見出し画像

サッカーに焦がれて沖縄へ 浦和レッズのキャンプとBリーグの試合に行ってきた

サッカーのない週末なんて

いよいよ今週末、ルヴァンカップのグループステージで、浦和レッズの2020年シーズンが幕を開ける。

12月上旬のJ1最終節から2か月以上のオフ。

選手にとって、オフは戦い続けた体を労り、次の1年に向けての英気を養う大事な時期だ。

しかしサポーターにとって、オフは寂しさが募る。

日常を彩っていたものがそこにない。

この世界は色を失ってしまったようだ。

サッカーのない週末なんて、もはや週末ではない。

オフの心のオアシス

公式戦はなかったが、チームは年明けに始動している。

新加入選手の入団会見から、毎年恒例の調神社での必勝祈願を済ませたら、沖縄でのトレーニングキャンプに旅立った。

物理的な距離はできるが、クラブ公式に加え、浦議浦レポ浦研プラスレッズプレスといったメディアが連日報じてくれた。

練習メニュー。選手コメント。宿舎での部屋割。キャンプ地の名物。

金に糸目をつけずに巡回すれば、実に様々な情報が手に入った。

この溢れんばかりの情報の泉は、オフの渇きを潤してくれた。

サッカーのある週末を取り戻す

この時期に流れるニュースには、期待や希望、高揚感、そして少しの不安とが入り混じっている。

日々それらに触れていると、心の奥底にしまっていた想いが湧き上がって来る。

サッカーが見たい。

チームの仕上がりをこの目で見たい。

浦和レッズは、2月3日の月曜日から、1週間の2次キャンプが予定されていた。

最終日となる日曜日には、トレーニングマッチもあるかもしれない。

よし、沖縄へ行こう。

サッカーのある週末を取り戻そう。

丁度良さ

金曜日の夜、定刻から少し遅れて那覇空港に降り立つ。

空港から外に出たときの第一印象は、丁度良い

夜というのもあるが、暑過ぎず、寒過ぎず、とても快適だ。

空港と市街地はモノレールが結ぶ。

10分と少しも乗れば、宿をとった国際通り付近に着いた。

国際通りは、名前の通り、どことなく異国の香りが混じっている。

いい時間だったが、小腹が空いていたので、沖縄そば屋の暖簾をくぐった。

ダメだとわかっていても拒めないのが〆のラーメン。

しかも沖縄そばはスープに油分がなく、あっさりしている。

だからカロリーゼロ、とは言わないが、とても丁度良い

画像1

東風平の風

練習場である東風平(こちんだ)運動公園まで、那覇から車で30分ほど。

9時15分からの練習に間に合うように、8時半過ぎには市内を出る。

小高い場所にあるので上っていくと、風にはためく赤い旗が遠くに見えてくる。

この日の晩に訪れた那覇の居酒屋で、「あんな田舎でサッカーやっているの?」と女将に言われた。

多分に個人的な感想を含んだ問いかけだが、間違っている、とも言い切れない。

辺りに高い山や建物はなく、吹き抜ける風は想像よりも強かった。

画像2

画像3

画像4

画像5

ボールは友だち

土曜日の午前の練習は軽め。

ウォームアップのあと、11対11とセットプレー。

11対11は、5分くらいの短いものを数本をこなした。

選手の組み合わせは様々で、チーム全体のベースアップという趣だった。

また、練習後には地元の子どもたちと交流。

短い時間だったが、彼らがサッカーを、浦和レッズを、もっと好きになってくれたら良い。

個人的に印象に残ったのは練習前のリフティングゲーム。

選手たちが、本当に楽しそうにボールを蹴っていた。

画像6

画像7

画像8

画像9

画像10

読みが的中

実は金曜日の夜に、土曜日の午後が非公開になったと発表されていた。

午後練が非公開というのは、翌日がトレーニングマッチというサイン。

これはきた、と正直思った。

果たして、午前の練習のあと、スタッフからその場でアナウンスがあった。

日曜日は10時キックオフ。

相手はFC琉球。

小野伸二がいる。

最高の組み合わせだ。

だがしかし、これも半ば予想していた。

今季最初のトレーニングマッチは、高原直泰率いる沖縄SVが相手だった。

小野も高原も、浦和に縁がある。となれば、FC琉球もあるのではないか。

読みは、悪くないだろう。

画像11

沖縄にはバスケがある

時を戻そう。

旅の準備をしていた時、槙野選手のインスタである写真が目に留まった。

背景はバスケットボールのコート。

どうやら琉球ゴールデンキングスの試合を観に行ったようだ。

冬の沖縄というと、サッカーと野球のキャンプのイメージだったが、今の沖縄にはバスケがあった

実は前々からBリーグは観に行きたいと思っていたが、贔屓がない分、どのチームの試合にしようか決めかねていた。

まさに渡りに舟。

ちょうど週末にホームゲームがあった。しかも場所は豊見城(とみぐすく)。

本拠地の沖縄市は那覇から少し距離があるが、豊見城ならお隣だ。

迷わず、土曜日の夜のゲームのチケットを確保した。

市民とプロ

バスケを生で観るのは20年以上ぶりだ。

豊見城までは車で向かったが、試合会場の駐車場に限りがあり、近くのビーチの駐車場に案内された。

駐車場からシャトルバスに揺られると、豊見城市民体育館に到着。

市民という名前からもわかるように、至って普通の体育館だ。

一見、プロスポーツの興行が行われるようには見えない。

画像12

しかし中に入ると、閉じた空間ならではの音と光の演出で、市民がプロに様変わり。

ゴーゴー、キングス!

