駄目なやつです。

YJキャピタル(現Z Venture Capital)で半年以上仕事をした後、社内で次回の提携・出資説明会をどうしようか、という話題が挙がりました。提携・出資説明会とは、ヤフーが開催したオープン型のイベントです。ヤフーの各部門の事業責任者とスタートアップをマッチングするイベントで、第1回は2013年2月に開催されました。

参加条件はヤフーとの提携や出資受け入れを考えており、ウェブサイトを持つベンチャー企業としているが、「スタートアップから大企業まで、幅広く協業の可能性を検討したい」(YJキャピタルCOOの小澤隆生氏)としている。日本向けのサービスを展開する海外企業も対象とする。1社2人まで、75社150人規模での開催を見込む。

cnet記事より

当時の記事には下記のような記載もありました。

積極的な提携や買収、投資を進める一方で、ヤフーの課題になっているのが対外的な「窓口」が明確化されていないことだという。これまでの提携や買収は、経営陣らがその人脈を通じて発掘するケースが中心。YJキャピタルに至ってはウェブサイトもなく、小澤氏らに直接連絡できない限り、コンタクトが取れない状況だ。

cnet記事より

YJキャピタルに至ってはウェブサイトもない、と書かれていますね(笑)

私が入社する前に実施されていたイベントでした。第1回は75社150人の受付に対して応募が殺到し、最終的に2日間開催に切り替え、計250社が来場し大盛況だったと聞きました。第2回は私とヤフーのCEO室が企画・運営を任されました。上司からのオーダーは前回の倍以上の規模で、というものでした。会場手配、コンテンツ制作、登壇者アサインなどヤフーのCEO室と一緒に準備を進めていきました。早速下記の開催予告もCnetに掲載されました。

提携・出資説明会は第2回も応募が多かったです。第1回はオフィスのセミナールームを使いましたが、第2回は外部の大型ホールを借りて開催しました。余談ですが、YJキャピタルのプレゼンを来場者向けに小澤さんが登壇する予定がありましたが、当日小澤さんがインフルエンザに罹患し、小澤さんの代わりに私が緊急登板することになりました。300人か400人の前でプレゼンするのは初めての体験だったので、とても緊張したことを今でも覚えています。楽しい思い出です。

提携・出資説明会は応募数を獲得するにはとても効果はありました。第1回と第2回で合わせて600社近く合わせていただき、オンライン英会話サービスのレアジョブさんにYJ1号ファンドからご出資させていただきました。しかし、応募企業の質が担保できない、という問題がありました。なので、結果的にマッチングの成立率が低かったです。投じている時間とお金の割にマッチングが生まれにくいという問題を踏まえ、第三回は開催しませんでした。その代わりに新たに考えたのが「ヤフーベンチャーピッチ」でした。

7月下旬のある晩、東京ミッドタウンのヤフー本社セミナールーム。ベンチャー企業3社のプレゼンテーションに約30人のヤフー社員が聞き入っていた。聴衆の多くは、ヤフーの各サービスの責任者や、他社との業務提携などを考える事業推進担当者。多忙な業務の合間を縫ってやってくるほど優先順位の高い、ヤフーグループ社員限定のイベントだ。

東洋経済ONLINEより

真剣に事業開発を考えているヤフー社内の各事業部の新規事業担当者をセミナールームに呼び集め、スタートアップ3社に10分ずつプレゼンしてもらい、事業提携の可能性について議論する、というフォーマットでした。最初はYJキャピタルの支援先や、過去に自分が面談したことのあるスタートアップに声がけをしました。しばらく回を重ねると、自分の持っているネタが尽きてしまいます。知り合いのVCに声がけし、御社のポートフォリオ企業でヤフーと提携したい会社があったら紹介してもらえませんか、と聞いて回りました。直近資金調達に動いている会社を紹介してもらうアプローチ以外に、ヤフーと提携したい会社を紹介してもらう方法が新たに加わりました。

LINE Ventures(現Z Venture Capital)も出資しているPhotosynthはこのヤフーベンチャーピッチに登壇してもらった企業のうちの一社です。プレゼンを見たYJキャピタルのメンバーやヤフーの事業部の方から高評価を得たのをきっかけに投資委員会をすぐに開催して、YJキャピタルよりシリーズAラウンドに出資することができました。

