岩塩

塩(しお)のはなし1 -舐めるときの罠-

■はじめに 

 あるとき、塩のセミナーをやりますかってSNSに投稿したら反響があり…という経緯です。ついつい買ってしまって、使いきれずたくさん貯まっていく基本調味料の一つかなと思います。用途としては食用から美容…魔除け的な宗教など様々な面でも登場しますよね。
 その分、身近ではあるけど、はっきりとしない部分やあやふやな情報も多いのではないかと。塩の種類もたくさんあります。精製塩、岩塩、天日塩…ある意味、分類の情報が多すぎて、逆にわかりにくくなっているのはこういうところでもあるかなと思うんです。あとは使い分けたときの体感ですかね。所詮塩、されど塩。興味を持ったけどあまり違いがわからなかった…なんてヒトも塩の選び方を違った視点から判断していこう!というのが今回のテーマです。完結するかなー

①まず基本は塩の粒度

 塩の結晶の大きさで味の溶け方は変わります。例えば同量のコーヒーシュガーと氷砂糖では口内での溶け方、つまり味の感じ方の速さ、続いて広がりが違うと思います。塩でも単純に表面積の多い状態、つまり粒度が細ければ溶けやすく、そして味が強く感じます。

 これを利用した表面が加工されたおもしろい塩もあります。スプレードライ(濃い食塩水を霧状に吹き付けて乾燥。インスタントコーヒーとかもこの製法です。)などで作られた塩は表面積も大きく、かつ溶けやすいことからすぐに舌表面の唾液に溶解し、味を強く感じることが出来ます。ヒトは味を強く感じると満足しますので減塩効果にもつながります。

 さて話を戻すと、ゆっくり形成した硬い結晶の岩塩などは舌上で溶けづらく、マイルドな塩味に感じるんです。また結晶がだんだん溶けたり、咀嚼が加わることで「不均一のおいしさ」というのも提供してくれます。

 反対の意味で「均一のおいしさ」というものもあります。塩で言えば、溶解させて使った場合ですので、お吸い物やブライニング(塩水漬け)するときに重要になります。これはまた別の機会に。

②味わうと落とし穴:塩味の順応(じゅんのう)

 塩の味比べをするときに、塩味をずっと舐めていると差がわからなくなります。例えば同じ塩を被験者に事前情報無しに舐めさせていくと、1品目より2品目…n品目の方がマイルドに感じます。これを塩味の順応と呼びます。「特に塩味、甘味で起こりやすい」です。塩を食べ比べるときは必ず水を用意し、できれば50-60℃のぬるま湯にして、コップに注いで使っていきましょう。そして濃ければ濃いほど順応しやすくなります。

③量

 テイスティングするとき、手につけてペロッとすると思いますが、同じ量を食べているかというとそうではないですよね?これは非常にマズイです。違う量を食べて評価を下すのは官能評価としてはいけません。きちんと測り、時間が許すのであれば様々な粒度にしたり、水に溶かして評価を行うことが大事です。最近では0.001レベルで秤量できるポケット電子天秤がありますのでおすすめです。(安い天秤を買うときは一番小さい桁は信用せずに使う心持ちが必要ですが、意外とこいつは使えます。)

④お水の確認はした?

 また使うお水は軟水にし、銘柄は同じにしましょう。ここでも落とし穴がありますが、水には「水源」があります。海外のコスパの良いクリスタルガイザーも2種(シャスタ・オランチャ)の水源があり味が異なります。サントリーの天然水シリーズは3つの水源があります。コカ・コーラのいろはすになると6種類らしいですね(以下メーカーHPより抜粋)。

 デリケートな評価をしないといけない塩ですので、お水はブックマークしつつ、買うときに確認しましょう。研究施設のように簡単に全国どこでも純水が手に入れば良いんですけどね(水のはなしも今度しましょう)。それにしてもクリスタルガイザーの並行輸入品は安いですよね。

 今日はここまで。次回は実験を絡めて塩の面白さに触れていただければと思います。

サポート費は食材・実験器具・取材費・交通費等に使用させていただきます!