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プログラミング教育業界10年史と、エンジニア教育の未来

CodeCampは今年で10年目を迎えます。10年もの長い間サービスを継続できていること、ユーザーの皆様、講師の皆様や社員、関わって頂いたすべての方に感謝申し上げます。

10年前は現在ほど「プログラミングを学ぼう」「デジタル人材を育てよう」という機運はなかったように思います。社会の変化があり、それに応じて企業や顧客の動向も変わってきました。
業界もCodeCampとしても転換期にいると感じています。
そこで、大人向けプログラミング教育業界の10年の変遷を振り返りつつ、これからこの業界どうなっていくのだろう、というのを考えます。

黎明期[2013-2016]

2013年2月、アメリカのCode.orgという団体がMicrosoftのビル・ゲイツ会長やFacebookのマーク・ザッカーバーグCEOらが出演するプログラミング教育についてのキャンペーン動画を公開し注目を集めたことが、これから起こる大きなムーブメントの発端でした。

この動画や各起業家たちの発言は有名ですが、あまり知られてないのはこのキャンペーンの目的です。
それは「IT人材不足の解消」でした。
Code.orgによると、アメリカの大学では10人中9人がコンピュータプログラミングの授業を受けておらず、2020年には100万人の人材が不足すると見通していました。

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後段で説明する日本と同様にアメリカでもIT人材に不足しており、プログラミング教育が盛り上がった経緯があります。

日本でも追随するようにプログラミングへの注目が集まります。
この当時のプログラミングは「新しい教養」という位置づけでした。
インターネット、Webサービス、スマホアプリなどが世の中に急速に浸透していく中で、それらを創る・使いこなすことができるプログラミングを身につけたい・それによって差別化したキャリアを歩みたい、という方が学び始めます。

またこの頃はスタートアップの黎明期でもありました。自身でWebサービスを開発して起業したいという方が学ばれるケースも多くありました。

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当時のCodeCamp受講生インタビューより

小中学校におけるプログラミング教育の必修化が決まったのもこの時期です。

このような社会の動きや個人のニーズに伴い、子供向け・大人向けのプログラミングスクールや学習サービスがスタートしました。現在存在感があるサービスの多くは、この黎明期にサービス開始したものになります。

またテクノロジー面では、MooCs・e-ラーニングなどインターネットを用いた教育の選択肢が生まれ始めていたのもこの時期になります。

ピーク期[2017-2019]

アメリカに続いて日本でもIT人材不足が叫ばれるようになってきました。

注目を集めたのが経済産業省が発表した「IT人材の最新動向と将来設計に関する調査結果」です。2030年に79万人のIT人材が不足する見通しを発表し、IT人材不足の危機感を鮮明にしました。

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経済産業省 「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」

人材の不足は、そこに人材需要があることを意味します。
企業の人材獲得合戦によってITエンジニアの給与水準が高くなる機運が生まれました。以下は当時の記事ですが、人材獲得のために各社が競争力ある報酬でオファーをする、というのは2022年度現在も加速しています。

またその仕事の性質上、リモートワークがしやすかったり独立(フリーランス)しやすかったりと、IT人材が「未来がある」職業として認知され始めました。
いわゆる社会的地位が向上したと言って差し支えないでしょう。IT人材を取り巻く就業環境は数年で大きく変わっていきます。

ITという職業への期待感が高まり、主に20代の社会人を中心に他業種からエンジニアへ転職を希望する方が増えました。プログラミングスクールでは「ITエンジニアへの転職サービス」がトレンドになりました。

厚生労働省の雇用動向調査を見てると、IT人材は増えています。
IT人材不足、IT人材の就業環境の変化、それに伴う個人やプログラミング教育業界の動きの結果と見て取れます。

厚生労働省の雇用動向の調査より 情報通信業の入職者数

幻滅期[2020-2021]

コロナウイルスの影響でプログラミングを学習する個人は増える一方で、
スクール卒業生と採用企業の需給のミスマッチが発生していました。
具体的には、現場が期待するスクール卒(新人レベル)の到達度を有してない人が多い、という点でした。

一つの未経験者応募可の求人に対して、100人ほどが応募してポートフォリオ(実績をアピールするための作品集)が送られてくるほど競争率が高いのです。スクールの課題で制作したものをそのまま提出しても、応募者の中で秀でた印象を与えることはありません。また、自分で採用した技術に関して答えられないのであれば、企業が求めるスキルを有していないと判断されて選考に落とされてしまいます。

朝日新聞Sunny Choiceインタビューより 

そして主にIT業界から”幻滅”の意見が聞かれるようになりました。
当時投稿したnoteに「プログラミングスクールへの悪評と業界への提言」として以下のような内容を紹介しました。

過去にも色々あったが、最近は
「プログラミングスクール卒業生は質が低い」
「スクール卒業生はイケてないので書類で落としている」
という卒業生に対しての風評がWebやSNSで回っている。
さらには「スクール隠し」なるものまで誕生している、というから驚いた。
これは「プログラミングスクールに通っていた」のを隠して転職活動するというもので、なぜ隠すのかというと上記の風評を理由に「プログラミングスクール卒だと選考で不利になる」と考えての対策らしい。

プログラミング教育業界においては、質的な課題に直面したと言えます。
ただ学ぶ・なんとか転職できるでは到達度として不足していて、業界や企業が求めるスキル/マインドが身につけられる学びが必要です。
例えばCodeCampでは企業の求める人材要件として、ソースコード1行1行は何を行っているのか、「腹落ち」している・原理を理解した人材を輩出することを重視しています。

2022年現在、社会や業界としてこの質的課題に向き合っていく機運を感じます。反対にこの課題に向き合わないスクールやサービスは淘汰され始めていると感じます。

メガトレンドへ[2022-]

2022年現在もIT人材への渇望感はますます高まっています。
IT技術職の求人倍率は10倍まで上がりました。DXやリスキリングというより広義なIT人材へのニーズはとても高まっています。

IT 求人倍率
日経ビジュアルデータより

プログラミング教育はおよそ10年前に大きく立ち上がり、形を変えながらも2022年現在もその必要性が叫ばれています。
そこに関わった個人・企業・団体の成果もあり、一過性のブームでは終わらなかったと言えるでしょう。
ガードナーのハイプ・サイクルで表現するなら、黎明期~ピーク期~幻滅期を超えて、啓発期というメガトレンドに入っていると考えています。

ガードナー ハイプ・サイクル

ITエンジニアもDX人材も、ただ学ぶだけで価値が生み出せる時代ではありません。
学んで終わりでなく、実務で活かす。
エンジニアに転職して終わりじゃなく、その先のキャリアで突き抜ける。

「学べる」が”プログラミング教育1.0”だとすると、
「プロフェッショナルを生みだす」が”プログラミング教育2.0”  。

そのような転換・これからの展望を考えています。

今こそ、プログラミングを武器に

CodeCamp10年目に突入して改めて、未来のプロフェッショナルを生み出すコースをリニューアルしました。

プロフェッショナルになるために必須なスキルは、腹落ちしたプログラミング技術であると私は考えます。
コードが書ける人・コードを理解してる人がこれからの社会を成長させていくでしょう。
2022年はこれから来るメガトレンドのスタートです。今こそ、プログラミングを武器にしましょう。

求められるサービスを提供できるように受講者に向き合って、結果として業界全体に貢献できるよう頑張ってまいります。


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