会を重ねる毎に、事業部の責任者の方の参加率にばらつきが出始めました。メディアカンパニー、ショッピングカンパニー、決済金融カンパニー、新規事業部門から事業開発マネジャーを招待していたのですが、自分たちの事業領域と関係ないスタートアップのピッチを黙って座って聞いているのが時間の無駄と感じる方がいらっしゃいました。各事業部の方からはスタートアップとの接点を持ち続けたいと熱いリクエストをいただいていたので、私自身はヤフーベンチャーピッチの価値を感じていましたが、業務が忙しくなってきたことから開催頻度が徐々に落ちてしまい、無責任コンサル同様に自然消滅してしまいました。反省することばかりです。

しばらくお休みしていたのですが、名前を変えて2020年から再開しました。新たなイベントの名前はZピッチにしました。ヤフーは2018年にホールディングス体制に以降しました。YJキャピタルは引き続きヤフーの100%子会社でした。Zホールディングスから見ると、孫会社になります。親戚には、PayPayや一休、アスクルといったグループ会社がいました。なので、ヤフーの事業部門を対象にしたイベントから、各グループ会社の新規事業担当者に対象を拡大しました。また、2020年にはコロナ感染症が拡大したこともあり、Zピッチはオンラインを中心に活動しました。

こちらも具体的にスタートアップとZホールディングスグループ企業との協業が発生するなど、いくつかの手応えはありました。Zピッチから派生したSBピッチが誕生したのもこの頃です。Zピッチに比べるとSBピッチは運営しながらも手応えを強く感じるものでした。理由は簡単で、SBピッチの登壇企業はSaaS企業をメインにしていました。また、ソフトバンクからは法人営業部隊の方がピッチ参観して、自分たちの法人顧客にどのSaaS企業のサービスをクロスセルできるか、という視点を持っていました。目的が明確だったのです。Zピッチは参加者の事業領域がバラバラなので、自分たちのサービスにとって興味のないスタートアップのプレゼンを聞くことになるので、参加者の満足度が落ちてしまうのです。なので、今後同様の活動を続けていくなら、SBピッチに続いて一休ピッチ、ZOZOピッチ、アスクルピッチ、LINEメッセンジャーピッチのように特化したイベントにしていくとよりエッジが効いて、参加者双方にとってマッチング率が高くなるイベントに昇華できると考えています。

こういう学びも回数を重ねたり、様々な企画を実行してからわかったことです。今読んでみると当たり前のことじゃないか、と感じる方はいらっしゃるかもしれませんが、言うは行うより易しですね。やらないとわからないことが沢山あるのです。

あと、集客は課題ですよね。広告を使ったら簡単なのかもしれませんが、なかなか上司が首を縦にふって了承してくれるとは思えません。メディアに掲載してもらおうにも、新人キャピタリストだと、そもそもどうやったらメディアが記事にしてくれるかもわかりません。キャピタリストって投資実行やポートフォリオ企業のサポートがメインじゃないの?って思う方もいらっしゃると思うのですが、メディアリレーションも大切な能力のひとつなんですよね。2014〜2015年頃は重視していませんでしたが、今だったら誰もがTwitterでしょ、って答えると思います。なので、Twitter、頑張ったほうが良いな、というのが私が感じたことです。有名なキャピタリストでTwitterやられていない方もいらっしゃいますが、無名な方にとっては試しにやってみるのが良いと思います。やっていると、どういう投稿だと数字が伸びる・伸びないということがすぐにPDCAで確認できます。B2Cのサービスに投資するキャピタリストであれば、持っておいて損はない感覚だと思います。

新人キャピタリストでトラックレコードがなくても、フォロワー3万人います、ってなったらそこらへんのシニアなキャピタリストの方よりも起業家は熱心に話を聞いてくれるかもしれません。ただし、相互フォローとかで、コミュニティと関係ない方のフォロー数を積み上げても意味はないので、そこはご注意くださいね。

CVCでTwitterを頑張られている方が少ない印象を持っています。会社のポリシーもあってなかなか難しいのかもしれません。個人アカウントが難しければ、会社アカウントでも良いと思います。情報を発信すると、起業家の皆さんの目に入ります。「あ、資金調達の相談、あそこにもしてみよう!」という流れになります。イベントの相談も増えます。きっかけは自分から作らないと!

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