ディーフェンス!

シンプルな応援パターンで会場全体を巻き込む。

試合前には、ちゅらトマトをたずさえた豊見城市長や、絶賛放送中のドラマの主役、安全第一大知マンが登場。

画像13

画像14

またハーフタイムやタイムアウトにはチアリーダーが出てきて盛り上げる。

個人的には、限られた時間内に大量のスポンサーのパネルを紹介していくオペレーションがとても興味深かった。

こうしたコンテンツを入れ込む間があるのもバスケの特徴だ。

画像15

しかし、一番プロを感じたのは実は試合前の練習だったかもしれない。

サッカーでも、スタジアムで観ると選手たちのキックやトラップの精度に感嘆する。

キングスの選手たちのシュートは全く落ちず、次々とリングに吸い込まれていった。

画像16

個の魅力

バスケに疎い僕だが、アレン・アイバーソンは好きだった。

先日不慮の事故で亡くなったコービー・ブライアントと競い合った名手。

小柄ながら際立ったスキルを持ち、大男たちを翻弄するのが痛快だった。

それを思い出させてくれたのが、キングスの司令塔、並里成(なみさと・なりと)選手。

ファンタジスタとも呼ばれているようだが、実際プレーに華があり、惹きつけられた。

サッカーよりバスケの方が個が目立つが、「個の能力を最大限に発揮する」のは、今季の浦和レッズでも重要なテーマだ。

FC琉球戦でもその一端は垣間見え、マルティノス、汰木、山中、荻原などが良い動きをしていた。

また、観客の少ないトレーニングマッチだからこそわかった個の能力もある。

GK西川周作とDF鈴木大輔。

今季からキャプテンと副キャプテンに就任した二人だが、共通するのはコーチングだ。

単純に発している声の量も多いのだが、何よりその範囲が広い。

西川が、ディフェンスラインのもう1つ前、サイドハーフまで指示を出していたのには驚嘆した。

感情のゲージ

FC琉球戦は、45分×4本の合計4対1で勝利した。

その前夜、キングスは78対60で富山グラウジーズに勝利していた。

2連勝もさることながら、スコアを並べてみると際立つことがある。

得点機会が大きく違う。

常に点が動いているのも、バスケの魅力のひとつだ。

試合中、盛り上がる瞬間が沢山ある。

しかし、キングスのゲームの途中、つくづく僕はサッカー中毒だと感じた。

サッカーで点が入ったときの感情の爆発に慣れ過ぎているからか、バスケで点が入ったときの盛り上がりが物足りなく感じる瞬間があった。

例えるならば、格闘ゲームで、ゲージが満タンになったら凄い技が出せるところを、少し溜まったらすぐに使っている感じとでも言おうか。

あくまでそういう違いにあらためて気づいただけで、どっちが良い悪いという話ではない。

ただ、その視点から言えば、今の浦和が掲げる「前向き、積極的、情熱的なプレーをすること」というコンセプトも大事かもしれないと思った。

キャンプでも、前向きのベクトルは共有しつつあることが感じられたが、縦への速さは、スタジアム全体で感情のゲージを溜める効果があるかもしれない。

ゴールの臭いが感じられなければ、拙速に見えてしまうと思うが、楽しみな部分でもある。

二分咲きの桜

旅の終わりに、八重瀬公園に立ち寄った。

城(グスク)があった小高い場所で、あたりを見渡せる。

桜まつりの最中とのことだったが、咲き具合はまだ一分か二分かという程度。

満開にはほど遠い。

しかし、春が近づいていることは感じさせてくれた。

今の浦和レッズも、ちょうどそんな感じだ。

完成度はまだまだだが、示されたコンセプトは表現できているように見えた。

大槻監督は、今は幹をつくり、徹底しているところだとキャンプを振り返っていた。

そしてこれから枝葉をつくっていくと。

おそらく時間もかかるだろうし、すんなりといかないかもしれない。

しかし今は、枝葉が茂った先に満開の花が咲くことを期待したい。

開幕が、待ち遠しい。

画像17

************************
ここまでお読みいただきありがとうございます。ここから先は有料部分となりますが、現地に行って感じたキャンプの魅力、そして今季初戦となる2月16日(日)のルヴァンカップグループステージ第1節vsベガルタ仙台のメンバー予想をお届けします。是非ご購読とシェアをお願いします!

この記事は「旅とサッカー」をコンセプトとしたウェブ雑誌OWL magazineのコンテンツです。OWL magazineでは、多彩な執筆陣による、アツい・面白い・ためになる記事を、月額700円月15本程度読むことができます。

ここから先は

1,092字 / 9画像
スポーツと旅を通じて人の繋がりが生まれ、人の繋がりによって、新たな旅が生まれていきます。旅を消費するのではなく旅によって価値を生み出していくことを目指したマガジンです。 毎月15〜20本の記事を更新しています。寄稿も随時受け付けています。

サポーターはあくまでも応援者であり、言ってしまえばサッカー界の脇役といえます。しかしながら、スポーツツーリズムという文脈においては、サポー…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?